ものごとには、限度ってものがあるんだよね。




ぐあいがわるいことをけんめいにかくします



球技大会なんてめんどくさい。かと言って、さぼるわけにもいかず。
まあ、別に運動は嫌いじゃないからいいけど。
小都はこういうの好きみたいだしね。

張り切ってた甲斐あってか、小都たちのチームは決勝戦まで勝ち進んでた。
それはいいんだけど。
試合を終えた小都に近付いていく。

「小都」
「はい?」
「ジャンプして」
「?」

そう言うと、不思議そうに目を瞬かせながらも言われた通りにした。
その途端。

「った――!!」

かなり痛かったらしく、小都はそう叫んで涙目になりながらしゃがみこんだ。

・・・小都らしいっていうか何ていうか。
呆れを通り越して感心する。普通、忘れないと思うんだけど。

溜め息をついてやりすごすと、小都の体に手を回して抱え上げた。

「せっ先輩・・・!?」
「あんまり暴れると落とすよ」

そう言うとちょっとは大人しくなったけど、完全には大人しくならず何かもがいてた。
・・・ったく。

「皆見てるじゃないですか! おーろーしーてーっ!!」
「大人しくする。じゃないと、実力行使に出るよ?」
「もう出てるじゃないですか・・・」
「やってみせようか? 今ここで」
「結構です!!」

やっと大人しくなった。
また暴れ出さないうちに、さっさと保健室に連行する。
丁度保険医は席を外しているらしく、誰もいなかった。
小都をベッドに放るようにしてやや乱暴に下ろした。
靴を脱がせて怪我の具合を確かめる。

「いった―――っ!!」
「捻挫してるんだから、当たり前」

ちゃんと診てもらわないと分からないけど、多分そう。
勝手に棚を漁って包帯やらを探っていると、呟くような小さな声がした。

「・・・ごめんなさい」
「何が?」

俺の感情を探ろうとしているのか、小都がじっと見上げてくる。

「・・・怪我してるのに、試合に出たから怒ってるんじゃないんですか?」

それもある。
けど。
小都は、分かってない。

「随分しっかりとテーピングしてあるね」
「あ。奈緒ちゃんにしてもらったんです」
「だろうね。じゃあ、彼女は知ってたわけだ? 俺には言わないのに」

そう言うと、小都はぎくりと肩を震わせた。

「言う機会あったでしょ? 何で言わないの」
「・・・言ったら、出るなって言われると思って」

他の子をかばって捻ったらしい。
その子が気にするといけないから隠してたのもあるみたいだけど。
他の子なんてどうでもいいけど、小都のそういうとこは嫌いじゃない。
でも。

「そう言うと、思った?」

小都をいじめるのは好きだけど、本気で嫌がるようなことはしない。

「・・・ごめんなさい」

小都は項垂れて呟いた。

「そうじゃなくて・・・だって、言ったら気緩んじゃうと思ったんだもん」
「・・・・・・」
「・・・先輩?」

まだ怒ってるか、と窺うように見上げてくる。

「・・・自覚ないのって質悪いよね」
「え。痛みはちゃんとありましたよ?」
「だから、自覚ないって言ってるんだよ」



ほんと、最悪。





index 

top