どこまでホントか、分からない。




いがいときずつきやすいいきものです




「小都は、どんな人が好みなの?」

委員会があるらしい先輩を待っている私に奈緒ちゃんが付き合ってくれて、そこに教室に残ってた女の子たちが加わっておしゃべり。してたら、何故かというかやっぱりというか、恋愛方面に話が流れていって、どんな人がタイプかという話に。

「好みって言われても」

恋愛話、聞いてる分にはいいんだけど、いざ自分にふられると結構困る。
ていうか、さっきまで散々先輩とのことを突っ込まれてただけに、余計言いにくい。下手なこと言ったらどうなることやら。

「やっぱり高宮先輩?」

やっぱりって何。いや、まあ付き合ってるからなんだろうけど。

「別に好みだったわけでは・・・」

むしろ、考えたことすらなかったというのが、正直なところ。
先輩と知り合う前は、女子の競争率がものすごかったし、そんなこと考えることもなく。知り合ってからは恐ろしすぎて尚更考えることもなく。
好みってことは、いいところだよね。優しいとか、頭がいいとか?
先輩の褒められたところ褒められたところ・・・だめだ、とっさに浮かばない。
優しい時もあるけど裏がありそうで怖いし、頭もいいけどどちらかというとズル賢いというか、使い道がちょっと。
完璧なまでの外面の良さはある意味あっぱれだけれど、それって褒めてないし。

「初恋は父親というお約束な相手で、その次は図書委員してた先輩。顔は中の下ってとこだけど、まあ、優しそうではあったわね。もともと、小都の好みって穏やかというか、人畜無害そうなタイプよね」

思考に耽っていると、奈緒ちゃんが私の代わりに勝手に答えてた。まあ、別にいいんだけど。

「それなのに今は」
「・・・ため息つかれても」
「理想と現実は違うってことかしら」

何か散々な言われようだ。
確かに、人畜無害とは程遠いけど。
けど、苦労してるのは私であって、奈緒ちゃんではない。むしろ、おもしろがってるくせに・・・。

「何の話?」
「ぎゃあっ!!」

いつの間にかすぐ後ろにいた先輩に、周りは何やら色めき立ち、奈緒ちゃんは顔を顰め、私はちょっと青くなる。

「今の聞いて・・・」
「何が?」

そう笑顔で問い返す先輩の表情は読めない。というか、読めた例がない。
奈緒ちゃんや他の子たちが余計なことを言い出さないうちに、教室を出て帰ることにする。

「で?」
「・・・何ですか」
「小都は、人畜無害な毒にも薬にもならないようなのが好きなの?」

何か増えてるけど、どっかで聞いた台詞。

やっぱり、聞いてたんだ!!

でも、平凡な恋愛がいい、みたいなことは前に散々言ってるし。
中学の時に憧れてた人がいたって、先輩と付き合う前の話だし、何らやましいことはない。
はずなのに、何だかいたたまれない。

「む、昔のことです」
「じゃあ、今は?」

今――

先輩がこたえさせようとしていることを理解する。顔、赤いかもしれない。

「しりません!!」

顔を背けようとしたのに、両手で顔を挟まれて、させてくれない。

「・・・やきもちですか」
「うん」

反撃しようと思って言ったのに、あっさりと認められて、心臓とまるかと思った。

今度こそ赤くなった私を見て、先輩が笑みを漏らす。

「言葉で示すのと、行動で示すのと、どっちがいい?」
「どっちもやです!!」

どっちを選んでもろくでもない要求がついてきそうだ。そんなにほいほいと出来るわけがない。
だから、断固拒否。
なのに。

「―――小都?」

そんな風に名前呼ぶのも、その表情も、ずるい!!
絶対、そんな繊細な神経してないくせに、はかなげな表情とか、その気になればすぐ出来る。
それが、本当っぽく見えてしまうから、本気で質が悪い。
本当・・・なのかな。

「先輩・・・が」

ふと、逸らしていた目を先輩に向けると、さっきまでの表情と一変して笑みを浮かべてる。ように見えて。

「―――嫌い!!」

またもや先輩の思惑通りに動かされている気がして、悔しくて精一杯の抵抗を試みた。



けど、そう言った分の報復は、ハムラビ法典なんてメじゃないくらい、後できっちりと思い知らされた。





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