そしてまた、いつものやりとり。
あまやかしすぎはいけません
「私と先輩って、恋人同士に見えないかな・・・?」
「どしたの、いきなり」
奈緒ちゃんがきょとんと返してきた。
確かに、唐突かもしれないけど。
でも、だって・・・
「この間『ご兄妹?』って聞かれた・・・!」
嫌味とかじゃなく、素で。
誰からも認められたいなんて思ってるわけじゃないけど、あれはちょっとショックだった。
そりゃ、先輩は大人っぽいし、私は逆に子供っぽいかもしれないけど・・・。
「まあ、一見付き合う前と大して変わりなく見えるし」
「例えば?」
「高宮先輩に迫られて、拒否ってるとことか」
「あ、あれは・・・」
だって、先輩がからかってくるから!
「正直いい気味だけど、まあ、ちょっと同情しないこともない」
「何で?」
「何でって・・・」
奈緒ちゃんが複雑そうな顔をして「まあ、それでこそ小都」と言った。
何だか、馬鹿にされた気がする。
・・・私の態度、何か、まずい?
だって、今までずっとそうだったし。
いきなり態度変えたりなんて出来ない。
傷ついてたり・・・するのかな?
確かに、私が先輩に抱きついたとして、離してとか言われたらショックだ。
でも、先輩いっつもあんな感じだし。
でもでも・・・
「小都?」
しまった。またやっちゃった。
自分の考えに没頭するあまり、先輩が隣にいることを忘れてた。
今朝奈緒ちゃんと話して以来、ずっと考えっぱなし。
見た目はそうそう変わるものでもないけど、態度は変えられるかも、とか。
「何考えてたの?」
「何にも!」
けど、先輩にそんなこと言えるはずもなく、即答する。
「何にもないのに、眉を顰めるんだ? 俺といるのが嫌?」
・・・そんなんじゃないって、分かってるくせに。
なのに、脅すような笑みをひっこめてはくれなくて、あまりのいたたまれなさに「ごめんなさい」と謝ると「キスしてくれたら、いいよ」とふざけた答えが返ってきた。
「なっ・・・!!」
ふざけないでください!!と怒鳴ろうとしたけど。
さっきの奈緒ちゃんとの会話が頭をよぎって。
恋人っぽく見えないのは、見た目だけじゃなくて私の態度にも問題あるのかな、って思って。
それに、そんな繊細な神経してるとは思えないけど、先輩も傷ついたりするのかな、ってちょっと思っちゃって。
・・・・・・。
そっとキスをした。
一瞬だったけど。でも、キスはキスだし。
それが限界なんです、私には!!
それでも、先輩はかなりびっくりしていたみたいだけど。
が、私の行動を先輩は一体どう受け取ったのか。
あっという間に押し倒された。
「ちょ、調子にのらないでください!!」
ばちーんと、先輩を平手打ちにするという普段なら決して出来ないような勇敢というか無謀な行動に出た。
だって、つい。
・・・慣れないことは、するものじゃない。
人間には向き不向きってものがあるのだと開き直ることにした。

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