隙を見せたら最後な気がする。
せをむけてはいけません
「わっ?!」
突然後ろに引き寄せられた。
バランスを崩してそのまま後ろに倒れると、背中にぬくもりを感じた。
そんなことをした犯人は、やっぱり先輩で。
「先輩?! 何するんですか、いきなり!」
「敵に背中を見せちゃ駄目だよ?」
「やっぱり敵なんですか?!」
人通りがあまりない場所とは言え、ここは公共の場。
いつ誰が通るとも知れないので必死で抜け出そうとするけど、先輩は離してくれない。
・・・後ろから抱きしめられるのって駄目だ。
正面からなら手で押しのけるとか出来るかもしれないけど、後ろから抱きすくめられたんじゃどうしたって剥がせない。
「小都は抱き心地いいよね」
人の心境無視して真昼間からセクハラ発言しないでください。
「それを知ってていいのは俺だけのはずなんだけどね」
うん?
・・・何か今、温度下がりませんでした?
何この不吉な予感。
「昨日のあれは、どういうこと?」
ぎゃぁっ。
み、見られてた・・・?
「ふ・・・不可抗力・・・」
「ふーん。じゃあ、小都は俺が、俺に言い寄ってくる女に抱きつかれても気にしないんだ?」
「それは・・・」
「それは?」
意地悪だ!!
「・・・やだ」
小さな呟き。でもそれを聞き逃すような先輩ではなくて。
少し笑みを見せた先輩にほっとする間もなく。
「わ!?」
首筋に唇が触れた。ていうか、噛まれた? 何かちくりと痛みが・・・って!!
「な、何てことするんですか!!?」
私の抗議も気にした様子もなく、先輩はにっこりと機嫌よく笑ってさらっとのたまった。
「俺のだっていうしるし?」
しるし?じゃあない!!
こんなとこ、隠せないじゃないですか!!
まさか絆創膏を貼るなんてベタな真似を自分がしなきゃいけなくなるとは・・・
「これも不可抗力ってやつだよ」
「何がですか、どこがですか! 先輩の馬鹿――っ!!」
先輩は楽しそうに笑ってるだけで。
うう。絶対反省なんてしてない。
ていうか、悪いとすら思ってない・・・
そりゃ、注意力散漫な私だって悪いかもしれないけどさ。
・・・先輩のバカ。

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