私って彼女扱いされてるんだろうか。




じぶんをしゅじんだとにんしきさせましょう



どっちかって言うと、おもちゃ扱いされてる気がする。
・・・自分で言っててそれもどうかと思うけど。

だって、好きって言われたこと、ないんだもん。

何で今更そんなことを気にしてるのかと言うと、まあ、クラスの女の子たちと話をしててですね。
女の子が集まれば何故か自然と恋の話になっていくわけで。
普段なら遠巻きに聞いてる、というか聞き流してるんだけど、先輩という彼氏が出来たせいでむしろ積極的に参加させられて。

で、いろいろ言われたわけですよ。
彼氏にしたい人NO.1らしい先輩の彼女に接する態度についての妄想を。
彼女にすっごく甘くて、花束くれたり、毎日好きって言ってくれたりするらしい。他にも何かいろいろあったな。まともに聞いてると砂吐きそうだったから、聞き流したけど。
今時そんなことする人いるんだろうかと疑わしいくらい芝居がかったことでも、先輩がやると様になるんだそうだ。
まあ、そんなうすら寒いことはしてくれなくて全然いいんだけれども。

ベタベタの関係になりたいわけではない。そんなの、色んな意味で耐えられないと思うし。

けど、でも。

好きって言われたことないのは、ちょっと淋しいかなぁ、と思っちゃって。
聞いてみたいなぁって、思って。

だから、ストレートに聞いてみたんだけど。
「言ってほしいの? 俺に」ってすごーく意地悪な顔で返事が返ってきて。
それでもお願い出来るほど私は素直な性格はしていなくて、言葉に詰まって現在に至る。

「小都?」
「知らないもん」

子供じみてると思いつつも、そっぽを向く。
だって、分かんない。

これでも、先輩のこと好きなんだから。

からかわれてるだけの、おもちゃ扱いじゃ嫌なんだもん。

心の呟きのはずなのに、いつの間にか口に出していたらしく、眉を顰められた。

「名前で呼んでって言ったよね?」

強制された覚えならありますが。
拒否権なかったじゃん、あれ。

「俺のこと、名前で呼んでいいのは小都だけだよ?」

そういえば、ファンの子達は絶対名字で呼んでる。
今まで深く考えたことなかったけど。
馴れ馴れしく名前で呼ぶなとかってファンの間で牽制してるのかとでも思ってたけど、違うの?

「俺の特別は、小都だけ」

甘い声で、耳元で、そんなことを囁く。

「・・・特別?」
「そ。特別。全部小都だけだよ? 触れたいと思うのも。抱きしめて、キスして・・・」
「わーっ!! そ、それ以上言わなくていいです!!!」

何を言い出すんだ!!
しかも、実行しようとしないでください!

「実感できないっていうんなら、教えてあげるよ?」
「結構です!!」

何されるか分かったもんじゃない。
真っ赤になった私を見て、先輩は楽しそうに笑う。

・・・やっぱりからかってるだけじゃないですか。

拗ねていると、先輩に引き寄せられた。

「愛してるよ、小都」
「・・・鳥肌が」
「酷いね」
「だって、無理です! そんなの急に言われても!!」
「じゃ、慣れるまで言ってあげるよ」

にっこりと笑ってそう言って、人の耳元で睦言を囁き続ける先輩。



・・・新手のいじめだ。






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