女人哀詞
(坂東玉三郎)
1996.01.04 シアタードラマシティ
唐人お吉物語。幕末、開国と外国打ち払いに揺れる最中、アメリカ総領事ハリスの日本
滞在中身の回りの世話をした女性。(私にはその程度の知識しかありませんでした。)

―『らしゃめん』―その当時、外国人の側にいる日本女性は(例え妻であっても)
日本を裏切った恥知らずと軽蔑されていました。そんな時代...。

下田の芸者お吉。いいかわした恋人がいるにもかかわらず、お上からハリスの元に
ゆけと命じられる。きっぷのよいお吉は大金をつまれても承知せず、あげく説得に
恩人や恋人までかりだされる始末。
仕方なく奉公に出、それでも献身的につくす彼女。ハリスもまた心をかよわせるが所詮は
相容れず。お吉は同胞にまで差別される。やがて時代は明治に...。
お吉はおちぶれ孤独な最後を迎える。

ああ、無情...。『レ・ミゼラブル』に匹敵するぐらい悲惨かもしれません。
芸者姿の玉様の美しいこと!見る影もなく年老いて、世を怨み『施しは受けない。』と
もらった米をすべてすずめにばらまいてやってしまう壮絶さ...。お見事。

【芝居中のハプニング】
手すり(?)が落下いたしました。役者さんがよりかかっていたらと思うとぞっとします。
オペラ座の怪人
(ケン・ヒル版)
1996.02.17
    02.20
大阪厚生年金会館
中ホール
ファントム(ピーター・ストレイカー)、クリスティーン(マリア・バチェラー)
ラウル(リチャード・ニーム)他

アンドリュー・ロイド・ウエバー版に比べると、はっきり言って地味です。(笑)
それでも私はケン・ヒル版の怪人にどっぷりはまってしまいました。

ウエバー版はすべてオリジナル曲であるのに対し、ケン・ヒル版は当時オペラ座で
歌われていたであろうアリアに別の歌詞をつけて使用されています。
ちょっとブラックな笑いと、原作のミステリアスなにおいに満ちあふれていました。

なんと言ってもストレイカー様(ええ!『様』が付きます!付けますとも!!)の声です!
墓場に響きわたるファントムのアリア。(ビゼー《耳に残る君の歌声》)
艶っぽくて何とも優しい声。ぞくっとしました。
(人の声で本当に鳥肌が立ったのは初めてです。)

オペラ座の屋上で、ラウルとクリスティ−ンの姿を垣間見て、嫉妬に狂うファントム。

            ―Christine....You...betray...me...―

切ないファントムのつぶやき。
静かに始まり、段々激しく歌われる三人の重唱。
(オッフェンバック《ああ!僕の心はまだ迷っている!》)
ファントムの声が猟奇と狂気に満ちてくるのがわかります。

ラウルの死を告げ、結婚を迫るファントム。
仮面を剥ぎ取られ、顔を隠してうずくまる彼にクリスティ−ンはつぶやく。
『かわいそうなファントム...。でも愛せない。決して....。』

『生きて彼女に愛されることはない。死んでしまえば、そう、時は永遠に続く...。』

生還したラウル達に追い詰められ、自分の胸にナイフを突き立てるファントム。
『覚えていてほしい。すべては愛のため...。
私とて心の底まで怪物というわけではない..。』

―落涙.....。―
ウエバー版オペラ座はすべて吹っ飛びました。
またしても泥沼にはまりこんだ私は以後、さまざまな怪人バージョンを見ることに
なります。(笑)
美女と野獣
(劇団四季)
1996.03.02 MBS劇場
ベル(堀内敬子)、ビースト(荒川務)、ガストン(野中万寿夫)

ディズニーでおなじみ『美女と野獣』です。
よくもここまでアニメを再現できたものだと感心しました。

酒場でのビアジョッキを使ってのダンスと、《Be Our Guest》のおもてなしダンスは圧巻。
ベルは日本女性の方がアニメのイメージにあっているような気がします。(ブロードウェイ
のオリジナル・ベルは別嬪さんですがなんだかキツイ性格に見えるんです。)
しかし、ビーストが王子に戻った時、しょうゆ顔の日本人の姿が現れてちょっと
がっかりした私は非国民でしょうか?(笑)

【配役表を見て気付いたこと】
坂元健児氏の初舞台だったのですねー!!
WEST SIDE STORY
1996.03.23 フェスティバルホール
マリア(H・E・グリーア)、トニー(マーシー・ハリエル)、アニタ(ナターシャ・A・ディアス)

1957年初演のニューヨーク版『ロミオとジュリエット』。
私はビデオでこの映画版を観たのが最初です。(泣いたなあ...。)
その当時、やっぱりミュージカルが駄目だったワタクシ。
日本人の演じる舞台を観る機会はいくらでもあったのですが、
どうしても行く気になれませんでした。

当日券で滑り込み、『おおっっ!!そのまんまやああーっ!!』感動の嵐。
マリアは映画よりさらに愛らしく、トニーも一途で精悍。
トニーが撃たれてマリアの目前で死ぬ場面はやはり泣けました。
ジュリエットは後追い自殺をしますが、マリアは生きてゆきます。
何にも知らない子供から、恋を知り、あっという間に恋を永久に失い、
憎悪もまた知ってしまった大人の女へと成長して...。

久しぶりに映画の方も観たくなりました。
CAROUSEL
(回転木馬)
1996.07.30 劇場 飛天
ジュリー(鈴木ほのか)、ビリー(宮川浩)、キャリー(佐渡寧子)
スノウ(岸田智史)、ジガー(市村正親)

アメリカのニューイングランドの小さな町。カーニバルの最中、紡績工場の女工
ジュリーは回転木馬の呼び込みをしているビリーと恋に落ちる。
二人は共に暮らし始めるが生活が苦しく、ビリーが彼女に手を上げることもしはしば。
やがて二人には子供が。喜ぶビリー。しかしお金がない。
そんな折、ビリーの悪友ジガーが強盗の計画を持ちかける。
しかし、計画は失敗に終わり、警官においつめられたビリーは自殺する。

ビリーは星の番人からひとつの権利を告げられる。
『やり残した事があれば一日だけ地上に戻れる。その時善行をつめば
天国へゆける。』と...。素直になれぬビリー。しかし子供のことも気にかかる。

地上では15年の歳月が流れていた。勝気な娘ルイーズ。ビリーに良く似ている。
あまり幸せそうではない娘を見て地上に戻る。星をひとつ持って...。
名を偽り、手渡そうとするが娘は怖がり、受け取ろうとしない。
思わず娘の手を叩いてしまう。
娘から話を聞くジュリー。彼女にはそれが誰なのかわかった。

ルイーズの卒業式。Dr.セルドンの祝辞。
『確実に幸せになる道は教えることはできない。自分でみつけるんだ。
自分の二本の足でしっかり歩んでいけばいい。』
娘の耳元で『よく聞いて。そのとおりなんだ。』とビリーは囁く。

ジュリーのかたわらに立つビリー。『愛していた。俺はお前を愛していた。』
生きている時決して言えなかった言葉。顔を上げるジュリーとルイーズ。

              人生は決してひとりではない....。

ほのかさんが見たくてチケットをとりました。東宝ミュージカルはこれが初めてです。
初々しい娘時代、優しい母の姿。そして歌声はやっぱり美しい!
不器用な夫、不器用な父親の宮川さんもすばらしい。
そしてジガー役の市村さん(私はこれがお初でした。)悪党なんですが憎めない。
キャリーに抱きついて、『たまんねえ〜っ!!』とのたまった時はふきだしました。

その時は『まあまあかな。』ぐらいの感想だったのですが、こうやってストーリーを
追っていると良い話ですよねえ。今観劇したらぼろぼろ泣くかもしれません。
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