ふわもこ。  .

「…カナタ」
「ご、ごめんハークス。でもほっとけなくて!」

探索がオフの、常識の範囲内で自由行動が許される日、その日は午後から雨が降り始め、外に出ていたカナタは当然の如く雨に濡れた。
それだけならまだしも、急いで帰路についていた時に不意に聞いてしまったのだ。
この、毛が乾いたらさぞもこもこふわふわであろう猫の声を。

思わず抱き上げてしまい、今に至る。
ハークスは眉間に皺を寄せて、しっしっと手を払う。

「家には入れないからな。元の所に捨てて来い」
「なんでそんなこと言うのさ!可哀想だろ!」

カナタが声を張り上げると、先に帰っていたらしいソラッドとゼロが奥から何事かと顔を出した。
それを見て、ハークスは本日何度目かの溜息をついた。

「分かった。入れるのはいい。けど、飼わないからな。ウチにはもう赤毛の小型犬と、生意気な金色の小犬、歌いまくるオレンンジの鳥に、やたらと喋るゴールデンハムスターが居るんだ。これ以上増えてたまるか」

そう言ってずぶ濡れのカナタにふわふわの白いタオルを投げると、家の奥へと引っ込んで行った。
入れ替わりに、ソラッドとゼロが近づいてきて、カナタの腕から猫を抱き上げた。
その間にカナタは自分の服を絞って、髪の雫をタオルで大雑把に拭き取る。

「…赤毛の小型犬って俺のことだよな」
「生意気な金色の子犬は、僕だろうね」
「オレンジの鳥が僕で、クロノがゴールデンハムスター?」

そんな風に思われていたとは。
でも、家に転がり込んだ上に身の回りの世話までしてもらっているのだから、あながち間違ってはいない。
複雑な心境に暫く黙り込んだ三人だったが、立ち直りの早いソラッドはすぐさま話題を猫に戻す。

「それにしても、こいつは迷い猫か?こんな長毛種だと血統書か何かついてそうだな」
「でもこんなに痩せてるよ?」
「とにかくお風呂に入れて、ご飯あげないと」

そうカナタが提案すると、ソラッドとゼロは小さく溜息をつき、同時に指差した。

「「ついでにお前も風呂行き決定」」
「う…、わ、分かってるもん!」
07.08.02




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