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東京安着パーティー -- 夢の終わり


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東京に着いた日の夜は、東京安着パーティーが盛大にも催されました。
私たちは神戸を出港する時に、ボンド品と呼んでいるのですが、要はデューティーフリーの品(特に酒類)を多く買い込んでいました。でも、これは日本に再度持ち帰ることはできません。

そこで、余った酒類を総動員してパーティーを行いました。
しかし、それでも余った時は残念ながら廃棄処分とするしかありませんでした。
なんせ、2日後には税関の人が船まで来て、入国審査がある為、それまでに全て消費する必要があるのです。

私たちの入国審査は、皆さんが海外旅行をした時と少し違います。
例えば、お酒は通常の海外旅行では、簡単に言ってしまうと3本まで免税対象になりますが、我々の実習は通常の旅行とは認められず(だってパスポートを持っていないから仕方ないか)、お酒は1本しか免税対象になりません。
他の物に対しても、免税対象の数量が半分から三分の一程度なのです。

検疫を受けている時の船は、Q旗と呼ばれる旗を揚げています。
この旗は黄色一色の旗なのですぐにわかります。
東京では前回書いたように羽田沖の東京灯標のあるところ、神戸では六甲アイランドの沖(一文字と呼ばれる堤防の外)に止まっている船でこの旗を揚げていれば検疫中というわけです。

旗による信号はアルファベット一文字の信号と、アルファベット2文字やそれに数字の旗を組み合わした信号があります。
私たちがよく使うのは、「UW」と「UW1」。
前者は「御安航をお祈りします」、後者はUWに対する返答です。
練習船同士の挨拶によく使用するものです。

また、過去に「皇国の攻防・・・」の意味で使用されたこともある、カラフルなZ旗の本当の意味は「私は引き船が欲しい」又は「私は投網中である」(漁場にいる漁船が使用する時)とまったく違う意味を持っています。

検疫も約1日で終わり、これから私たちの最後の航海が始まります。
東京港外から豊海水産埠頭までの1時間弱の航海です。
埠頭には宅配便のお出向かいがあり、全国どこでも一律一個1000円で配達してくれました。
私たちは持てる限りのものを1ヶ口にして受け付けに運びました。1ヶ20kgを越えると、さすがに受け付けてくれませんでしたが、なかなかうれしい配慮でした。

これで、私の帆船の経験談はおしまいです。
この話しを楽しみにしてくれていた皆さん、どうもありがとうございました。

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