伝 説 の 亀 岡

第10話 出雲大神宮

 「丹波に出雲といふ所あり。大社をうつして、めでたく造れり。・・・」
吉田兼好の徒然草に国語の教科書にも載っている出雲神社の一節があります。
 「丹波の国に出雲というところがある。そこに出雲神社という結構なお社が造られている。聖海上人と言うお坊さんが、お参りしようと、みんなを誘ってやってきました。ところが神社の狛犬が後ろ向きに立っているのに気づき、『これは珍しい、さぞかしめでたいいわれでもあるのだろう。都への土産話にしよう』と涙を流さんばかりに喜んだ。上人はそのいわれを知ろうと思い、いかにも物知り顔の神官に尋ねたところ『あれ、またやられた。近所のいたずら小僧どもがよくやるのです。』と言いながら、こともなげに狛犬の向きを元に戻して立ち去っていきました。上人の感涙は無駄になってしまい、がっかりして帰っていったそうです。」

 出雲大神宮は丹波国一の宮で和銅2年(709年)の創建と言われ、また別名『元出雲』ともいわれており、丹波風土記によると和銅年間に大国主命を島根の出雲大社にうつしたと記されている。神社の絵図が北条泰時の書物に描かれており、その絵図は市の文化財として保存されています。
 出雲大神宮は縁結びの神であるが、雨乞いの神でもあり、日照りが続くと村民は片手に笹を持ち、片手に太鼓をもって、浄瑠璃のような長い歌を歌いながら列をつくって踊って参拝したら、それが終わるか終わらないかのうちに、すぐさま急いで家に帰らなければならない。この神社は霊験あらたかな神様なので、早く戻らないと大雨になり大災害になるくらいよく降ると言うことらしい。
 毎年4月18日には風流花踊りが奉納されます。


池に映る出雲神社の桜(千歳町)

   境内に「御神水」が湧き出ており御神水を求めて料理屋や喫茶店の人も汲みに来ておられます。
 『御神水由緒  御神体山より湧出する清き神霊水は、如何なる病にもよく効き、痛み止めの水でもあり、延命長寿水なり。含水成分、金銀、硅石アルカリ、カルシウム等名水中の名水にして、世界ひろしと言えど、天下一の名水なり。』(神社案内板より)
 

この物語は、永光尚「亀岡百景」(南郷書房)、吉田証「ふるさと口丹波風土記」(丹波史研究社)などを参考にしました。