「なぁ、沙織さん・・・いくら何でもやりすぎなんじゃねえの?」
「・・・あら星矢、私のプランに不満でもあるのかしら?」
「いえ・・・・なんでもないです・・・・・」
沙織の真っ黒な微笑みに気圧されて、星矢は大人しく引き下がる。
この人を怒らせるのは何よりの愚行だと、本当に子供の頃から身に染みて理解している星矢は、この日 数度目のため息をついた。






anaway 『G』 to 『J』 V






「はあ、着替えを・・・・」
そうですか、と眼をパチクリさせながら呟くサガは、余り実感の沸かない様子でうーんと呻った。
生まれてこの方聖域で育ったサガは、修行服かローブ、あるいは聖衣ばかり着てきたので、突然服が変 と言われても正直戸惑いを感じ得ないのが本音だった。
「星矢、私の服は変なのか・・・?」
サガが不思議そうにコトリと首を傾げる様は、年以下の幼さを含んでいて。
その表情に焦った星矢は、思わずサガの言葉に対して否定の言葉を発していた。
「いや、別に変ではないぜ、ローブ姿サガに似合ってるし・・・」
その瞬間、サガの後ろに控えていた沙織が、星矢に向かってニッコリと微笑んでいるのが見えた。
この笑顔には見覚えのありすぎる星矢は、サアッと体の血の気が引いてゆくのを感じ、ヤバイ、と思っ た。
「い、いや〜〜〜〜や、やっぱり日本にローブはナシかなぁ〜〜〜〜?」
必死に裏返ってしまいそうな声を絞り出し、星矢はチラリと沙織の方を再度見た。
沙織は先程とはまた違ったニュアンスの微笑を向けており、とりあえずはこれで大丈夫らしいと判断し た星矢はホッと息をつく。
「そうか・・・やはりおかしいのか・・・では女神、私はどのような服を着ればよろしいのですか?」
「安心してサガ!もう用意してあるわ、辰巳!持ってらっしゃい!」
「はいお嬢様!!」
何時の間にいたのか、自称・沙織の家臣No1の辰巳が、走りながら此方に来るのが見て取れた。
(ちなみに邪武が沙織の家臣No2。やはり自称。)
「ささ、サガ殿、コレをどうぞ」
辰巳はサガの前までいくと、恭しく箱に手をかけ、豪華な箱をパカリと開ける。
((((うわ・・・・!))))
心の中で合唱をやってしまった青銅4人は、あまりにお約束の展開に一時停止した。
箱の中に納まっていたのは、高価そうで明らかにオーダーメイドと言わんがばかりの、濃紺のスーツだ った。




「しかし・・・・アレは無いんじゃないの?」
「凄まじいまでに目立ってるね・・・何時もなら僕が視線独り占め状態なのに、今回は流石に負けちゃ ったかな?」
星矢の言葉を受け、うんうんと頷きながらも瞬はサラッと爆弾発言をした。
「変なオーラが出てるよな・・・」
「ってゆーか、アレは着替えた意味あるのか?」
苦笑い気味の紫龍を横目に、氷河は興味無さ気に淡々と呟いた。
青銅たち4人の視線の先には、沙織の護衛を勤めるために横に寄り添って歩いているサガの姿があった 。
麗しの美少女と美青年が連れそう光景は、傍から見ても大変絵になる図式で。
ぶっちゃけ絵になりすぎていた、というのが正しい表現だった。

今、星矢たちは日本最大の都市とも言える東京の繁華街を観光していた。
繁華街と言っても、周りには程よくオフィスビルが立ち並び、若者だけではなくスーツ姿のサラリーマ ンやOL達もまばらに歩いている。
そして、その大勢の人たちの視線は先程から一点に集中していた。
普段なら日本人特有の事なかれ主義で周りの人など気にも留めず、東京という土地柄上、派手なだけの 人間など腐るほど見てきた人たちが先程から釘付けになっている所が、星矢たち一行だった。
そうした視線を感じながら、星矢は改めてサガの方を見やり、サガってやっぱもの凄い美人なんだなぁ と思っていた。

サガは今、沙織から与えられたブランドのスーツを纏っていた。
その姿は流石の一言しか言いようが無く。
ブランドもののスーツを決して下品には見せずにあくまで上品に着こなす様は、サガだからこそ出来る 芸当だと星矢は思う。
モデル並みの長身と、スラッした体躯。そしてあの芸術品と言わしめた美しさがあってこその所業を眼 のあたりにして、青銅達は沙織の思惑を何とはなしに理解したいたような気がした。
「・・・矢、星矢」
「わぁ!なっ・・・なんだ?サガ?」
ぼんやり考え事をしていた星矢は、珍しくもサガが自分を呼んでいる声に反応が遅れた。
「その、女神に目立たないようにと貸していただいたこの衣装なのだが・・・もしかしたら私の格好は やはり変なのではないのか・・・?」
不安そうに眉を顰めるサガは、再度チラリと周りに視線を廻らせた。
ハッキリ言ってサガは大勢の視線に晒される事は慣れている。
幼い頃はアイオロスと共に村を慰問したり闘技場で戦ったりして、数え切れぬ程の村人に囲まれ、観客 の目に晒されながら模範試合を行ってきた。
それに、偽教皇時代には何百という雑兵たちを傘下に置き、司令塔として采配を揮ってきた実績もあ る。
サガは何時もその多大な民衆の目を堂々と受け、黄金の名に恥じぬ姿を常に保ってきたのだ。
しかし、そのサガですら今自分に晒されている視線には正直戸惑いを隠せなかった。
サガには到底理解できなかったが、星矢達にしてみればその違いは明白だ。
ギリシャにいた村人達や観客、雑兵たちは何時もサガを神の化身、または最強の黄金の戦士としての フィルター越しにサガを見ていた。
サガを神のように崇め、畏怖し、常に一定の距離を持っていたからサガはその期待に答えてやってき たのだ。
故に、こんな強烈なまでな好奇の視線を一身に浴びていることには慣れていなかったのだ。
そんな不安そうなサガの顔を見ながら、星矢はただただ純粋に、いんやと首を横に振る。
「別に変じゃないぜ?ってかメチャクチャ似合ってるって。だってホラ、周り見てみろよ?サガの今 着てる格好と何ら変わんねぇ奴等沢山いるだろ?今時の日本じゃ外人がスーツ着て歩くのなんて普通 だし」
ただ、そのケースのターゲット(サガ)があらゆる意味で規格外で、変なことになっているだけで。
最後の本音は何とは無く心に仕舞いこんだ星矢に、サガは少しだけ考えるような顔をしたが、やがて 肩の力を抜きフッと微笑んだ。
「・・・そうだな、少し自意識過剰になりすぎていたのかもしれんな、きっとあの者達は女神の美し さに目を奪われていたのだろう」
「うん・・・まぁ、否定はしないけど」
やや遠い眼でハハ、と笑った星矢はそのままサガの隣を歩きだし、いつの間にか星矢は先程の沙織に 取って代わって、サガとツーショットのような形になっている。
そして星矢にポジションを奪われた沙織は、何時の間にやら2人の少し後ろ、残りの青銅たちに寄る 形で黙々と歩いていた。
「やばっ・・・・!ちょ、星矢止めた方がいいんじゃない?折角サガと沙織さんがツーショットで歩 いてたのに、星矢がサガ独り占めしちゃったら絶対後で沙織さんの鉄槌が下るんじゃない?」
人が聞こえるか聞こえないかの、ごく僅かな音量でヒソヒソと瞬は紫龍と氷河に話しかける。
「ああ、きっとこのネタで1ヶ月は確実にイビられるだろうな」
「そしてそのトバッチリが俺達にまで飛び火するのがオチだろうな」
うんざりしたような紫龍と氷河の声もそのままに、3人は星矢のためというより、己の保身のために 星矢にさり気なくでサガから離れるように話しかけようとした。
「お待ちなさい貴方達。そのまま据え置いておきなさい」
「はっ?」
思わぬ沙織の言葉に3人は一様に驚き、バッと振り返った。
(((てか、聞こえてたのか)))
沙織の超が付きそうな地獄耳に驚きつつも、瞬たちは解せない顔つきで沙織を見た。
「そのままでいい、と言ったのよ?何か?」
「「「いえ、何も・・・」」」
また何かを企んでいるような様子の沙織を見やり、3人は再度大変不安な気持ちに駆られたが、とり あえず黙っとくのが得策と判断した瞬たちは、星矢とサガを冷ややかに見つめた。
「で、初めて日本を見た感想はどうだ、サガ?」
「ああ、凄いな・・・何もかもが珍しくて、どこを見ていいのか分からない程だ」
普段冷静なサガにしては珍しく好奇心に満ちた眼差しでキョロキョロと周りを見る様子に、星矢は自 分の年の倍もあるサガに対して何やら微笑ましい気持ちになった。
(ってかサガ、28年間ほとんど聖域から出たこと無いんだよなぁ・・・すっげ箱入り・・・)
サガは星矢のそんな思惑を他所に、物珍しそうに周りの景色を見ながらホテホテと歩いていた。
「っ、サガ!そこ段差!」
「え?っ・・わ!」
星矢が思わず声を上げた瞬間と、サガが公道の小さい段差に足を取られるのがほぼ同時で。
「サガ!」
思わず星矢はバランスを崩したサガの体に手を伸ばした。
(((うわ――――・・・!)))
(まぁ・・・)
3人は目の前で起きた光景に絶句し、沙織はよっしゃ!と心の中でガッツポーズを取った。
星矢はとっさに倒れそうになるサガを抱きとめようとし、しかしタッパの差のせいもあったせいで、 回し込んだ腕もそのままに星矢はサガの腰元でサガを抱きしめる形になっていた。
「・・・っぶなぁ〜〜・・・大丈夫かサガ?」
「あ、あぁ・・平気だ、すまないな星矢・・・」
自分の子供のような年ぐらいの星矢に抱きとめられた事に恥ずかしさを覚えつつも、サガは体勢を整 えて星矢に礼を述べた。
その光景は、見ようによってはまるで親子のような微笑ましい光景に見えたかもしれないが、如何せ ん近くにいる人材には些か以上に問題があった。
沙織は何時の間に取り出したのかさえ分からない(少なくとも瞬たちには取り出す瞬間が見えなかっ た)デジカメを、まるで聖域にそびえたつ女神像のごとく片手に携えて、それはもう楽しみの極みと 言わんがばかりの笑いを湛えていた。
「フフフ、今のは中々いい映像が撮れたわね」
(((・・・沙織さん・・・・・・・・)))

「ったく、サガって普段めちゃくちゃ冷静沈着っぽいのにどっか抜けてんのな〜」
「いや、その・・・景色ばかり見ていて足元を全然見ていなかったんだ・・・それに・・何分こんな に沢山の人ごみの中歩くのは初めてなものでな・・・・」
何時も村を歩く時はモーゼの十戒ばりに道がザーッと開けてゆくのが普通なので、サガにとってはこ の規則されないゴチャコチャした人ごみの群れを歩くだけでも大変らしく。
28にもなって何とも情けない・・・とサガは更に恥ずかしそうに困ったような苦笑いを浮かべた。
そんな様子のサガを見た星矢は回した腕を解き、同じように苦笑いをしながら、しゃーないなぁとば かりに片手をサガの方へと差し出した。
「??」
「ホラ、手!」
短く言い放つと、星矢は強引にサガの手を取り、ギュッと握り締めた。
「こうしていた方がまだマシだろ?どうせ周り見るなっていっても無駄なんだし。俺が手ぇ握っててや るからサガは思う存分日本の景色を堪能しろよ」
「・・・なんだそれは、そんなに私は頼りないのか」
星矢の言葉に気を悪くするでもなく、むしろ満更でもなさそうなサガは、ほのぼのとした微笑を星矢に 向かって返した。
「俺のほうがこんなんに慣れてるってだけの話だろ?ホラ、行くぞサガ」
「あ、あぁ・・・ちょ・・・そんなに引っ張るな、星矢」
固まっている瞬たちを取り残し、サガは「では行きましょうか女神」とか言いながら早速前を歩きだし ていた。
そして3人は、相槌を打ちながら後を付いていく沙織が、やはりさっきの光景を映像に収めつつ、ポソ リと言い放った言の葉をしっかりと聞き取っていた。
「ん〜星矢にしては中々良い仕事してるじゃないvやっぱり時代は年下攻めよね〜もうちょっと放って おけばまた何か面白い事してくれそうかしら??v」
愉快犯以外の何ものでもない沙織のセリフを聞きつつ、瞬たちは正に沙織の思惑を理解したような気が した。
スーツを着せたのは沙織の趣味以外の何ものでもないし、多分その姿を回りに見せびらかしたかっただ けなのだろう。
さらに星矢をけしかけ、天然同士面白いシーンが出てくるのを虎視眈々と狙っていたのだろうことは予 測がつく。
これが俺たちが命を賭して守るべき人類の女神の姿かと思うと、少々人生のモラトリアムに陥りそうに なる青銅たちだったが、とりあえず今のところはターゲットは星矢らしいことを確認し、3人はホッと 胸を撫で下ろした。
「じゃあ次はどこに行こうかしら?サガ、何かリクエストはある?」
(((まだ行くのか?!)))
心のツッコミも空しく、まだまだ続きそうな予感の沙織のお遊びに、青銅達は乾いた笑いすら零れなか った。
それから、星矢達一行は沙織のプランやらに散々付き合わされ、ひと段落つくころには空には見事な夕 日が色を染め上げていくところだった。






NEXT






・・・・なんか話が意味分からなくなってきた・・・もはや支離滅裂。星矢サガにすら失敗してます。 アウチ!
そしていい加減別人は止めようや私・・・瞬たちとかもう誰?!青銅はもっとハチャメチャな奴等のは ず・・・こんな苦労人じゃないって!(普段どんな眼でお前は青銅を見ているんだ・・・)
後、サガがボケボケすぎ。こんなトロ子いたら思わず殴りたくなるよ私は・・・(じゃぁ書くなよ)
・・・星矢とか天然タラシっぽくて嫌かもしんない;(爆)

てかねですね、この小説B、結構前に一回完成していました。
で、間違ってデータ丸ごと消してしまって(汗)しばらく思考回路が停止。一気にテンションも直滑降 低下。その日は気合駄々漏れでこの小説を放棄しました。(オイ)
んで、期間を置いて気を取り直し再度打ち出したら、前の話ほぼ忘れてました(アホ)
結局今回の小説、前回打ったのと結構話の内容変わちゃった★(キモい)
ただ、沙織嬢に関してだけは不動ですね!(笑)私の中の沙織はこんなん。腐女子万歳。オーイエー。 (死)
次回ぐらいで、もーそろそろカノン出したいです。
・・・・ってかもうこの続き読みたい人おるのかなぁ・・・(笑えないっすね)




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