ベトナムに行ったのは、1996年のことです。
まだ、アジアの経済に翳りのさす前、ベトナムはドイモイ(刷新)政策で自由経済を取り入れて、
かなり景気の良さそうな感じでした。私が子供だった頃の高度経済成長期初頭の日本、という感じで、
街の雰囲気や人々の表情に懐かしさを感じました。
ホーチミンに宿をとり、市内をうろついたり、郊外の観光地に行ったりしましたが、
その中で、ミトーというメコンデルタの街が特に印象に残っています。
ホーチミン市の西の方にチョロンという華僑地区があり、
その中にあるバスターミナルからミトー行きのバスは出ています。
中古のバスを改造して、座席は片側が2人掛けで、もう片側は3人掛け、
前後の座席の間隔も狭くなっています。その座席に客を詰め込むだけ詰め込んでバスは出発します。
バスの屋根の上には荷物がいっぱい載せられていて、
バス停まで乗ってきた自転車も一緒に乗っかって行けます。
荷物に制限はないようです。アヒルが載っていたという話も聞きました。
乗員は運転手と車掌、それと前後のドアに一人ずつお兄ちゃんが載っています。
お兄ちゃんたちの仕事は、荷物を屋根に積むことと、
走行中「アエアエアエアウー」と大声で叫びながら道路を走っているバイクや自転車を脇に寄せること。
ドアは走行中開けっぱなしです。客はぎゅうぎゅう詰め、
ドアは開けっぱなしのバスは未舗装の道路をかなりのスピードでぶっとばしていきます。
バスは土埃を巻き上げながら、2時間ほどでミトーに着きました。