2004



 2004年に入ってからは、尾崎豊のトリビュートアルバム「BLUE〜A TRIBUTE TO YUTAKA OZAKI」に参加。
 様々な有名ミュージシャンが参加するBLUE盤で、Coccoは
「ダンスホール」という楽曲をカバーした。
 3月24日に発売し、このトリビュートアルバムを企画した須藤氏の解説によると
 Coccoは尾崎氏のことはあまり知らなかったらしいが、須藤氏が亡き尾崎のこと、またその楽曲の素晴らしさを人々に忘れてほしくなく
 このアルバムを作るにあたって、懸命に参加ミュージシャンを募っていたその姿にCoccoは心打たれ参加を承諾した
そうだ。
 ちなみにクレジットを見ると、ギターなどではCoccoの楽曲でもお馴染みの手代木克仁氏が参加しており
 それ以外にもテーラー寺田氏や、マネージャーである上野新氏の名前も明記されている。
 楽曲の方はサウンドプロデューサーのホッピー神山氏の手により、かなりポップな編曲に仕上がっていて、
 Coccoは他のミュージシャンの想い入れの深い歌唱とは逆に、とてもリラックスしたやわらかい声で歌い上げ、また違った魅力を放っている。

 7月7日には雑誌「文藝」秋季号にてCocco特集が組まれたと同時に
 終戦記念日である8月15日絵本第2作
『南の島の恋の歌』を出版すること、
 購入者は挿入されている応募用紙で限定CD
『ガーネット/セレストブルー』の購入ができること、
 そして、同日に沖縄にて行政との協力のもと"ゴミゼロ大実戦 2004〜ちゅら島への道のり ラブレンジャー始動〜「歌が届いたみんなでゴミ拾い」の巻"
 という、今度は沖縄県全市町村で一斉に、各自それぞれ自分の住んでいる地域のゴミを拾うという計画が告知された。

 呼びかけのポスターでは、Coccoからのメッセージとして

 "「Heaven's hell」 歌はあなたに届きましたか?
 もしも その答えが Yes なら あなたの力を貸して下さい。"


 と記されていた。
 これに伴い、以前の歌手活動ではありえなかった露出も含め、CoccoのめまぐるしいPRがはじまる。
 まず7月16日、沖縄県庁での「ちゅら島環境美化推進県民連絡会議」に参加し、
 "みんな沖縄を好きだということは同じだと思う。組織を動かすことはとても大変だけれど、
 子供たちが動きたいとき大人たちの協力が必要です。どうか力を貸して下さい
"と自身のゴミゼロとの連携を訴えた。
 後日の7月27日付の沖縄タイムスでは、全面広告で
 「本年度の全県一斉清掃は、8月15日にCoccoさんを中心とするゴミゼロ大作戦実行委員会と連携して実施します」と正式発表。

 地元のテレビでも告知CMに積極的に参加、8月10日の琉球放送ニュース番組「ライブ i」に生放送のスタジオに登場、
 電話でのインフォメーション案内の更新作業、情報誌「hands」でのメッセージ掲載、去年に続きFM沖縄「サタデーナイトは土〜するべき?」に出演、
 (ちなみにこの「サタデーナイト・・・」で、Coccoは絵本にCD応募用紙を付けた経緯
"あくまで主役は絵本であって、CDは付属品。
 CDが主役でないのに、以前のようにレコード店にお願いして発売してもらうというのは、店側にもとても失礼な態度だし中途半端だと考え、
 今回はあえて自らの手で希望者だけに歌を届けるという形をとりたいと思った"
と語った。)
 8月8日の沖縄タイムス朝刊では全面広告で、ゴミゼロ大実戦の詳しい参加方法・問合せ先記述と共に、
 この広告が昨年発売されたDVD「Heaven's hell」の収益金によって出稿することができたという感謝のメッセージ付きで、
 日曜版では、子供たちに囲まれたCoccoの写真と、去年のゴミゼロに協力してくれた子供たちへの感謝のメッセージが掲載。
 (ちなみにDVD「Heaven's hell」の黒字分の収益金は、きちんと合唱に協力してくれた各学校へ
 寄付という形で、Coccoが直接生徒会の役員の方などに手渡しに訪れたそうです)

 この奮闘振りのあいだにも、ラジオでは絵本購入者限定CDの楽曲『ガーネット』が解禁され、オフィシャルHPでも視聴が開始されていた。

 そして当日の8月15日、ピンク色のジャージでCoccoは早朝7時から、宮古島にて現地の人々とゴミ拾いを開始。
 10時半には那覇市役所前にて、他の参加者と合流。各地では驚くほど沢山の人々がゴミを拾い集めていた。
 大実戦は無事夜7時に終了し、後日の沖縄タイムス紙上での報告によると、
 参加者は21市町村で1万585人、集まったゴミは108トンにも及び、今年のゴミゼロも大成功のうちに幕を閉じた。

 また本日発売として朝日新聞朝刊には『南の島の恋の歌』の広告が掲載された。
 角田光代氏、是枝裕和氏、渋谷陽一氏、奈良美智氏のメッセージと、近日放送予定として
 昨年同様CoccoがNEWS23にて取り上げられることが明記されていた。

 8月20日からは沖縄の三越にて、原画展がスタート
 会場は溢れんばかりの折り花、生花、原画の下には水を湛えた水槽があり、そこにも花。天井にも花。いたるところに色とりどりの花。
 壁は海を思わせるターコイズブルー、そこに泳ぐ切り絵の魚たち。日によっては本物の、小さな魚たちが水槽で泳いでいたそう。
 昨年と同じく、会場には記帳用のノート(これまた同様に、Coccoのサインも書き込まれていたり)そして日に日に増えていくCoccoのメッセージ。
 今回の物販は、沖縄・東京どちらでも行われ、内容はTシャツ、ポストカード、プリマグラフィ、500個限定で絵本+CDのセット販売など。
 原画展は今回も大好評で、花と海と魚、そして協力してくれたボランティアスタッフとの寄書きに囲まれ、とてもあたたかくやわらかな雰囲気に満ちていた。

 8月23日には「NEWS23」にて、Cocco特集として「あの歌は届いたか?Coccoのゴミゼロ大実戦」と題し
 大実戦当日に至るまでの様子と当日の模様、そしてインタビューなどが放送された。
 琉球放送「龍の髭」でもCoccoが生放送のスタジオに登場する形で、8月29日、大実戦の様子が伝えられる。

 「NEWS23」でCoccoは

 "絶望感がなくなった。
 前は嘆いてばかりだったけれど、立ち上がり頑張ったらそれだけ沢山の人が集まって協力してくれた。

 人が集まったときのパワーはすごい、人が集まると楽しくもなる。
 明日が楽しみ、そして明日の明日も楽しみ"


 と発言し、そこには歌手Coccoと沖縄人Coccoが重なった"今のCocco"が確実に力強く躍進している姿がはっきりと現れていた。
 昨年していた歯の矯正も終わり晴れ晴れとした表情のCoccoの中には、
 途方に暮れている子供のような影はなく、27歳の大人の女性としてのしっかりした美しい輝きがあった。

 第2作目の『南の島の恋の歌』も前作に続き売上も好調、
 限定CD『ガーネット/セレストブルー』も各購入者に届きはじめ
 新曲の何かを乗り越えたような、Coccoが今までに発表した曲の中にはなかった軽やかさに、一部のファンのあいだでは賛否両論が巻き起り、
 Coccoの転換期はファンの意識の転換期でもあるということが浮き彫りになった。

 ゴミゼロ大実戦が終わると間もなく、Coccoの新曲が映画のエンディングテーマに起用されるという情報が流れる。
 映画は塚本晋也氏が監督を務め、浅野忠信氏が主演する、ベネチア国際映画祭特別招待作品である「ヴィタール」
 Coccoはこの映画のエンディングテーマとして
『blue bird』という楽曲で参加し、試写会にも顔を出した。

 9月2日には、なんと前日1日から宜野湾市海浜公園屋外劇場で開催されていた
 FM沖縄誕生記念イベント「20th Anniversary エフエム沖縄 Birthday live いつも心は南向き○幸せ」シークレットゲストで出演。
 沖縄での原画展最終日、会場に張られていた告知フライヤーの日付を縁取る意味深な赤丸、
 そして
"歌うからね。いつか届きますように"というメッセージが示唆していた通り、
 Coccoはこのバースデイライブ最終日のトリを務め、『強く儚い者たち』『セレストブルー』
『(新曲)』
 昨年のRUSH BALLでの衣装を思わせる赤いドレスで、素晴らしいパフォーマンス力を持って客を沸かせ、そのブランクを感じさせない歌声を披露した。
 MCでは今回の沖縄のイベントに初参加した意図について、

 "前までは沖縄に必要とされているかわからなくて、不安で拒否されると思っていました。
 けれど「愛してる」という想いが募って弾けてしまい、こうなったらもう拒絶されても否定されもいいやと思えて
 そうしたら、ちゃんと自分は沖縄に愛されて支えられていたんだ、だからここに居るんだということにも気付けました。
 ずっとこんな風に沖縄で歌うことを夢見ていた気がします"


 と昔『風化風葬』発売時に「琉球新報」紙に掲載した手紙で
 "沖縄で歌うことはないでしょう"と書き記していたCoccoとは明らかに変化した、
 今のありのままの素直な気持ちを、たどたどしく、けれど笑える冗談も交えながら真剣に語った。

 ラストは他の出演者と共に『Heaven's hell』を大合唱。
 "ありがとう!沖縄、愛してるよ!"というCoccoの心からの叫びで、バースデイライブは感動のうちにフィナーレを迎えた。

 一方、9月9日の東京での原画展最終日では
 バレンタインデー刊行予定として
『The birds』という写真集がCD付きで発表されるという
 Coccoからのメッセージが、写真集の手作り試作品と共に置かれていた。
 メッセージではCoccoの友人であり写真家・歌手であるnanaco氏、Coccoの活動を支えていたDr.Strange Love根岸氏長田氏の名前もあった。
 活動中止以前のCoccoと関わりの深かったこの四人が再び集まるということや、
 写真という表現、そして何よりCD付きという形に、ファンの期待が高まる情報であった。

 原画展終了後まもなくして、9月11日からはスペシャルオリンピック(知的発達障害のある人たちの自立と社会参加を支援するスポーツ組織)
 との賛同企画である、様々な表現者が参加する絵画展「画楽百景」にCoccoも参加。
 「南の島の星の砂」の時期に描かれた自画像を出展した。

 11月23日にはタワーレコード25周年記念テーマソングとして
 くるりの岸田繁氏とのコラボユニット
"こっこちゃんとしげるくん"として既存曲である『SING A SONG』をリメイク、日本語詞に書き直した
 シングル
『SING A SONG〜NO MUSIC,NO LOVE LIFE〜』タワーレコード店限定で発売。
 Coccoはこの楽曲に参加したメンバー(岸田繁氏(くるり)、佐藤征史氏(くるり)、臺太郎氏、堀江博久氏)
"Singer songer"なるバンドを名乗る。
 12月3日タワーレコード主催のイベント「TOWER AWARDS IN 日本武道館」ビデオレターでの出演
 トレードマークであった長い髪をばっさりと切った、ショートカット姿での登場で周囲を驚かせた。ちなみにイベント終演後のアナウンスもCoccoは担当。
 このイベントは12月25日スカイパーフェクトTV「MUSIC ON!TV」にて放送される。

 12月7日スカイパーフェクトTV「SPACE SHOWER TV」15周年記念「スペシャプレミアムライブ15連発」にて
 2001年12月27日にオンエアされた「Coccoラストライブ〜2000.10.6 in 日本武道館〜」が再放送

 そして12月11日にはCoccoの新曲『blue bird』がエンディングテーマとして起用されている、映画「ヴィタール」が公開された。
 初日舞台挨拶では、監督の塚本氏が今回のCoccoの新曲提供の経緯を説明。
 塚本氏は以前からCoccoのファンで、台本を送ったところ
 Coccoの方から映画に合うのではないかと、ギターと声のみの宅録の雰囲気そのままの楽曲が届いたそう。

 そんな感性が共鳴した形で生まれた新曲が聴ける、映画「ヴィタール」はこの日から来年にかけて各地で放映予定。

 年も押し迫った12月28日、事前に告知されていたとおり
 くるりの年末ライブ「くるり、海へ帰る。」にてCoccoがボーカルを担当するSinger songerが登場。
 『SING A SONG〜NO MUSIC, NO LOVE LIFE〜』
『ロマンチックモード(新曲)』『オアシス(新曲)』の三曲を披露した。
 正式な形としてのライブは四年ぶりの登場だったCoccoは、マリンブルーのドレス姿でマラカスやギターを演奏。
 今回のライブの成功と、CoccoによるMCでの「これはバンドです」宣言、メンバーの堀江氏の日記での「来年はSinger songerとして活動を共に」との記述により
 2005年はCoccoの本格的な音楽での活動を楽しみにさせるものとなった。





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