「ごくろうだったな、Nモト君」
扉を開いたNモトを迎えたのはヒラオの声だった。商店街でア・サヌゥを倒した後、ヒラオの指示に従ってここまで戻ってきたのだ。
「マジ大変でしたよ・・・」
Nモトの声には、疲労の色が濃かった。理解不能の状況にさんざん振り回された結果だ。
「色々と聞きたいこともあるだろうが、まずは彼らを紹介しよう」
部屋には、ヒラオの他に4人の人間がいた。いずれも、Nモトが初めて見る顔である。
「さっきはどうも、助かりました」
Nモトは、4人の方に向かって頭を下げた。
この4人が、商店街で自分の危機を救った戦士達であることは一目見てわかった。なぜ、ここまで確信が持てるのかは自分でも不思議だったが。
「礼を言うのはこっちの方だ。なんせ、俺達が着く前にほとんど仕事を終わらせてくれてたんだからな」
4人の内の一人、赤いジャージを履いた男が言った。
「彼はルーク君だ。ドリレッドを務めている」
「よろしくな、ドリブルー」
ヒラオに紹介され、ルークは、Nモトに向かって軽く手を上げて言った。
「次に、上 高之助君、ドリイエローだ」
「よろしく、さっきはいい戦いっぷりだったぜ」
二人目に紹介されたのは黄色いジャージの男だ。
「ドリブラックのホッホシューレ君だ」
「お初にお目に掛かる。 拙者、姓はホルクス、名はホッホシューレと申す。 武士道とフォルクガイストを究めんとする事を生の目的とし、日々鍛錬んに勤しんでおる。
そもそも武士道とは、死ぬことと見つけたり見つけなかったりということが・・・・・・」
「で、最後の一人だが・・・」
延々と続けられるホッホシューレの語りを遮ることすらせず、ヒラオは話を進めるつもりのようだ。
「ああ、彼のことなら気にする必要はない。 話疲れれば止まる」
ヒラオの声は淡々としていた。手慣れた対応のようだ。
言われてNモトは、ようやくホッホシューレから目を離した。
「で、彼女がドリピンク。ドリレンジャーの紅一点、オカ=モッチ君だ」
「よろしくおねがいしまーす。」
オカ=モッチは、椅子に座ったまま軽く頭を下げた。
「では、改めて皆に紹介しよう。ドリブルーとして新たにドリレンジャーに加わることになったNモト君だ」
「ええっ!?」
そのヒラオの紹介に驚きの声を上げたのは、他ならぬ紹介されたNモト本人だった。
「いや、ぼ、僕は見学で・・・」
「しかし、Nモト君。君はドリブルーに変身した。つまり、ドリレンジャースーツに選ばれてしまったのだよ」
「え、選ばれたって・・・。そもそも、ドリレンジャースーツって何なんですか!?」
その問いに、ヒラオの表情がわずかに変化した。何か、苦い過去を振り返るような表情に。
しばしの沈黙。さして広くもない部屋に、ホッホシューレが武士道を語る声だけが響いている。
ドリレンジャーの残り3人は、ただ静かにヒラオとNモトのやりとりを見ていた。