彼から家族宛に手紙がきたのはそれから一週間経ってからだった。


















いや、手紙というより大きなダンボール箱が丸々一つ。




















家族全体的に何事かという状態だったが、
ハロルドは何か理由を知っているのか。暫く笑いが止まらなかった。






















++++++  Half-canaval(6)



























中をあけると、まず手紙がほぼ人数分入っていて、
次に何故か世界地図。
次に漫画の本。
次にお菓子にリボン。
次に紙。

そして


ダンボール箱が大きくなった理由である物体がそこにあった。






それはこの辺りでは見ない民族衣装をまとった人形だった。
丸めるように包まれた衣装は赤く、所々 蝶やら花の刺繍が施されていた。
細かい細工はそれぞれが個性をもちすぎず、しかし艶やかで
バランスが良すぎず、波打つようにちりばめられていた。
髪型も長いであろう髪の毛をまとめていて煌びやかな細長い棒
一本でその髪の毛を固めている。


ほっそりとして色白で 目も銀ぎつねのように細く、
赤いルージュが妖艶さを引き出していた。

嫌味のない華やかさだった。









そして、他の土産には 誰宛というのが書いてあったのに
それだけは誰のものという指定が無かった。



ただ、その人形が立つ台の端にそれを作ったであろう
場所が明記してあるだけだった。


















しかし自分にはその文字が読めない。
横から覗き込んできたハロルドも なんて読むんだ、これと
首をかしげている。


べつに象形文字というわけでもない。
黒光りする台に金色の文字。形ははっきりしてるが
こんな文字を使わない。

彼の国の言葉なのだろうということは百も承知だったが
生まれてこの方アルファベットの領域を出たことのない自分達が
暗号にすら思える彼の国の文字が解るはずも無い。

別にそこにかかれている文字が別に宝の隠し場所を書いてあるわけじゃない
のは解ってる。


けれど………




ため息をつくと
太ももを叩かれる感覚に視線を下げると波打つ髪をツインテールにしてもらった
妹がふにーと笑って 「彼」からのであろう手紙を自分に差し出し
一言。


「よんでー」



もうそろそろ 文字も読めるだろうに、妹の額を小突いて手紙を受け取った。















しかし。


















音読する前に数行読んで、なにか違和感を感じだ。


とくに何か重要な文章がかかれているわけではない。
普通に挨拶が書かれていて お礼があって
彼の国の気候が今どうなのか書いてあった。

ただそれだけだ。
















ふと、思い当たることがあって、受け取った手紙を妹に
返して荷物が入っていたダンボールの箱を回転させて




































「・・・これだ」




ダンボールの一部を剥ぎ取り一気に自分の部屋に駆け込んで部屋をあさると
今度はスピードを増して玄関を飛び出た。



























ルドルフが出て行くのを見守った家人の中で
いち早く覚醒したハロルドは彼がダンボールから
もいだ部分を見つけて、ルドルフがそうしたように
同じように自分もダンボールを何度か回転させて
ようやく彼が何をして どこに行こうとしてるのか納得した。









が。








数秒後今度は彼も 自分の部屋に慌てて駆け込むと
ルドルフと同じように家を飛び出していった。











あとに残されていた妹は自分の母親にルドルフから
返された手紙を差し出し


「よんでー」
と 特に気にすることなく自分のペースを取り戻した。







































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