手塚の静かな哀しみに何かしら感じた不二は、ある日の放課後、中学から手塚や自分と仲良くしている
友人たちを、テニス部部室に集めた。みな手塚も不二も良く知っている者ばかりである。ちなみにここには
手塚はいない。
「近頃、手塚の様子が気になるんだけど」
不二の言葉に最初に反応を返したのは、ムードメーカーの菊丸英二だった。
「不二もそう思う?」
「英二も?」
菊丸はテーブルに軽く腰かけながらこくんと頷く。
「何か・・・落ち込んでるっていうか・・・何かに必死に耐えてる?」
「僕もそう思う。大石は?」
不二の視線がベンチに座っている人の良さそうな友人に向けられる。大石秀一郎は中学テニス部に手塚
が入った時からの付き合いで、この中では一番手塚と付き合いが長い。
「俺もそう思うよ。だけど、手塚は何も話してくれない」
「中学の時からそうだったよね」
大石に続いて河村隆が苦笑しながら言った。彼の横に立っていた乾貞治がノートを開けて、その時言った。
「手塚は去年の夏から様子が変わった」
その乾の言葉に皆が注目する。皆、手塚の異変には気が付いているものの、何もわからないのがもどかし
かった。何かが少しでもわかるのなら、願ってもないことだった。
「正確に言えば、全国大会が終わった日の翌日からだ」
「・・・全国大会・・。青学二回戦で負けて・・でも決勝は見たね」
「確かあの時、手塚って真田と会ってなかった?」
菊丸の言葉に不二がはっとした。さっと大石を見る。
「そうだ。あの時、俺はいなかったから・・・」
「真田と二人っきりだった」
その場にいた全員が、一人の人物をキーパーソンだと確信した。
「その時、二人は何を話したんだろ」
河村が呟く。
「とにかく」
そこで不二が立ち上がる。
「真田にまず会おう。それからだね」
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