天の涙 地の哀しみ 〜1





 立海高の真田弦一郎には恋人がいる。



 手塚国光の頬にすうっと涙が流れた。



 手塚が真田に出逢ったのは、中学一年の時。当時から手塚は大会に出るほどのテニスの実力を持って いた。そんな彼に周りは当然注目した。強豪校・立海の真田も、手塚を注目するそんな一人だった。
 初対面は味気ないものだった。その時まだ手塚は真田にそんな想いを抱いていなかった。互いにあるもの はテニスにおけるライバル心だけだった。それだけだったのに・・・。
 年を経るごとに真田を知っていって、手塚は純粋にその人柄に惹かれたはずだった。ところがそれはいつの まにか形を変え、気が付けばどうしようもなく彼を手塚は好きになっていた。それが「恋」だとわかり、受け止 めることができたのは、つい昨年のことだった。



「手塚?」
 友人の声に手塚は静かに窓から視線を移した。
 中学からの付き合いをしている、不二周助だった。心配そうな顔をこちらに向けている。
「どうしたの?どうして泣いてるの、手塚」
「・・・・」
 手塚の頬にまた涙が流れる。だが、彼の顔は仮面を被ったかのように無表情だった。そんな相手に何かを 察したのか、不二はポケットからハンカチを取り出して手塚に差し出した。
「涙、これで拭きなよ。まだ使ってないからキレイだよ」
「・・・」
 不二のハンカチを見て、手塚は黙って首を左右に振った。
「でも・・・」
「もう少し・・・」
「・・・?」
「もう少しだけ、このままに・・・・」



 今だけは。
 この涙を流し、この叶わぬ想いを悲しみたい。


continue



いつもお世話になっているうえに、こんな素敵なお話を 頂きました。
美濃上総さま、ありがとう。
刹那い文体が心に染みます。手塚涙の訳は? 手塚の幸せは? 何してんの、副部長! と 叫んだのは木島だけではないはずです。
長編SSの序章で、続きも木島が頂きです。わはは!(強奪)