天の恋 地の愛 〜1



 インハイで全国大会に出場するほどの強豪校は、大抵休日にも部活がある。
 青学こと青春学園高等部男子テニス部もそうだった。



 軽いウオーミングアップを済ませた手塚は、外野が変に騒がしいことに気が付いた。それは黄色いいつもの女子の 声ではなく、恐れるようにどよめく男子の声だったからだ。
「・・・?」
 何だろうと振り返って外野の一角を見た手塚は、そこで息を呑んだ。
「手塚」
 普段なら絶対聞くことのない声に、手塚の心臓(こどう)が速くなる。
 本当なら「部外者は出て行け」と言うべきところ・・・。
「話がある。すまないが少し出てきてくれないか?」
「・・・」
 二人見つめ合ったまま固まってしまったところに、助け船とばかりに不二が割って入ってきた。
「あれ?真田じゃない」
 不二だけではない。
「もしかして青学の偵察?」
 菊丸が真田に近寄って言う。
「違う。手塚に少し急用があって来た」
「急用?気になるな」
 早速ノートを広げ始めた乾に、真田の眉が不機嫌そうに片方だけ上がった。
「乾。真田が迷惑そうだ」
「大石先輩の言うとおりっすよ」
 大石の言葉に、海堂も賛同する。
「・・・真田さん、恐ぇ」
 桃城がそっと呟いた。
「手塚」
「っ」
 しびれを切らした真田の声に、手塚がらしくもなくビクッと反応する。
「ほんの少しでいい。今日でなければ来れないんだ」
「・・・・わかった」





 〜続く〜