斜めに大きく羽根を広げた鷲が、遥か上空から彼らを見下ろしていた。
猛禽類が引っかく蒼穹は目に痛いほど澄み、なだらかに続く地平の緑との境界が、この地の脈動と不変の証でもある。
つい先日までこの島の西端で一国の興亡をかけた戦闘が行われていたとは思えないほどの長閑さだ。たかが数日の不在。
だがいまは王が在国。それだけでこの風景が活気を帯びる。
城門を出て青々とした平原を少し南に下ると、真正面に鬱蒼とした森が広がる一帯に出る。西手に小さな渓流がせせらぎ、
森の入り口の木々が複雑な配置をなし、景観としては極上だ。しかも下草に足を取られることなく、地面の隆起もほとんどない。
つまりお昼寝なんかには絶好のロケーションで、よく城を抜け出してここで寝転び、渓流に釣竿を垂らしたりして
いた。ひと目にもつきにくく、だから今回のお手合わせにも申し分ない場所だったのだ。
お気に入りの場所なんだけど、できればもっと穏やかな目的で使いたかったんだけど、あ、だったら次はピクニックに
でも誘えばいいか、なんて目論みながら、剣呑さを隠そうともしない少年とふたり、剣を携えて向い合うのも、らしいと
言えばらしい話だ。
馬を降りるや、早速抜き払われたルカワの剣は地面スレスレの位置でセンドウの準備を待っていた。
木々と大地と大気に抱かれた空間の中で、ひそりと異彩を放って。
彼がなにを欲しているのか。浅からぬ縁の、けれどまだ浅すぎる付き合いの中で、不透明ながらなんとなくだが掴めて
きたものがある。その性質もだ。
力が欲しいと声だかに訴えるよりも、己の成すべき位置で足掻ける強さを持っている。
国を成すにはひとがいる。ひとを
成すには己の力量が必要になってくる。父王が病に臥せっているいま、ルカワには方向性を示唆する知恵も誇示する蛮勇も
ない。確かに、ルカワ王家に長年仕えた股肱の臣たちは、王家再興のため、王子にも忠誠を誓ってくれるだろう。
だがその彼らに返すものがなにもないのだ。信じろと値するものがなにも。
気持は分かる、と言ってやるのは簡単だ。彼のために出来る範囲の助力は惜しまない。いまはサクセンに向けられている
マキ王の目を、カーマライド奪還に戻す言葉を持つものは、フジマかセンドウだけだろう。説得しようと思えばなんとでも
なる。だからと言ってルカワに跪くわけにはいかない。互いの矜持が、そんなものは嘘っぱちだと突っぱねる。
だから、いまのセンドウには己の剣を振り上げるしかないのだ。
「来いよ」
たった、そのひと言が合図だった。
右下段に下げていたルカワの剣は、一歩踏み込み体重を乗せてセンドウの目前を斬り上げた。左に避けてそれを
流したセンドウは、中段の位置にあった愛剣を振り下ろす。前のめりにあったルカワの躰はワンステップ入れてセンドウの
攻撃をかわした。そのまま間髪を入れずに横なぎへ。胴を払ったはずの剣は、センドウの軽い身のこなしに空を切った。
「いい動きだな」
軽くいなされて、ケっと吐き捨てた。水平に振った剣先を右に上げて必要最小限の動作で、斜めに振り下ろした。それも
カツンと弾かれて、けれど余力を残していたから、そこから二段攻撃に転じられる。弾かれたそれを片手持ちに変えて、
鋭い突きを繰り出した。
狙いはわき腹。しかしそれも半歩の足さばきでかわされてしまった。
「ちっ」
ひと呼吸入れて互いの距離を推し量る。重い息を吐き出したルカワに比べて、センドウは軽口を叩く余裕さえあった。
「う〜ん。ホレボレする剣筋だね」
「ほざけっ」
「引くことを知らない飽くなき闘争心。思いの丈を気に込める王の剣だね。けどさ、なんでオレのこと、覚えてなかった
んだ? マキさんはきっちり覚えてたくせに」
「はぁ?」
「シツコイようだけど、すげぇショックで」
ざけんな、と胴もガラ空きな大上段で剣を振りかぶった。沸騰した一撃は難なくかわされ、剣は見事に地面を捉え、
激突だけは避けたものの、掠った剣先が余計に手を痺れさせ、次の攻撃に移れない。それさえ見越したように、中段に
構えたセンドウの剣先はユラユラとルカワを弄るように揺れ動いた。
「ダメだよ。重い諸刃の剣をそんなふうに大振りしちゃ。長丁場になるとおまえの体力が持たない。ルカワの持ち味はその
スピードとテクニックだろ。一撃で致命傷を与える剣筋じゃないだ。剣もアレだよ。おまえに
合ってるとは思えないな。もうちょっと軽いのをしつらえたほうがいい」
「あ……んだとっ」
鍛冶屋のじーさんに頼んどいてやる、と本気で心配されて地を蹴った。握力の戻らないまま打ち下ろした剣は、センドウ
の払い上げに肩より高い位置で弾かれ、その衝撃で手から零れ落ちてしまった。マズイと思う間もなくそれは宙で弧を
描いて背後へと流れ、地面に突き刺さった。
戦場においては、即、死に至る失態だ。
「減点その2。相手の弁にイチイチ熱くならない。冷静に対処すること」
「戦闘中に、べちゃくちゃ、くっ喋るヤツがいるかっ」
「現にいるじゃん。オレみたいなヤツがさ」
そんなヤツ、他にいるもんか、と、睨みつけるルカワの真横を通り過ぎ、地に刺さった剣を引き抜くとセンドウは、握りと
由緒を確かめるように柄の象嵌に目をやった。有翼双頭の獅子の紋章。ルカワ王家の家紋だ。継承者に代々受け継がれる
逸品なのだろうが、思ったとおり、これは自身の重みで敵を叩き潰す類の剣だ。
「惜しいな」
「オレでは使いきれねーってかっ」
背後で絞り出された悔しそうな声に、センドウは振り返りもしないで答えた。
「そうだな。オレなんかに一撃も与えられないようじゃ、アイルランド王は到底討ち取れない。剣も泣いてる」
惜しいと思いつつ、この剣の代わりに一段軽い業物を与えたところで、なんの解決にもならないとセンドウは思った。
センドウのアロンダイトはもとより、マキ王のエクスカリバーはもっと重い。それをあの王は片刃の刀のように
軽々と扱うのだ。
たかだか剣の重さと言うなかれ。王たるもの。己の力の甚大さを誇示し続けなければならない。本気で王家を再興させる
つもりなら、圧倒的に不足しているその部分を育ててゆく必要がある。
この、ルカワ王家の宝剣だって、使い負けしている場合じゃないだろう。
「名前は?」
「カラドコルグ」
硬い剣とも訳されるそれをセンドウはルカワの背中に向けて放り投げた。半身を返して片手で受け取ったルカワは、
もう一戦とばかりに構えの型を取った。いいだろう。圧倒的に足らないのは実戦経験もだ。お相手仕ろう。その
ためにオレはいる。
けれどセンドウの訓練はやはり、ひととは少し違っていて。
「それよりさ、マキさんとは幾つのときに知り合ったんだ?」
訓練よりもなによりも、己の知的好奇心探求に重きを置いていた。
「てめーっ。マジメにヤレっ」
「真面目だって。さっきも言ったろ。冷静に対処すること。戦闘中だったら尚のこと、気を散じちゃう場面なんかヤマほど
ある。五感を研ぎ澄ませろよ。したらさ、答えながらでも、戦えるんだぜ」
詭弁もいいところだが、捉えようによってはこれも立派な訓練だ。そう思うようにした。現にセンドウは呼気の流れと
己の動きを合わせている。くっ喋りながらも足の運びは至って優雅で、なのにそこから昇る太刀風は激しい。緩と急。
静と動。あふれる殺気と押し殺した笑みのとらえどころのなさが、ルカワをしてあごを上げさせた。
こんないー加減なヤツに。
「五つっ」
そう吐き出したのは動作と動作の間の接ぎ穂のようなものだ。言葉にして体勢を立て直して剣先を引き上げる。して
やったり、とセンドウの笑みがいっそう深くなった。
「五つか。そのころのカエデ王子は、それはそれはお可愛らしかったろう」
「それがなんだっつうんだ」
「まぁ、そう言いなさんな。マキさんは? 優しくしてくれたのか?」
「んなんじゃねー。王は、オレに剣をくれた。初めて手にした木剣は王が、つくってくれたもんだった」
「ヤな役目、担ってくれるなぁ」
「年に何度かしか会えなかったけど、いつもこっそり剣の相手をしてくれて」
「父上や母上には内緒だぞ、って?」
コクンと頷いてルカワは地を蹴った。互いの愛剣が激しくぶつかり、ギリギリと泣き声をあげる。冷静に対処しろと
言っても性質上、そうそう変えられるものではない。センドウの目の前に燃えるような漆黒の瞳がある。以前王が語った、
小さいながらも十分に苛烈な性分をしていたころから引き写したような強さがこれなら、王が惹かれるもの頷ける。
この視線を一身に集めたいと願うのも。
閉ざされたルカワの世界に一条の光を与え、彼はどうありたかったのだろう。
「あのひとに会えるのだけが楽しみだった。あとで知った母上は気が狂ったみてーに泣き叫んでたけどっ」
横からきたルカワの剣を目の前で弾いて、センドウは後ろに跳び退った。
「そっか」
「どいつもこいつもオレを姫だと扱った。父上も母上も。その他のヤツらも。で、てめーもだろっ」
「うん、そうだったね」
「だから、王だけだったんだ。オレのことをちゃんと見てくれてたのはっ」
なおも一直線に襲い来るカラドコルグのきっ先がセンドウの耳横をかする。同じように突き出したアロンダイトは、斜め
に散ったルカワの黒髪を裂いていた。そこからの引きはセンドウの方が速かった。互いに相手の攻撃範囲から退い、
半円を描いたセンドウの剣は、その反動を活かしカラドコルグの鍔を直撃した。
「っつうっ」
手首から肩にかけて激痛が走る。握力は既に限界だった。けれど二度も剣を取り落とす失態は絶対にイヤだと、咄嗟に両手
持ちに替えてしまってから気づく。左半身がガラ空きだ。落としてくれと言わんばかりに晒された首筋に、
先に太刀風が起こり、ひんやりと首筋に当てられたアロンダイトの刀身が、やたらと冷たかった。
続いて放たれたセンドウの言葉も。
「おまえ、二度、死んだな」
もう体力切れか、と屈託なく哂われてもなす術がない。屈辱に身を震わせるしかないのだ。肩で大きく息を吐いて睨み
を入れると、相手は心外とばかりに眉を下げる。もう一回、と叫ぶ前にこの勝負を放り出したのはセンドウの方
だった。
「おまえのこと言えねーや。オレも体力切れ。すっげぇ寝不足でさ」
と、しゃがみ込むと、内臓まで披露するような大欠伸をかます男。おまけに、ココに座れとばかりに隣をポンポンと示
したあと、本気で寝転んでノビなんかして、いまにも寝入ってしまいそうだ。
ルカワは思わず舌打ちをした。確かに、コイツの技量は認めるけれど、こんな、他人のペースを平気で
かき乱す度し難い男に扈従することが、本当に自分のためになるのだろうか。今更ながらに王の真意を測りかねる
ルカワだ。
「あんたが一騎打ちとか言ったんだ。さぼんなよ」
「だって、もう勝負が付いちゃったもん」
「オレの修練なんだろっ。だったら、あんたには付き合うギムがある。それがイヤだっつうんだったら、あんたの従者は
取り下げるまでだ」
「まぁそういきり立ちなさんな。時間はたっぷりあるんだからさ」
聞いてルカワは、ダンっと、センドウの顔の真横の地面に己の剣を突き刺した。流石ののんびり屋もその衝撃に閉じて
いた目を見開いた。引き抜かれた剣が土塊を舞い上げ、センドウは身を捩って逃げて、難を逃れた。
まったく、騎士長を騎士長とも思っていない所業だ。
「ルカワっ」
「時間なんかねーよ。こんなところで昼寝してるほど暇じゃねー。さっさと騎士に上がって、王に意見できるように
なって、一軍を指揮できるようになって、城を取り戻す。オレがここにいる理由はそれだけなんだからなっ」
「立派だよ、ルカワ王子。けどさ、それこそ、一足飛びになんとかなるもんでもないだろう?」
「分かってるよっ。だからってここで寝そべってても、なんも変わんねー。オレにはあんたと違って使命がある。ほんの
ちょっとの時間だって惜しい。ちょっと剣が上手いからって、あんたみたいにいー加減で、デタラメで、ずぼらで、節操
ナシのフシダラ野郎が、なんで騎士長、張ってられんのか、理解できねーよっ」
「ものスゴイ言われようだな。オレになんの目的もないって?」
そう言い、横たえていた身を起こしただけで、ゾクリとした冷気を纏ったセンドウの怒りが、ルカワの頬を弄るような
心地にさせた。だれだ、コイツと思うほどの冷酷な瞳だ。だがそれも瞬時にして消え失せる。いったいなにがセンドウを
怒らせて、そして押し込めたとたんに、こんなひと好きのする笑顔を貼り付けられるのか、ルカワには分からなかった。
「……」
「確かにおまえの言うとおりかもな。オレの場合、時期を待ってるっていうか、待ちすぎて全部後回しにしてるっていうか、
邪魔くさくなって半分諦めてるっていうか」
「?」
「それより、おまえマキさん、好きか?」
「なにを急に――」
「好きだろ? おまえのことをちゃんと見てたのはマキさんだけだったんだからな。だったらさ、その王が、いい加減で、
デタラメで、ずぼらで、節操ナシで、えっと、あとなんだっけ?」
「フシダラ野郎」
睨むルカワにセンドウはクツクツと哂った。ああ、そう言えば、そんなこと、しちゃったな、と、右手をかざして
わざと下卑た視線を送っても、そんなこと、なにほどでもないとばかりに、ツンと顎を上げる頑是なさが愛おしい。
この想いが留まりそうにない予感に怯え。
「そうそう。フシダラ野郎におまえを任せたってことは、そんなフシダラ野郎もおまえにとって必要だってことじゃねーの?
オレならそう取るけどね」
努めて明るい声を出す。
「フン。あのひとの考えてることなんか、分かるかよ」
「敬愛なる王のなさりようを、もう少し信じてあげたら?」
「アカギさんとかの方が、ずっとよかったのに」
「おまえもはっきり言うね。でもアカギさんはミヤギとサクラギで手いっぱいだ。あぁ、ミヤギは騎士に昇格だったっけ」
「使えねーの」
ドンと音を立てて座り込んだルカワは、そのまま仰向けになると、帰りてぇと小さく呟いた。呼気を吐き出すように
飛び出した言葉に目を瞬き、そうすると空の青さが目に染んでしまうのか、ルカワは両手をクロスして顔を覆う。後悔と
共に引き結ばれた唇は、初めて接する弱気の色を滲ませていた。
センドウは顔を覆っていたルカワの腕を外した。外して現れた漆黒の瞳が日の光に晒されて揺れる間に両手首を
地面に縫いつける。瞳を覗き込まれるのを厭ってルカワは顔を背けた。そのおとがいを掴んで目線を合わせ、センドウは
ルカワの名を呼ぶ。
この体勢で、この状況で、目を瞬くだけの反応しか返らないニブさに笑いつつ、センドウは彼の唇に己のそれを
ゆっくりと押し当てた。表情さえ読み取れない近さで、少しかさついた唇が呆然とこり固まったままだ。一度離れてルカワの
名を口腔内で含み、もう一度重ねたときに初めて、両手でセンドウの肩を突っぱねることで明確な拒絶を返した。
「セン……ドウ、てめー、まだ、オレのことを――」
オンナだと勘違いしてるのかと、瞬時に沸点を見た瞳が憤りに燃えている。バカか、おまえ、と唇に乗せてセンドウは
尚も迫る。この期に及んでソノ返しはないと思う。だが、そう言い放つしか手立てのない少年の稚さを、どうやっても
手に入れたいと思ってしまうのだ。
そう、初恋から続いていた糸は、センドウがけして放さなかった。捻れていたんだと知ってもなお。そんな気持の
ありようなんて、ルカワには分からないだろうけど。
「んなわけ、ねーだろ」
じゃ、なんでと見上げたセンドウの端正な容貌の先、雲ひとつない蒼穹の中を、あり得ない低い位置で飛翔する一羽
の鷹の姿があった。一度彼らの頭上で旋回してどこかに飛んで行ってしまったそれに気を取られ、完全に無防備で、
また口づけられて触れた肌膚の熱さに気づく。もう一度合わさったセンドウの瞳は、呆れと怒りを含んでいた。
「失礼なヤツだな、おまえ。無茶苦茶暴れるとかされたら、押さえつけることも出来るのに、こうも反応ないと
自信なくなっちゃうよ」
オレのことしか考えられないようにしてやろうか、なんて囁く腐れた唇を両手で押しやって、それでも合わせようとする
男とすったもんだ。殴って蹴り入れてやればいいものを、なぜか抵抗はそんなささやかなもので、躰じゅうの力が
抜けきっていて、どうすることも出来なかった。
センドウにすればこれ幸いと、けれど、いちゃつくだけでそれ以上に及べないわけは、何度も泳ぐルカワに視線に
ある。なにかを感じ取って、いや、それ以前の、説明のつかないなにかがふたりの熱を奪っていった。
「センドウ……」
と呟かれて、背中がゾクリとあわ立った。か細い声の頼りないさまを感じとってではない。ルカワがのそりと腕を
上げ、城の方角を指差した。姿よりも先に地を蹴る馬の蹄が立てる振動が、なにものかの到来を告げていたのだ。
身を起こしたセンドウは、いま一度飛来してきた鷹の姿に視線を引き絞る。急旋回して降下した鷹が向う先にあるのは、
黒衣のドルイド僧のしなやかな姿。こちらに向って駆けてくるその腕に、彼の忠実な僕は着地した。
「フジマさん……」
完全に見られたカモ。いや、いまはそれどころじゃない。きっと。ルカワが大儀そうに肘をついて上半身を戻す。
平原に座り込んだカタチの彼らの前で愛馬を棹立ちさせたフジマは、センドウに冷ややかな視線を投げかけると馬から
飛び降りた。
小柄なフジマがやたらと脅威に思えてしまう。
それよりも、ほんのさっきまで、イヤな予感なんかこれっぽっちもなかったのだ。
たぶん、ルカワにしても。
意気揚々と城を出て、思う存分剣を交えて、そのあと、ちょっと思わぬ事態にもつれ込んだだけで。
だからルカワはきっと、真っ青な空に飛翔する鷹の姿を見るたびに、きょうのことを思い出すだろう。
フジマの言葉を思い出すだろう。
センドウから受けた口づけと共に。
仰々しく黒衣を払ったフジマは、その場に片膝をついて、重苦しい言葉を発した。
「いますぐ城に戻られよ。ルカワ王の様態が急変した」
continue
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