翌朝未明。
視界はけぶる春霞が邪魔し、辺りを照らすわずかな光は、弱々しく瞬いている星々だけの暁闇まだき。
霜枯れした下草が長靴の底からシンシンと冷気を伝えてくる中で、演習の準備は着々と整えられていた。空は分厚い雲に
覆われているのだろう。中天に月の姿はなく、文目も分かたぬ暗がりの中で、生き物の息遣いといななきだけが互いの
位置を教えくる。
騎士たちが愛馬にまたがり整列を果たしたころになると、計ったかのように、地平の彼方に一条の光輝が走った。
演習の規模がゆるゆると明らかになってゆく。目が慣れて、己の周囲に展開するその総力にルカワは圧倒された。
デミーティア国、王師四師の集結。ルカワたちの前には王城を背にしたマキ王。そしてその脇を黒衣のドルイド僧と
王騎士長が固めていた。さながら、王城と王が騎士や兵士たちを南面する格好で、四師を二軍に左右に分け、対峙する
陣形になっている。
「遠征から還ったばかりだというのに突然の演習。急遽、体裁を整えてくれた諸侯らに敬意を表する。大儀であった」
キリと冷えた朝もやの中にマキ王の低音が響き渡った。兵士たちは答礼のために槍を掲げる。
「だが、オレはいつだって唐突だ。いまに始まったこっちゃないのは周知だろう?」
兵士たちからは苦笑が漏れた。いつだっての唐突な思いつきに、右往左往させられた王騎士たちはそっぽを向いて
いる。
「オレ以上に、敵の進撃も唐突だ。こちらの体制が整うのなんざ、待っちゃくれない。ブリテン島
は小さい。なのにデミーティアはいまだそれを御し切れていない。対岸をはさんだアイルランドは手の届く位置だ。
いつだって我等を脅かせてきた。だが、諸君。あの曙光を見ろ。輝かしい旭日だ。しかしそれを脅威と思え。東は鬼門と
心得よ。サクセン人たちの足音は、もう間近まで近づいて来ているぞ」
淡々とした言い様の中に含まれる危機感が、だれもの背中をザラリと撫でていった。
初めて目にしたルカワが圧倒するほどの兵力を揃えながらも、まだ、王城には多数の近衛・哨戒兵を残している。
この数でまだ全軍ではあり得ないのだ。それでもマキはデミーティアを小国と呼ぶ。
そう。
父王の庇護の元、ルカワが知りえなかった、大きな外の世界。自国の繁栄と外敵からの侵攻は、食うか食われるかの
瀬戸際で進行してゆく。怯懦は機会を逸し、一瞬の逡巡でさえ国を滅亡へと追い込んでしまうのだ。謙遜でもなんでもなく、
それを熟知している男は正確に現実を捉えているのだろう。
「諸君。ダーナの裔にして勇敢なログレスの子らよ。剣を取り盾を持て。気を漲らせ急襲に備えよ。停滞は許されぬ。
それ、すなわち諸君らの死を意味する。身を守れ。そして家族を守れ。ひいては故国を守るために、懸命に駆け続けよ。
その勇気を見せつけよ。諸君らの志はこのオレが預かるっ」
ここで言葉を切ったマキは、愛剣エクスカリバーを天空に突き立てた。
兵たちから地鳴りのような歓声が沸きあがった。
周囲の緊張が伝播したのか、ルカワの愛馬がふるんと嘶いた。気づけは彼の右隣にいるのは王騎士のアカギだ。
アカギ自身、他の兵士たちのように咆哮を上げるわけでもなくただ正面を見据えているだけなのに、覆い隠せない剣気と
圧力で、マキ王の檄に呼応しているかのようだった。
逆に左隣で雄たけびを上げているのは、あの赤毛の乱暴モノだ。近いだけでなく、本気で耳に痛い。ムっと眉間にしわ
を寄せると、そんな僅かな不穏さにも気づくものなのか、サクラギから射るような視線が返った。意外とカンのいいヤツだ。
イチイチ相手をしていられないから、顎を上げただけでそれをいなす。自分のことはすっかり棚にあげ、コイツがいるから、
アカギさんは、必要以上に気ぃ張詰めてんのか、と思うルカワだ。
曙光を浴びてマキ王のエクスカリバーが振り下ろされる。続いて待ちかねたように進撃の角笛が吹き鳴らされた。
どうやら編成上、ルカワはアカギの部隊に組み込まれているようだ。アカギ、ミツイの連合軍と、ハナガタ、ジンの
連合軍が対峙している格好だった。
古代から中世にかけての戦闘スタイルは、十字軍の遠征(1096〜)以前と以降に分けられるという。あの宗教戦争
の名を借りた東方への侵攻と侵略により、それまでの欧州にはなかったさまざまなものが持ち帰られた。その最たるもの
のひとつに、背が高く疾走能力に長けたアラブ種馬がある。それまで、ずんぐりむっくりの農耕馬に騎乗していた欧州
の騎士たちは、戦闘において重装歩兵の補助的な役割でしかなかったのだ。
当時まだ鞍に附属するあぶみというものがなく、馬上で騎士は踏ん張ることが出来ない。機動力に優れていても、
主体はあくまでも重装歩兵による正面突撃。その数によって勝敗は決まると言われていた。
だからアカギもハナガタも、軍の大多数を締める重装歩兵を前面の押し出す常とう策を取った。騎兵に当たるルカワは、
待機の命令が出た以上、その場に留まるしかない。
対峙していた重装歩兵たちがガツンと音を立ててぶつかった。穂先を保護した模擬槍とはいえ、実戦さながらとなれば
怪我のひとつやふたつは免れない。それどころか、当て所が悪ければ、怪我ではすまなくなるだろう。間近で見ていた
ルカワが身をすくめるくらいの激しい当たりだった。
重装歩兵たちのぶつかり合いで崩れた均衡を、さらに大きく拡大するのが騎兵たちの仕事だ。そこからは一歩も自軍へ
侵入させない意味の防衛ラインでもある。歩兵たちが崩した小さな綻びを見つけ、だれよりも早く馬腹を蹴ったのは
サクラギだった。
「おら、おら、おら、おらっ。どきやがれっ」
馬上で槍を縦横に振り回し、半円を描く形でサクラギは前線を押し進める。あのガタイのよさから膂力の強い男だろう
とは推測していたが、まぁ、気質同様、技法も直情経口そのものだった。その横についているのはミヤギだ。
サクラギの攻撃一辺倒の手法に比べ、彼の方が駆け引きが上手い。押すと見せかけて巧妙に下がり、しかしその後には
必ずと言っていいほど、敵方の陣形が崩れてしまうのだ。
なるほど、と、その場に立ち尽くしボヤっと見入ったままのルカワをサクラギが振り返った。挑発するように唇の端を
上げ、的外れも甚だしく、獣のような雄たけびを上げている。
「口だけかっ。このキツネヤロウっ」
ルカワの横にいたアカギの舌打が聞こえた。「調子の乗りやがって」、とはまったくだと思う。演習の迫力に臆して
出遅れたと勘違いしているのだろう。こちらとしては功を焦っているわけでも、イの一番に拘っているわけ
でもないのだ。
なのに。
「反応がニブいのはてめーの方だろうっ」
いつぞやの言い合いを根に持っている口ぶりで盛んに煽ってくる。ルカワがフンと吐き捨てると、「戯言に惑わされますな、王子」
との言葉とともに目の前に出現したアカギの腕。どうやら彼は、お目付け役というより防波堤のようだ。
言われるまでもなくサクラギの向こうを張って、力任せの勝負に挑む気なんかサラサラない。実際、
サクラギのパワーに押されて、敵軍の防衛線がジリジリと後退を始めているが、あんな荒業がだれにでも通用するもの
ではないのだ。
――つまんねー戦い。
自国で経験した先の戦闘では、ルカワは父王と共に近衛兵に守られていた。味方が崩れ否応なく前線に立たされ、敵の
刃をかいくぐったけれど、どんなふうに戦端が切られたのかまでは知らない。そんな立場にもいなかった。だから、実戦
さながらの演習と聞いて、あのときの敗因がつかめるかも、と期待していた分、失望が大きい。
――ただ力と数で負けたってことじゃねーだろ。
それは分かっていた。いや、いまだから分かったことだ。
もっと違う根本的ななにか。父とマキ王との決定的な差のたくさんを、この国にいる間に掴んでおかないことには、
祖国を取り戻したところで二の舞になるのがオチだ。
だから余計にこの演習が厭わしく思えてきたのだ。
「ばっかじゃねーの」
「王子?」
落胆気味のルカワの面前で、両軍が入り乱れて混戦となる。アカギがルカワを促した。渋々馬を進め、やる気のない
槍を繰り出し、そんな中、彼の目には、敵軍の将帥の存在を示す旗指物への道筋が見えた気がした。
アレを、だれよりも早く抑えたほうが勝つ。
力と数だけが頼りの戦いよりも。
せっかく騎乗してるのにこんな後方でモタモタして、これじゃ、勿体ない、と、考えたかどうか。それは本人にだって
分からない。速さで騎兵が重装歩兵に負けるわけがない。なによりも、あんな力だけの口煩いヤツに言われっぱなしで
いられるものか。機敏に動くミヤギの背を見ているうちに、先ほど朧だった道がくっきりと浮かび上がり、
ただそれだけで、
「ミヤギさんっ」
誕生したばかりの王騎士に声をかけるとルカワは、歯をむき出しにしてその場に留まるサクラギを尻目に、
馬腹を蹴った。
「なにっ? なにしようって?」
素直にも、呼ばれたミヤギはルカワのそばに寄ってきた。
「あんた、脚、速いっすよね」
敵の攻撃を槍でかわしながら、ルカワが問う。ミヤギは露骨に顔をしかめた。
「速いかだとぉ。オレとこいつは人馬一体なんだ。おめー、だれに聞いてやがるっ」
「一気に突っ切るけど、来れるんか、来れないんか、どっちなんすか?」
「出来る出来ねーの問題じゃねー。なんでおめーに命令されなきゃなんねーんだよっ」
「じゃ、いい」
「はぁ?」
「あんた、速そうだから、イケルかなって思ったけど」
「いいってどーゆーことだよっ」
「ひとりで行く」
「行くって、どこへっ」
「旗」
「旗って、おまえっ」
「んじゃ」
「待ちやがれ、このバカルカワっ」
けしてルカワに付き従ったわけじゃないミヤギがその後を追って、二騎は敵重装歩兵の壁を突き破っていった。その姿を
認めて、全体を俯瞰していたマキが腕を組んだ。フジマは音がするほどの深いしわを眉間に描き、立ち尽くしたままの
センドウは一歩前に踏み出す。
「なに、トチ狂ってやがるっ」
王を御前にしたフジマとも思われない言葉にだれも答えられない。あのバカ、とセンドウは従者から愛馬の手綱を乱暴に
もぎ取り、そんな様にマキのからかう声がかかった。
「少し落ち着くんだな、センドウ。王騎士長ともあろうものが、みっともない真似をするな」
「そうは申されましても」
「アレはバカだが、小細工を弄してアタマを使った末のバカじゃないから、収拾もつけ易いさ」
そうでしょうか、とはフジマ。彼の指差す先、ルカワとミヤギの二騎が、敵の重装歩兵と騎馬隊の間を突っ切ろうと
していた。かく乱するつもりかと思ったのも束の間、二騎は大した応戦も功績も挙げずにただ、ハナガタの旗を目指して
駆けているように見える。呆気に取られていたハナガタ軍も、わけが分からないまま、そのゆく手を遮ろうと動き出した。
圧力は当然なはずなのに、縦横に進むふたりの手綱さばきだけは誉めてやってもいい。
しかし。
アタマを使った末のバカじゃない?
違うだろうと思った刹那、センドウの頭の中でパチンとなにかが弾けた。
陣形と統率と連携。真正面からがっぷりと
四つに組むだけが戦法じゃない。戦法? そうだ。例えばいまのように、騎馬が駆けて敵のど真ん中を突っ切り、敵陣形
が左右に裂かれたとしよう。その瞬間、騎馬隊が馬首を返せば、後方の歩兵と挟撃の形をつくることができるんじゃないか。
実戦において、なにが一番怖ろしいかと問えば、だれもが後方との退路を断たれることだと答えるだろう。その形が
出来つつある。確かに、この無謀を実戦可能レベルまで引き上げるには、相当数の騎馬隊と操馬術と素早い返しが必要
なのだが。
いままであまり考えたことのなかった戦法だ。
「なるほどね」
同じ域に達したのか、マキののんびりとした声が上がった。フジマは渋面なままだ。
尤も、ふたりの策士を唸らせた少年は、戦術を鑑みて駆けたわけではない。ただの我慢の限界と、積もりに積もった
鬱憤と、打破したい故国の未来と。そして計算を取っ払い五感から派生した乾坤一擲の策――いや、ただのヤケクソ
だ。
そのヤケクソが将来に繋がる可能性を含んでいたとしても、いまは、言うべきことは言ってやらなければならない。
事実、ハナガタを守ろうと動いたジンの騎馬隊に真横を突かれ、旗指物を目の前にして急遽、退却せざるを得ないふたりだ。
最初から二騎では無理な戦法だったのだ。だから今度はふたりがハナガタ軍に呑み込まれそうになる。発想はよかったん
だけどねぇ、と、なぜか嬉しそうなフジマ。アレは見殺しか、とマキ王。だが、彼らの将帥アカギは、ちゃんと全体を
見通していた。
確実に前線を上げて。
「アカギがいると安心して見ていられるな」
「仰せのとおりにございます」
アカギは一軍を率いてふたりを救出に回っている。間もなくたどり着くだろう。この位置からでもルカワの苛立ちが手に
取るようだ。不意に、フジマが東の空を見上げた。マキ王は立ち上がる。ふたりの動きはルカワたちに目を奪われて、
ではない。
王とドルイド僧は、自軍の演習を通り越した彼方を見据えていた。
センドウは息を呑む。
ふたりの諦観に。
そして、混乱しきった陣形にアカギが統率を見せたそのとき――。
「現れたな」
マキ王の視線から一直線、なだらかな丘の稜線に沿ってこちらを睥睨している、おびただしい数の騎兵の姿が見て
取れた。
センドウと、王は己の騎士長に柔らかな声をかけた。
「サクセン・ベンウィック連合軍だ」
何度もその可能性を示唆されていた。フジマや当の王の言動から、センドウなりに推測し、到達して
いた事実だった。明確な時期ですら、昨日告げられた唐突な演習の達しで確信に変わった。それほど知りえていても、
センドウは足元からくる震えを抑えられなかったのだ。
マキ王が片手を挙げる。すぐに演習終了の合図がなされた。ルカワとミヤギは懸命に四面楚歌状態から逃れ、怒れるアカギ
の巨体に出くわした頃合で、この合図を知ることとなる。
負け逃げ――という言葉があるかどうか、どちらにせよ、彼にとっては不本意でも仕方がない。
「せっかくですから、このままかの国の使節をお出迎えという趣向はいかがでしょうか?」
ひんやりとフジマが言い放った。この男も土壇場では肝の据わるタイプだ。連合軍の総数すら把握しているであろう
この状況で、よく毒が吐ける。
「こんなに殺気だったままで対峙すれば、即、戦闘開始にもつれ込むだろうが。そのような無粋な真似、おまえの方が
耐えられないのではないのか?」
「アチラが有無も言わさずに我等に襲い掛かるという可能性もあります」
「ないな」
とマキ王は言い切った。
「気まま専横横紙破り。権高なくせに見栄っ張りのお大尽だ。条件の提示も駆け引きも宣戦布告もナシに、攻め込みは
しない」
「そうは申されましても、いきなり国境線を越えてきていますよ?」
「出会い頭のカウンター。先の先というヤツだな」
なるほど、と、ふたりの会話を聞いてセンドウは思った。では、この突然の演習の持つ意味は、その見栄っ張りに向こうを張ったカウンター
返しなんだと。サクセン・ベンウィック連合軍も、よもや進軍した先で、相手が全軍を展開しているとは思ってもみなかった
ろう。仕掛けられたフリをしてやり返す。先を読んでほくそ笑む。マキ王はこういった手がお好みだ。
だが逆に言えば、デミーティア全軍の実態を敵の目の前でさらけ出してもなお、そういった心理戦に出て
余裕を見せつけなければならないほど、相手の存在は強大だったということだ。
王の戦いは休まることを知らない。
「では、我が軍はあえて敵に後ろを見せて城へと退却いたしましょう」
そりゃいいとマキ王は闊達に笑う。
「おっつけ使者も到着するだろうよ。敵の総大将はだれだ?」
「ニーダーザクセン、サンノウ王の末子、サワキタ王子」
「……末子。まだガキじゃなかったか」
「ガキ、ですね。十六になったばかりのはずです」
「ふん。年食ってもうろくしたんじゃなければ、サンノウ王も相当いい根性をしている。まぁいい。上物には間違いない。
今宵は歓迎の宴だ。わが国の総力を挙げて盛大に催すつもりだったが、やめだ。
気が変わった。出来るだけ清楚で上品に行おう。量も内容も上品にな」
「御意のままに」
はったり気味のカウンター返しのあとは、開戦までの虚虚実実の駆け引きだ。無駄ダマなど撃ってなどいられないと
いったところだろう。
なだらかな丘陵が続くソールズベリ城近郊だから、王たちが認めた連合軍の姿を、当然のように兵士たちも気づいて
いた。ただ、目視可能な距離にまで出現した兵力が、よもや、最大にして最強の敵だとはだれも想像できなかったようで、
彼らが留まる位置からでは、旗指物の種類が特定できなかったのも幸いした。
なによりも、王が余りにも泰然と構えているものだから、友好国の軍隊だと勘違いしたものもいたくらいだ。実際に
サクセンの軍装を見たものはだれもいない。軍は取り乱すこともなく演習を終え、整列を見せた。王は散会の旨を伝える。
一糸乱れぬ動きで退却してゆくデミーティア軍の姿は、連中の目にどう映るのだろう。
引き上げてゆく一団の中に武具を脱ぎ捨てたルカワの姿を見つけ、センドウは彼の腕を取った。剣呑な目線が絡み合い、ルカワはそれを
音がするほど邪険に跳ね除ける。逃げた手首を握り込んで、間近に引き寄せた。とたんに向けられた射るような視線は、
気の毒なくらいに揺れている。
「小言はたくさんだ」
案じるほどにその声も小さかった。
「まだなにも言ってないんだけど」
「てめーの言いそうなことくらい、想像がつく」
「へぇ、よく理解してくれている」
「るせー。マキに謝りに行きゃ、いいんだろうが」
「そういう、簡単な問題でもないんだよ。尤もマキさんは怒ってないだろうしね。謝りにいくとしたら、アカギさんとこだ」
それよりもこっちへ来いと、厩舎へと向う道すがら、主導権を握って腕を引っ張った。両肩を押し土塀に背を押し付け、
ルカワ、あのなと甘くなり過ぎないような声をかけたそのとき、
「てめー、ルカワっ。さっきのはどうゆうつもりだっ」
罵声と共に赤頭の巨体がふたりの間に突っ込んできた。いや、正確にいえば、ルカワの肩を抑えたセンドウの手を取っ払い、
その中の閉じ込めていた少年を――まさに奪っていったのだ、サクラギが。
「あんだよっ」
「あんだよっじゃねーっ」
怒りのために真っ赤に茹で上がった顔で、口からはいまにも火を吹きそうな勢いでサクラギはルカワの襟首をねじり
あげた。
こちらも、いろんな意味で一発触発の状態だ。
continue
ほんとにお久し振りですっ。
こんな木島のことを待っていてくださったみなさん、ひと言お詫びを申し上げます。(土下座)
前回の更新日、6月12日!! ほかのお話ですら、9月18日。いや〜、なんとも月日の
流れるのは速いものです。 もうお話忘れちゃってるよぉ。というお声は尤もです。あたしも忘れて
ました。(はい)少し余裕が出て来て、ようやくお話がかける環境に落ち着いたかなという感じです。 このお話に
限っていえば、ゴールは間近いので、ちょっとペースを上げて、がんばってゆきますっ 事実上の休業中に、たくさんの
ぽちっと。ほんとに嬉しかったです。
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