なんとか、ドリルによる通し穴の拡張を終えて記念撮影に至る。ノギスで測定したところ、スポークの径は18.3〜5oの間で、19oでは多少遊びが生じてしまうようだ。穴の拡張にはかなりの精度が要求されるので、下穴が空いているとはいえ工作には緊張を強いられた。スポークは、自転車用のワイヤーカッターで簡単に切断出来た。硬度が段違いなので、いまのところチタンスポークでは試していないが。



完全にエレキ仕様なので生音は微々たる音量である。使用するコネクターは、HIROSE/HR-25(もしくはHR-10)の6ピン。1番:V+、2番:GND、3番:V-、4番:オーディオ信号、5/6番:予備という配線で、手持ちの他の楽器との共通仕様となっている。 板厚が結構あるので、コネクター取り付けは木部に直接ねじ込んでいる。ネジ山を作るのは「ス」の状態のマホガニーでは苦しいので、例によってアロンアルファを合浸したのち、コネクタ自体をねじ込んでいる。ありていにいえば、殆ど接着だが。



通常のM3のネジは頭がブレードに干渉するので、このタイプのネジを使用する。ただし、適合するレンチの径が細いので、トルクを掛けすぎるとすぐに六角穴を舐めてしまうことに注意。



総評: 今回の作品は外観に関してはまあまあの出来映えとなったが、音質は思ったより良好で気をよくしている。図面から想像していた通り、かなりメカニカルな外観となったが、音質は意外とプリミティヴな感じだ。完成を急ぐ余り、ブリッジ周りをシールドすること忘れてチューニングを行ってしまったので、仕切り直す。ブレードのチューンには0.5o単位の精度が要求され、ネジのトルクで微妙にピッチが変動する。これが予想外に手間が掛かる作業なので、あまり何度もやりたくないのがホンネである。カウンター・ブレードのチューンは本体側との関連があるのでまさに当たるも八卦なバクチとなる。それなりの完成度を求めるには実験とその結果をベースにした事前の設計が必要だ。通常の演奏では不要な共振を押さえるために、ゴムか紐で作ったミュート機構を追加した方が良いかも知れない。また、カウンター部分無しのヴァージョンのブレードも用意する必要があるだろう。

ブレードの配置は演奏形態によって自由に変更出来るが、パターンの決定には頭を絞る必要があるだろう。当初のもくろみでは演奏中にチューニングをチェンジすることを考えていたが、作業に要求される精度が高いので、これはちょっと無理っぽい感じだ。

現在実装しているのは、DTの14/15Gのステンレス製バッティド・スポーク。スポーク真ん中の部分が鍛造されてスリムになったタイプだ。ブレードが鍛造されているために径が細く、振動の持続が14Gのプレーン・スポークより良好なためチタンブレードの代わりに採用に踏み切った。チタンはチタンで味のある音がするので、そのうち左右バンクに同じチューニングを行って弾き比べをしてみよう。

やはり、この楽器は日光の下がよく似合う。コラと共にオープンエアでのコンサートに使用してみたいところだ。

これは、チタンブレードを実装したヴァージョン。今回はカウンター部はナシとした。ブレード用の横穴の精度の問題(自分で拡張したため)があるので、ブレードは若干太い14Gの方がチューニングが安定してしっくりと来るようだ。音質的な差異は殆ど感じられないが、高音部のピッチ感が若干異なるようにも思えた。カットは自転車用のワイヤーカッターで問題なく行えた。躊躇せず、思いっきりバチンとやる方が切断面が綺麗になるようだ。チューニングはとりあえず、低音部がCdur、高音部がGdurのコンビネーションとしているが、これも研究の余地ありだろう。
左が、専用電源で±12〜15Vを供給する。電流容量が小さいので、消費電力が多いアコギ及びスイッチャーの接続はかなり苦しいが、ムビラスキー1台程度では全く問題はない。電池仕様もしくは、NiCad電池の充電システムを筐体内部に設置することが可能なので、今後は電源周りのオプションを充実していっても面白いだろう。

アフリカ産の原木で作る第二ヴァージョンを現在計画中。来月中頃には製作を開始する予定だ。

つづく