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二科制作 — 月の舟

第99回二科展:9月3日~15日(六本木 国立新美術館)

http://www.nikaten.com/nikaten99_index.html

二科作品名「月の船」
「月の船」部分
Kanon ― 月の舟    h35×191×45cm 石膏

 

制作中の橋本和明 #

今年の夏の猛烈な暑さと、異常とも言えるゲリラ豪雨は、地球の気候環境が新たなステージに入ったのではないかとさえ思わせる。しかし、同時にこの事は、我々現代人の生活スタイルそのものが引き起こした結果とも言えると私は考えている。





余分なモノは持たない。必要なモノだけを大切に使う・・・。そして、季節のモノを有難くいただく。四半世紀以上

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続けて来た生活における、このような思考と実践の積み重ねは、当然、制作への思考と方向性にも生きてくる。
Kanonと名付けた、ここ10数年の作品に共通する「余分なものを削ぎ落とし人間存在の本質へと迫りたい」という造形思考も、基はここにある。

数年前から、横たわる形を小作品で試していた。
そして、今年の夏の制作を等身大の横臥するヒトの形を制作しようと決めた。
私にはめずらしく、タイトルも「月の舟」と初めから決めた。
静かに横たわる人体のカタチにはゆらめきの様な僅かな動きをひそませる。
月の舟が置かれた空間は、それにより寂静たる空間に変容する。

昨年、夏の制作の終わりに「光のようなものを求めている」と書いた。
彫刻という、量も実体もある表現へ向かう行為とは矛盾する思考である。
かたちなき光のようなものを求める時、生命存在に対する祈りを込めている事に気づく。同時に、彫刻を通してヒトとはなにかを自らに問うている。

ヒトの身体は、この世に存在する時間を生きるための魂の器だとすれば、月の舟と名付けた今回の作品は、こちらとあちらをたゆとう、死と生をつなぐ舟である。


KANAZAWA 2014.2.15.

金沢美術工芸大学卒業・終了制作展ポスター

金沢美術工芸大学 修了制作展(金沢21世紀美術館)を鑑賞した。
息子(橋本知成・大学院 工芸:陶磁専攻)の修了制作『源生』は、有機的な線を基本に、曲線と曲面が織り成す陶立体。

手捻りの技法を使った造形だ。
土を少しずつ積層しながら造形してゆく、その行為の時間をも積層しながら、自身の心の軌跡が形となって現れるのだろう。
決して「削らない事」が、この制作の約束事という。

曲線と曲面・凹面と凸面・虚と実の形を連続させながら、上方に伸びてゆく様は、まるで意志をもった生物のようでもあり、原初的なエネルギーを孕んだ存在感を感じさせる。

陶造形は、必然的に中空の構造を持つ。中空の緊張感が外のフォルムの張りを支えるという事を、作者は今一度意識してほしいと思って観た。
同時に、この存在感のあるフォルムが森の如く林立する様を一度見てみたいとも思った。

京都教育大から金沢美大大学院へと進み、金沢での二年間の集大成としてのこの制作が、とりもなおさず、作者にとっては新たな始まりでもある。北陸の厳しき冬は思索の時を与えてくれる。今後、作者は何を考えどう形にしてゆくのか・・・期待がふくらむ。亦、この地の人々の愛情のこもった、より厳しき眼で観られる事により鍛えあげられ、たくましく成長してほしいと願っている。

作品01 作品02
作品03 作品04
作品群05

*金沢美術工芸大学卒業・修了制作展は金沢21世紀美術館にて
  修了制作展は18日で終了、
  第57回美術工芸学部卒業制作展は2月21日〜3月1日


2014年が静かに始まりました

日の出の写真

昨年末は、大阪〜京都での干支展と、毎年の干支のお送りに忙しくしておりました。
2013年は、春の「古民家山崎邸と9つの表現」に始まり、北陸・金沢での「平面展」、東京で「いぬいの会彫刻展」。5月には神戸・原田の森ギャラリーで「昨日と明日の対話展」への出品。9月の第98回二科展(東京・国立新美術館)と橋本和明彫刻展(大阪・高島屋ギャラリーNEXT)。そして、11月には「和歌山県文化表彰50周年記念展」(和歌山県立近代美術館)への出品と・・・。振り返ると結構バタバタ動いていました。
各展覧会にお出かけご高覧いただきました皆様に、改めて、御礼申し上げます。

制作中の橋本和明写真

さて、2014年の展覧会は、3月29日〜4月6日・大阪は岬町の ギャラリー猫亀屋で個展から始まります。
只今、展覧会に向けて 極寒のアトリエで制作中。
ギャラリー猫亀屋は、南海沿線・岬町にある海沿いのとても小さな小箱のような空間です。
ここでの展覧会は、2011年以来です。
あの、3.11.の時がまさにその準備中で、制作の手が止まってしまった思い出の展覧会がここ猫亀屋でありました。
今回の展覧会も、あの記憶とともにある「Kanon」です。
どのような展覧になるか、お楽しみに。

制作と展覧会への出品はもちろんのこと、保育園での授業や短期大学での講義を通して、はたまた、ワークショップの機会などでも、美術家・彫刻家として芸術表現の面白さ、大切さを伝えて行こうと思っています。

このホームページとFacebookも、お楽しみいただければ幸いです。
何はともあれ、今年もよろしくお願い申し上げます。



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