細漢仔
僕の兄弟細漢仔は十八歳の年
満腔の熱血と母さんの祈りを胸に台北にやって来た
都会の隅っこ悪臭漂う新店渓のそばに住み
初めての仕事は真っ黒いジャガーの運転手
乗っているのは金持ちの旦那様 旦那様の開くホテルでは
立法委員に当選し毎日飲んだり食ったり 豪勢極まりない
世界は毎日移り変わり 訳の分からんことを言う奴もいる
こんな物語きっと君も耳にしたはず
なぜ知識人の話は毎日あいも変わらず
左傾してたり右傾してたり 心に充ちる理想郷だとか
手にした利益は放そうとせず くそったれのたわごとばかり
細漢仔には分からない 人がみな考えさせまいとする
考えるとロクなことはないんだと
考えすぎた人はそのために暗い牢の中
単純な心には疑いばかり悲しくてたまらない
理解する必要がないこともある 得になることは拒絶せず
偉大な国民になる心の準備をするんだ
大物も小物もごろつきは 人を驚かす鉄条網を組んで
真夜中の大通りで追いつ追われつ
専門家によればこれは権力の病態だとか
彼の言葉にかかずらって君は何をする
世界で一番金を持っている乞食が
金銀をまとい空っぽの頭を揺すっている
真理は強者の側にあり 誰もが血眼で
If you wanna rich, you got to be a bitch
兄弟がっかりするな 不満なら故郷で百姓をしよう
稲は一斤いくらでも売れないけれど
*Confucius は僕と共に成長することには無関心で
愛して愛される方式を選ぶこともできない
Confucius がどうも僕に気づかせたようだ
社会は元々黒白をつけられないのが常態なのだと
母さんが息子に言う 早くお帰り
嫁は気丈だけれど陰で泣きながら待っている
社会の暗黒を まさか知らないわけじゃないだろう
宝の山を前にして帰れるものか
男児の立てた志頑張るしかない
ご先祖様も悪人とも善人とも付き合った
ハジキを手にして忘れてしまう自分という存在
母さんの話は頭から放り出し
黒眼鏡で運転するのはアルファロメオ
アニキには絶対服従
凶悪で鳴らす 彼はあの道ではちょっとした英雄さ
故郷を想えば辛くなることもあるけれど
社会に足を踏み入れれば 後悔の余地はない
少なくとも男子としての尊厳はまだ失ってはいない
(REPEAT*)
ついにある日故郷に報せが届く
あんたの息子が大変だという
老板の地盤争奪に命を投げ出し
早く連れ出さないと生きては冬を越せないと
母さんは嫁を伴い泣きの涙で大都会へ
尋ね当てたホテルの老板は逃げ回り
選挙運動で大忙しの真っ最中 使いが伝える
泣きたいほど腹が減ったがあんたの亭主は見つからない
寒々とした風のない夜
新店渓の水面に音もなく人影が漂っている
細漢仔は今度こそとうとう本当に一言も話せなくなってしまった
Vivien's note :
このアルバムの中では、この曲が一番好き。といっても、実はこのアルバムのために書かれた曲ではなく、この十年程前に出た「新樂園」というコンピレーション・アルバムに収録された曲。過激な歌詞のために放送禁止か発売禁止か(どっちだっけ?)になったという曲。しかしその後、社会の状況は良くなるどころか、ますます昏迷の度を深め、ここに表現されている怒りや悲しみは少しも古びてはいないという気がします。
台湾語の部分、及びいくつかの単語の解釈について、台湾朋友、蛋蛋に協力してもらいました。謝謝!
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