鴉片Mei瑰(1998.6)

生命的滋味

昨日はどこに隠れてたんだい 尋ねようとしてもその隙もない
僕のような友達 君は思わないか満更でもないと
僕は明日に尋ねに行きたい 誰にでも同じように対するのかと
大した違いはないんだろうと
僕は笑うだろう 僕は泣くだろう
なぜなら僕には分かってるから
誰も思いのままに今日という日に留まることはできないと
僕は笑おう 僕は泣こう
そうして生命の滋味を豊かにすることが必要だから
La La La ....

蝶には春の日が必要なように 同じように僕も誰かの想いのなかに
いつもゆっくりと ゆっくりと姿を現すことを思ってみる
もうはっきり恋だとは言えないけれど 不思議なことに夜が明けると
今でも頬の辺りになぜか涙の味がする
だから僕は笑う だから僕は泣く
なぜなら僕には分かっているから
夢の中で彼女がまた僕のそばにやって来たみたいだと
僕は笑うだろう 僕は泣くだろう
そうして生命の滋味が満たされたから
La La La ....

そうだ僕は忘れていた 生命の中には必ず慈しむ心があるということを
なぜなら手に入れるということは それを失う悲しみを拒否することなのだから
夜になると決まってゆっくりと 悲しみが浮かび上がって来ないように
今日の僕はもう簡単に君を行かせたりはするものか

僕は笑うだろう 僕は泣くだろう
なぜなら僕には分かっているから
誰も思いのままに今日という日に留まることはできないと
僕は笑おう 僕は泣こう
君が生命の滋味を豊かにしてくれることが必要だから
La La La ....

だから僕は笑う だから僕は泣く
なぜなら僕には分かっているから
夢の中で彼女がまた僕のそばにやって来たみたいだと
僕は笑うだろう 僕は泣くだろう
なぜなら君が生命の滋味を満たしてくれたから
La La La ....

Vivien's note :
陳昇がここで言っているのは、アーティストとファンの関係だと思います。つまり、ファンは、アーティストの創作したものを享受するだけでなく、彼を励ますことも出来る。私のお手紙も役に立ったのかな、陳昇を喜ばせることがあったのかなと、初めてこの歌を聴いた時、しばし幸福感のようなものを感じました。

それにしても四十歳の男が「頬に涙の味がする」だなんて、陳昇って「永遠の少年」ですよね。この部分、原詞では「有點鹹 : 少し塩辛い」、Vivien の訳は少し甘すぎるかも。



細漢仔

僕の兄弟細漢仔は十八歳の年
満腔の熱血と母さんの祈りを胸に台北にやって来た
都会の隅っこ悪臭漂う新店渓のそばに住み
初めての仕事は真っ黒いジャガーの運転手

乗っているのは金持ちの旦那様 旦那様の開くホテルでは
立法委員に当選し毎日飲んだり食ったり 豪勢極まりない
世界は毎日移り変わり 訳の分からんことを言う奴もいる
こんな物語きっと君も耳にしたはず

なぜ知識人の話は毎日あいも変わらず
左傾してたり右傾してたり 心に充ちる理想郷だとか
手にした利益は放そうとせず くそったれのたわごとばかり

細漢仔には分からない 人がみな考えさせまいとする
考えるとロクなことはないんだと
考えすぎた人はそのために暗い牢の中
単純な心には疑いばかり悲しくてたまらない
理解する必要がないこともある 得になることは拒絶せず
偉大な国民になる心の準備をするんだ

大物も小物もごろつきは 人を驚かす鉄条網を組んで
真夜中の大通りで追いつ追われつ
専門家によればこれは権力の病態だとか
彼の言葉にかかずらって君は何をする

世界で一番金を持っている乞食が
金銀をまとい空っぽの頭を揺すっている
真理は強者の側にあり 誰もが血眼で
If you wanna rich, you got to be a bitch
兄弟がっかりするな 不満なら故郷で百姓をしよう
稲は一斤いくらでも売れないけれど

*Confucius は僕と共に成長することには無関心で
  愛して愛される方式を選ぶこともできない
  Confucius がどうも僕に気づかせたようだ
  社会は元々黒白をつけられないのが常態なのだと

母さんが息子に言う 早くお帰り
嫁は気丈だけれど陰で泣きながら待っている
社会の暗黒を まさか知らないわけじゃないだろう

宝の山を前にして帰れるものか
男児の立てた志頑張るしかない
ご先祖様も悪人とも善人とも付き合った
ハジキを手にして忘れてしまう自分という存在
母さんの話は頭から放り出し
黒眼鏡で運転するのはアルファロメオ

アニキには絶対服従
凶悪で鳴らす 彼はあの道ではちょっとした英雄さ
故郷を想えば辛くなることもあるけれど
社会に足を踏み入れれば 後悔の余地はない
少なくとも男子としての尊厳はまだ失ってはいない

(REPEAT*)

ついにある日故郷に報せが届く
あんたの息子が大変だという
老板の地盤争奪に命を投げ出し
早く連れ出さないと生きては冬を越せないと

母さんは嫁を伴い泣きの涙で大都会へ
尋ね当てたホテルの老板は逃げ回り
選挙運動で大忙しの真っ最中 使いが伝える
泣きたいほど腹が減ったがあんたの亭主は見つからない

寒々とした風のない夜
新店渓の水面に音もなく人影が漂っている
細漢仔は今度こそとうとう本当に一言も話せなくなってしまった

Vivien's note :
このアルバムの中では、この曲が一番好き。といっても、実はこのアルバムのために書かれた曲ではなく、この十年程前に出た「新樂園」というコンピレーション・アルバムに収録された曲。過激な歌詞のために放送禁止か発売禁止か(どっちだっけ?)になったという曲。しかしその後、社会の状況は良くなるどころか、ますます昏迷の度を深め、ここに表現されている怒りや悲しみは少しも古びてはいないという気がします。

台湾語の部分、及びいくつかの単語の解釈について、台湾朋友、蛋蛋に協力してもらいました。謝謝!



流星小夜曲

靴を脱いで温かい夜風の中を駆け回る
まるで子供のようだ
君の生活は空っぽだってまだ思ってるの
流星を見たこともなかったんだね
昨日の君は人波溢れる街の中
どこから来てどこへ行くのかも忘れていた
明日の君はまた気違いじみた日を待ち受け
寂しさなんて無くなればいいと願う

人は互いに余りにも我儘なようだ
誰かに愛されることだけを渇望している
だから僕達も忘れ去ってしまったのだろうか
どのように自分を差し出すのか どのように愛するのか
なぜ愛するのかを

流星 流星 どこから流れて来たの
君と僕が出会ったのは暗い夜の海
流星 流星 どこまで流れて行くの

流星を追って駆け回るのにも疲れたら
僕のそばに寄り添って
僕の流星 今夜しっかりとこの手に掴まえた
もう二度と離しはしない
楽しみたければ楽しめばいい
生命には黒い雲がつきものだから
僕の胸の中でそっと泣くんだ
声をあげて泣きたければ泣けばいい
幸福は美しいけれど儚いものだ
君は知っているかい

君と一緒に温かい夜風の中を駆け回る
まるで子供のようだ
君は思っているだろう
失望することさえ疲れてしまったと
僕は君から離れないよ
今までもこれからも

Vivien's note :
「細漢仔」のあとに続くせいか、この曲はとても温かく聞こえます。あまりに温かいから、涙が流れました。陳昇の胸って広くて温かそう、心はとても大きくて温かそう。どうも支離滅裂ですが、お許しくだされ。この詞にメロメロの Vivien 。でも、この詞のインスピレーションが浮かんだのは、緑島の浜辺を皮皮と駆け回っていた時じゃないかしら?(小説のコーナーを参照してください → 「皮皮的下午」



淺藍大肥猫

KiKiはブルーの肥った猫
闇夜に軽々と屋根の上を駆け回る
周囲一里の色恋沙汰は全てご存知
KiKiは猫族でも階級が高いと一目瞭然
老同樂のフカヒレは煮すぎて固く
川菜館のお嬢ちゃんは夜になると騒ぎ出す
八品マンション七階に住むペルシャ猫
秋に生んだ子猫のオヤジはこの俺さ
Miao Miao Miao Miao
犬が糞を食う癖は直らない 猫の盗みも傍若無人
こんなでたらめな都会に生きるんだ
規則なんていらないよ
たらふく食らい ぐっすり眠り
母さん猫を想い 春の夢を見るだけさ

JJはあの富貴なお方の末っ子だ
金の亡者のこのうすのろは民意の代表者
ゴシップ雑誌の娘さんを全部欲しがる
JJは人類でも格調が低いと一目瞭然
振り捨てられない女も満更じゃないぞ
金で片がつくなら一大事ってわけじゃない
缶詰の鮑はまるでプラスチック
この世にはもっと私をワクワクさせることはないのか
Miao Miao Miao Miao
犬が糞を食う癖は直らない 猫の盗みも傍若無人
こんなでたらめな時代に生きるんだ
人格なんていらないよ
ご馳走食らい 老いぼれるまで遊び
母さん猫を想い 早く死ぬだけさ

酒色金運課程は学校では教えないぞ
拳骨で片がつくなら一大事ってわけじゃない
行き詰まった庶民の悲しい叫び
そんなもの私には聞こえないね
この世界を踏みにじっているのは
絶対に私であるものか
Miao Miao Miao Miao
犬が糞を食う癖は直らない 猫の盗みも傍若無人
こんなでたらめな都会に生きるんだ
規則なんていらないよ
たらふく食らい ぐっすり眠り
母さん猫を想い 春の夢を見るだけさ

Vivien's note :
辛辣だけれど、温かくないこともない。そこがとても陳昇らしいと思います。JJ は国民党の某某先生がモデルだという噂ですが、Vivien は政治には興味がないので、ただ、日本も台湾も同じなんだなと思うだけです。ところで「ブルーの肥った猫」ってドラえもん!?

この曲も、いくつかの単語の解釈について、蛋蛋に協力してもらいました。



影子

僕が君ならよかったのに 君は僕に気づいただろう
永遠に拭い去れない影のように 昼も夜も僕は君のそばにいる
影には自分がない 愛や欲や恨みに満ちた心もない
ただ君の喜びや悲しみに付き合うことができるだけ
考えがないから君に背くこともできない
僕は黒色 君がいつも忘れていることを責めたりはしない
ただ黒い影だけがひとりぼっちの君に寄り添っている
恨みを抱いたこともなく 疑いを抱いたこともなく
ただ街燈の下に立ち君の言葉を聞くことができるだけ
君はまた彼が憎いと言い 顔を覆って夜のなかを駆け回る
こんな透明な僕 どうしたら君を捕まえられるのだろう
君の足跡を辿っている 黒を一塗りした憂鬱のように
君の一生に付き従う伴侶
君に話がしたい だけど僕は言葉が話せない
透明な人 暗闇のなかでは離れて行くしかない
君の息づかいを聞き 頬に濡れている涙の滴を見ても
分からない 立ち去るべきか それとも優しく抱きしめようか

君はまた彼が憎いと言い 顔を覆って夜のなかを駆け回る
こんな透明な僕 どうしたら君を捕まえられるのだろう
君の足跡を辿っている 黒を一塗りした憂鬱のように
僕は君の一生に付き従う伴侶
君に話がしたい だけど僕は言葉が話せない
僕は君の傷ついた黒い伴侶
恨みを抱いたこともなく 疑いを抱いたこともなく
ただベッドの縁に座って辛抱強く君と共に泣くことができるだけ
La  La  La ・・・・・・・・・・

Vivien's note :
この詞はとてもセクシーですよね。「肉体的な報いを求めない愛」というのが、かえってとても官能的に感じられます。当時、陳昇の新しい一面を見たという気がしました。



 

橘子鼓

Rodney boy 僕のためにドラムを叩いてくれ
煩わしい悩みがないから 傷心の人が聴いても泣くこともない
君のドラムはオレンジで出来ていて 聴くと辛さを忘れるんだって
こんな退屈な夜 死ぬほど孤独でもきっと来る人はいないはずさ
Johnny boy 君のために踊ってあげよう
人を悩ませたりしない君と僕だから 寂しい人が聴いても泣きはしない
僕は音楽の虜 もう逃げる場所もないんだ
悲しい昔の出来事 それももうそれほど重要ではなくなった
僕は我慢したくはない 歓楽の街でゆっくりと死んで行くなんて
しかし幼い時の夢は 今でもそれほど重要なのだろうか
一日また一日 孤独の短調
Why don't you stay away from me?

Eric boy play a song for me
Stay away from the alcohol 明日が来なくても泣いてはだめだ
誰にも分かるはずがない どこに逃げればいいのかなんて
唐朝に逃げおおせたら また隋朝まで僕は君に付き合うよ
Please shut the door, don't let the sun shining
仔細に試してる暇なんてない 門の外に締め出した明日もすぐに色褪せる
They say work hard, play hardly
余計なお世話だ But don't dying young
僕は我慢したくはない 歓楽の街でゆっくりと死んで行くなんて
しかしかつて僕が愛した人たち 君たちみんな今も元気だろうか
こんな寂しい夜 何も欲しくはない
ただ孤独の短調が欲しいだけ

*急に来ては すぐに去って行く こんな蒼白な人生
  僕はぬかるみの中で足掻き So lonely I could cry
  急に来ては すぐに去って行く こんな盲目的な人生
  Oh I want it, Oh I want it 孤独の短調

Come on Rodney 僕のためにドラムを叩いてくれ
煩わしい悩みがないから 傷心の人が聴いても泣くこともない
君のドラムはオレンジで出来てるんだって 聴くと孤独を忘れるね
こんな憂鬱な夜 君も絶対に眠らないでくれよ
僕は我慢したくはない 歓楽の街でゆっくりと死んで行くなんて
しかし僕がかつて愛した人たち 君たちみんな今も元気だろうか
一日また一日 何も欲しくはない
ただ孤独の短調があればいい
(REPEAT*)

Vivien's note :
この詞にはとても共感します。Vivien がこの世界に対して感じていることが、そのまま詞になっています。「仔細に試してる暇なんてない 門の外に締め出した明日もすぐに色褪せる」。この世界にあるものの大半は無くてもよいもの。「一日また一日 何も欲しくはない ただ陳昇の歌が(それから見る価値のある映画が少し)あればいい」。



"A" train 到天堂

If I die in seven avenue  I shall take “A”train to heaven
Meet some friends in Harlem bridge And sleeping well in the wood
Don't you cry 俺がもう帰らなくても 俺は天国には行き着けないと思う
俺のような普通の人間 夜の列車内尋ねてくれる人もない
駅に着くときらめく光 朦朧とした意識に遠巻きに見る人が来ては去る
力なく笑った顔をあげると 夜風の中に故郷の訛りが聞こえる
Hey ・・・・・・・・・・ I got to lay down, I got to lay down
Hey ・・・・・・・・・・ I got to lay down, I got to lay down
On the floor
もう俺は狂ってると思ってた 生命の中を来ては去って行った人々
自分が来た道を見渡してみても 遠すぎて君の姿はもう見えない
Hey ・・・・・・・・・・ I got to lay down, I got to lay down
Hey ・・・・・・・・・・ I got to lay down, I got to lay down
On the floor

世紀末の夜に “A”trainの終点で起こった出来事
その物語も夜が明ければすぐに忘れ去られてしまう
もし君が通りかかっても ひどく悲しむ必要もない
君も大人になれば もつと冷淡になれるのだから
Hey ・・・・・・・・・・ I got to lay down, I got to lay down
Hey ・・・・・・・・・・ I got to lay down, I got to lay down

Vivien's note :
「六月」に収められた「老嬉皮」と曲調が似ているので、新味はないのですが、この詞に漂う寂寥感が心に染みます。ここには、大人になっても冷淡になり切れない陳昇の姿があるから・・・・・。



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