トワイライト とひそひそ声でアデイルがフィリエルに話しかけた。 「えっ・・・何を?」 フィリエルは何故か悪いことが見つかったような面もちでどぎまぎしている。 アデイルはその様子を見て、くすっと笑みをこぼした。 「いやですわ。室内ならともかく、屋外なんて。でも、なんだかロマンチック・・・」 「み・・・見てたの?!」 「外をのぞいたら、あなた達2人がいたのですものv」 とアデイルは嬉しげで、いいものを見せて貰ったとばかりにうきうきした声でフィリエルを質問責めにする。 「あの後、部屋でどうなさったのかしら?」 「ち、違うの!私は・・・」 とフィリエルが慌てて否定したとき、 「フィリエル・ディー!まーた貴方ですかっ?!お喋りばかりして・・・これでは女王候補の名が泣きますわよ!」 とセルマの厳しい声が部屋に響きわたった。 「いやになっちゃう。あの後、しっかり1時間は絞られちゃったんだから」 「ごめんなさい、私が尋ねたのに」 「いいの。いつものことだし・・・」 「今度は、私も一緒に叱られますわ」 「いやあね」 くすくすと他愛のない会話をしながら2人の女王候補の少女達は昼間の自由時間を過ごしてゆく。 「ルーン!」 フィリエルは廊下の端に立つ少年の姿を見つけた。いつもの騎士の格好のはずなのに、ルーン用にあつらえた濃紺、詰め襟の服が変にしっくりきていた。 相変わらずの不機嫌そうな表情だけはいつもと変わらず、むすっとした表情からは、フィリエルが新しいドレスだから機嫌がよくないことが原因だとわかる。 「あら、ご機嫌よう。貴方の噂はもう広まってますのよ。黒髪の騎士ルーンと」 「でも、僕はフィリエルだけの騎士なので」 とアデイルにまでつっかかる。 「もうっ、ルーンたら」 「いいの。彼が貴族を嫌うことは前からの事ですわ。でも、私はそういうのには慣れてましてよ。だからフィリエルはおきになさらず」 アデイルがにこやかにルーンに言葉を返す。 「でもっ・・・」 フィリエルは気にくわないというように、ルーンをちらと見た。 「いいんだよ。フィリエル」 「ルーンっっ!!!!」 が大声でルーンをいつものように制した時だった。 「んまぁっ。フィリエル・ディー!貴方という人は!」 とちょうど具合良くセルマが通ってしまったのだった。 「本日2回目ですわ・・・」 「フィリエルはいつもそんなに怒られているのかい?」 「そうですわね。大抵・・・いえ、ほぼ・・・」 アデイルがセルマに止めに入ったが、結局フィリエルはずるずると説教室まで連れられてしまったのだった。 「でも、彼女はあれでいいんだと思います」 「・・・」 「私は彼女のああいうところが好きですわ。貴方は?」 「何で僕に・・・」 ルーンが慌ててそっぽを向くと、アデイルは更に発破をかけるかのように尋ねた。 「フィリエルのことがお好きなのでしょう?」 アデイルは楽しげにルーンに聞いた。 「フィリエルにはライバルが多いですからうかうかしていると、どなたかにとられてしまいますわよ。そうですわね・・・特にあたくし。なんて」 「フィリエルはっっ・・・僕のものだ」 「大丈夫ですわよ?貴方の独占欲にはいくらあたくしでも負けてしまいますわ」 ルーンは、やっとアデイルに発破をかけられているとわかったのだった。 後日・・・ 「ええっ?!ルーンがそんなこと・・・」 「フィリエル、羨ましいですわ〜」 「どうしてっ」 「相思相愛!これこそ私が小説で追い求める一つのテーマですもの!」 とアデイルは意気込んでフィリエルの手をとった。 「そ・・・そうなの?」 「ええ。でも、2人はすれ違ってしまう・・・これを重ねて2人は成長していくのです・・・また、いいものが書けそうな勢いですわ。早速今日からでも取りかかりましょう」 とアデイルはとても楽しげだった。 フィリエルが部屋に戻った後、ベットにぱたりと横になった。一日中怒られていてばかりだ。これでは、何のためにここにきているのかわからない。まったくもって苦労のたえない毎日である。 フィリエルは、夜着に着替え蝋燭の火を消した。 「ルーンどうしているかしら」 今日は昼に会って以来会わなかった。騎士になってからルーンには滅多に会えない。女子の部屋に男性が入るのはメイドを通さなければいけないので非常に面倒だった。セルマにでもみつかればとんでもないことになってしまう。ルーンをそれだけには巻き込みたくなかった。 ルーンはきっと怒られても何てことないかもしれないが、周りの世間体が悪くなる。ルーンに嫌な思いだけはけしてさせてはならないと誓っていたから。 「静か・・・ルーンは寝てしまったのかしら」 「まだ起きてるよ」 「そう・・・」 「????」 「しっ!静かに」 「どこ?!ルーン」 フィリエルは慌てて火を灯そうとした。慌てすぎて近くの椅子にきづかず、こけてしまいそうになった瞬間、力強い腕の感触を感じた。 ぐっと、フィリエルの上体を起こして、そして、こういった 「お姫様はおしとやかにしていなきゃいけないだろう」 「・・・ルーン・・・」 「ばか」 「馬鹿は君だよ。宮殿内ではおしとやかにするって言っていたじゃないか」 フィリエルは抱え起こされ、なんだか気恥ずかしかった。 「ってそんなこと言いに来たんじゃなかった・・・。重大なことを言いに来たんだ」 「なぁに?」 ちょうどその時、月が雲から顔をだし、窓から仄かな光がさしこんできた。 フィリエルのまだ幼さが残った顔がまず一番にルーンの目に入った。 「・・・」 「ルーン?」首を傾げ、フィリエルはルーンが何も言わないので不思議に思って袖を引っ張って、もう一度名を呼んだ。 「ルーン?どうしたの・・・?」 「・・・何でもない・・・」 ルーンはふいとフィリエルから顔を逸らした。耳が赤くなっているのにフィリエルはなにも感じなかった。 「言いたいことは?」 「それは、きっと明日コンスタンス女王が君たちに伝える・・・と思う。僕は帰るよ」 「えっ?」 「じゃ。」 そう言って彼は部屋から出ていった。
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第2回目、如何でしたでしょうか?感想等宜しくお願いします。ちゃんとUPできて いなかったようで読めなかったようです。すみません・・・ 04/07/20 |