「病は気から」というテーマ、ある意味では面白いでしょう?何でこんな事を言い出
したかというと、病院の外科という所に勤めていると、来る日も来る日も癌の患者さ
んに接することになります。そうすると、その中には癌の末期でもうやる事がない、
いわゆる終末期医療という場に立会うことがあるのですね。そんな時に癌末期の患
者さんに何と言って慰めたらよいか、言葉を失うことが多々あるのです。そこで、少し
、発想の転換をして、患者さんの立場に立った考え方から、たとえどんな進行した癌
であっても、最期の最期まで望みは繋げないかと調べてきた結果のお話なのです。

宗教の話ではないのです。医学者が学問として癌の自然治癒を調べているのです。草
分けはアメリカの外科医Everson とColeによるものです。1900年以降に確かに癌と診
断されたもので自然に治癒した症例(病理組織診断で癌を確かめたもの)が世界
に176例あるそうです(1966)。日本では阪大の外科が外科学会の宿題報告で日本の
自然治癒例を出しています。更にこの方面では日本はパイオニア的研究がされていま
す。それは九州大学心療内科の中川俊三と池見酉次郎の研究です。癌が自然退縮した例はこの当時は45例あったそうです。その12例についてわざわざ訪問し、本人から聞
き取り調査をして、詳しく紹介していますが、この中の11名については「実存的転換」という心境の変化があったと述べています。要するに、癌であることを自覚したのを機に、一大転換が起こり、癌や死に対する不安、恐怖を克服するとともに、新しい対象の発見や、満足感、生きがいの再発見をして、残された生涯の一日一日をより有意義に過ごそうと生活を是正していったということです。
こういう心境の変化が癌を治癒に導いたと彼等は述べているのです。

アメリカの精神科医のゴータード・ブースはこのような癌の自然退縮は『偶然に』起こるのではなく、癌患者が新たに生きるための目的となりうるための対象を見つけて、生きる状況や環境を改善したことに対する反応であると言っています。

ここらあたりから出発して、心病む癌末期の患者さんに少しでも安らぎを得てほしい
と話を繋いでいっているのです。実は医者の方もこういう境地に立たなければ、心安
らかに患者さんと接することができないのですよね。癌末期は例外なく修羅場ですか
らね。
そこで、そんな話の証拠がほしいのですね。広い意味では宗教の世界の話は参考にな
るのですが、でも、どうしても少しうさん臭さが残って多くの人を納得させる事ができない
ように思われるので、宗教の目が入っていない普通の人の話が欲しいのです。そんな
話があったら、是非教えてください。多くの癌患者さんを救いたいと思いますので。


病は気から 癌も気から治る?