感染症にかからないために

今、医療の現場ではバイキン(病原菌)の侵入を防ぐ方法に革命が起こっています。何を寝ぼけたことをとあなたは思っていらっしゃるのでしょうか?バイキンに感染しないようにするには、バイキンがいるかいないか徹底的に調べて、病人を無菌に近い状態で隔離することだと単純に考えているのではありませんか?
とすれば、あなたの頭はかなり切りかえてもらわなければなりません。

まず、バイキンがいるかどうか調べる段階ですが、症状がない所謂潜伏期に入っているバイキンを含めますと、今、数多くの感染症が世の中に同定されています。そのすべてを調べるということになれば、ものすごい費用がかかるのと、あまりの数の多さに調べるということ事態が不可能でしょう。さらに、エイズなどは本人の許可がなければ勝手に検査することが法律的に禁止されています。

そこで、昔はこの患者さんは梅毒にかかっているから、この患者さんはB型肝炎の抗体が陽性だから、傷口に触る時は素手で触らないようにしましょう。この患者さんに使った手術着や手術のカバーは使い捨てにしましょうと、患者さんの病気によって感染予防対策を行なったのですが、今はすべての患者さんの体液に対して,何らかの感染症があるはずだと仮定して、感染の予防策を講じることになりました。とすると、いろんなバイキンの検査は必要ないということになりますね。発想の転換ですね。

以上をまとめますと、患者さんのバイキンは手あたり次第検査しない。その代わり、どの患者さんも何かバイキンを持っている可能性があると考えて処置をするということです。これを標準予防策といいます。

更に、感染経路別の感染対策というのがあります。これは非常に単純に考えられて、空気感染、飛沫感染、接触感染の3つしかありません。どれも、熱が出たり、咳をしたりの症状がある場合です。当然のことながら、これはバイキンが何か調べて治療していかなければなりませんね。標準予防策ではバイキンが何であるか調べませんでしたが、今度は治療に結びつきますので患者さんにメリットがありますので調べます。そしてそのバイキンによって、上の三つの感染経路にあてはめて他の患者さんにうつさないように対策を練るのです。勿論、症状に対応して治療も並行して行なうのです。

この中で空気感染に相当するのは、結核、麻疹、水痘の3つだけです。いいですか?3つだけですよ。このバイキンは空気中に漂って感染しますので、特別の部屋に隔離する必要があります。また、このバイキンは普通のマスクを通過しますので、特別に目の細かいマスクが必要です。

飛沫感染はインフルエンザ、ジフテリア、マイコプラズマ、百日咳、おたふく風邪、風疹  など数多くの咳が出る病気です。インフルエンザウイルスなんかも、バイキンだけでは空気中に漂いません。咳の水滴の中に存在しますから、患者さんから1m以内に立ち入る時だけが要注意です。これは粒子が大きいので普通のマスクで十分です。

そして、接触性感染ですが、これは前述の標準予防策に良く似ています。体液に触る時は手袋などの予防策をする。そしてこれを他の患者さんに運ばないという事が基本です。更に基本中の基本は手洗いです。更に手洗いは十分量のアルコールを1分以上手の上にのせてこすり合わせる方法の方が推奨されるようになりました。

単純でしょう?バイキンがいそうだということで、なんでもかんでも過剰に反応する時代は終わりを告げました。過剰に反応して人権を侵害してきたのが、エイズであり、ハンセン氏病だったのです。実は、このような感染対策の最近の哲学を理解していないと、世の中についていけないのです。あなたが差別を生み出すという元凶にみなされる時代となったのです。そうならないように、この方面の勉強をすることをお勧めします。