クレームの処理

 

名古屋徳洲会総合病院は患者様やその家族からのクレームが実に多いのですが、これは決してこの病院が患者様から見捨てられている証拠ではなく、むしろこの病院に期待されているあらわれであることに最近気がつきました。その詳細は別のお説教で解説するつもりですが、今日はそのクレームの処理の仕方について、職員に指導している点をご披露いたしましょう。

 まず、大切なことは、患者様またはその家族の方がクレームをわざわざ言いに来て下さるということは大変なエネルギーを使って頂いているという認識を持つことです。普通、病院に不満があれば黙殺して、そのまま他の病院に行ってしまわれて、2度ともどってこられないのが当たり前のコースなのです。クレーム処理の第一歩は、病院を良くするチャンスを頂いたとの認識が貴方に必要なのです。さもなくば、貴方の最初の対応の仕方しだいでは、対応が悪いという2重のクレームに発展しかねないのです。その上で以下のことに気をつけて下さい。

 1)素直に聞く
 聞いているはなから、言い訳をぐずぐずと繰り返す人がいるが、これでは患者様を納得させるクレーム処理には程遠いものです。とりあえず謝ってしまうのです。ただし、内容について謝るのはよく判断してからとなります。“誤解されるような言動をしてしまったこと”、“手間をとらせてしまったこと”に対して謝っておくのです。素直によく聞いてから、相手が明らかに誤っている時は、言質をとってグサっと相手を窮地に立たせるようなことは絶対に避けなければいけません。「そんなこともございますね」「そんなことを言う方もいらっしゃいます」「私も以前はそう考えていました」とあいづちをうってから、「......ということについては、どうお考えですか」「......と思いますがいかがでしょうか」と事の是非の判断は相手にさせるという態度を貫きましょう。グサっと本当の事だからとやってしまうと、「何だその態度は、その口のききかたは何だ。この病院の職員教育はどうなっているのだ。」と違った方向にクレームが飛び火してしまい、収拾がつかなくなります。

 2)責任逃れをしない
 「私だけの責任ではない」「私はこの主義でやっている」「上司に命じられたことをやったまでです」などとやったのでは、患者様は「そんなことを聞いているのではない、お前もこの病院の職員ではないか」と切り返してこられるでしょう。

 3)感情的にならない
 穏やかに、わかりやすく、具体的に、ゆっくりと話しましょう。相手の言葉に思わず激高していまっては、正しい判断から程遠いものになってしまいます。

 4)開き直らない
 「患者様にも間違いはあるでしょう」「そんな事をおっしゃるのは患者様だけですよ」「出るところに出てもよいのですよ」などとやってしまっては、まず納まるものも納まりません。クレーム処理は決して議論に勝とうと思わないことです。私は職員と患者様とのトラブルはどちらが正しいかで判断はしないと職員にいつも言い聞かせています。患者様にいかに満足していただけたかで判断します。医療関係者は医療の専門家ですので、患者様に議論ではまず勝てるものです。でも、それをやっていたのではこの患者様は恐らく他の病院に逃げていくでしょう。「議論に負けて商売に勝つ」という気持ちでいかなければ、まずクレームは処理できないことを肝に銘じて対処すべきです。

 クレーム処理は大変な仕事ですが、どうですか?お役にたちそうですか。クレーム処理の達人に貴方がなられることをお祈りします。