敏子さんへ   
 今日は超長いメールを送ります。時間がある時に読んでね。これもインターネットのお陰ですね。携帯電話では何回にも分けなければ、送れませんものね。ありがたや、ありがたや。
 
 今日は徳洲会は8:15amより、衛星放送の日ですが、退屈な理事長のお話の合間に江川紹子さんのお話がありました。あのオウム真理教をやっつけた江川さんです。面白かったので、敏子さんにもおすそわけします。今、江川さんは不登校の問題に取り組んでいるそうです。それも現在不登校になっている生徒ではなく、20歳代の方々で、以前不登校で今立ち直った方々をインタビューしてそのきっかけを探ろうとされているそうです。もう10人ほどインタビューをすまして、その一人の話です。
 
 J君と言っていましたが、ある公立の中学校に転校してきたのですが、そこはかた苦しい学校で何かへまをすると書き取り何百回とかをやらせられる学校だったそうです。以前の学校は開放的で伸び伸びやっていたので、そのあまりの落差で居心地が悪くなったのです。だんだん学校に行かなくなり、お母さんも同時に悩み始めだんだん家庭も暗くなり、お母さんは自分の育て方が悪かったのではないかと、自分を責めました。J君もとうとう引きこもりになってしまいました。J君も精神的に不安定になり、神経質になりいろんな事に怯えるようになりました。また、無気力に何もせず部屋の中でぶらぶらしていました。
 
 お母さんは、いろんな相談を受けたり、学校に行ったりありとあるあゆる事に手を尽くしましたが、最後に不登校の子供たちのお母さん方の集まりに参加することになったのです。その時にその集まりの先輩のお母さんにふっとこんな事を言われたのです。「J君も、そのうち自然に自分の力で立ち直りますよ」、ふっと肩の力が抜けて、自分で治っていく自然の力を信じよう。子どもを信じようという気力が戻ってきたそうです。お母さんに心の余裕ができると家庭も明るさを取り戻していきました。J君もそれにつれて落ち着きを取り戻し、退屈であると感じるようになったのです。そうすると家の外に出るようになったのです。ただ彼の場合はそのまま学校には行きませんでした。
 
 以前から鉄道マニアだったので、機関車を見に行ったのです。それから、いろんな鉄道を見たいと日本国中を回るようになったのです。そこでいろんな人に触れて、いろんな食べ物を食べて帰ってきたのです。そのうち日本国中行っていない所はないほどになったのです。そのうち、まだ行っていない所それは韓国の鉄道であることに気がつきました。彼は韓国に行ったのです。鉄道マニアである彼にとって、飛行機は天敵だったのですが、飛行機を使わなければ韓国に行けません。とうとう嫌な飛行機にも乗りました。それからフリースクールに通うようになるのですが、シベリア鉄道の各駅停車に乗ってヨーロッパに行ったりと旅行は続きました。そうして20歳も越して、いつまでもこんな事をしていられないと就職を考えることになりました。自分のやりたい事を生かした職業ということで、旅行代理店に応募しました。その一つはいろんな所に行ったことがある人という条件でした。これは自分にあっていると応募したのです。応募者の中でも、これほど世界を旅行している人はいなかったそうです。その会社の面接試験で将来どんな人になりたいかという設問がありまし。そこでJ君は「鉄道会社の社長になりたい」と言ったのです。「うちは旅行代理店であって、鉄道会社はありませんよ」と当然会社の人は答えます。すると、「将来は私に任せて頂ければ、旅行代理店の中に鉄道会社を作ってみせます」と言ってのけたそうです。白地図の中にこことここを繋いで、投資はこれだけで、これだけのもうけとやったそうです。社内では反対も多かったそうですが、社長の「今時の若いもので、これだけの夢を語れるというのは珍しい、こんな男こそ役にたつ」という一声で就職が決まったそうです。
 入社後、勿論いろんな失敗はありました。でも、本人は旅行社以外は自分の行くところはないという追い詰められた事情もあったと思われますが、頑張って営業成績第一位になったのです。世界中、自分の体で、目で経験しているのですから、他の社員がコンピューターで探し出す機械的な冷たい情報を、生の声で伝えることができるという強みも、勿論味方しました。今27歳の若さで営業所の所長をやっているということです。結婚もして子どもにも恵まれて、江川さんが「今でも鉄道会社の社長を望んでいますか?」と聞いたら、「今は、鉄道会社はもう良いです、この暖かい家庭をいつまでも続けていきたい。それが夢です」と答えたそうです。
  
 江川さんって、オウムを相手にしている時は強い鉄のような女性と思っていたのですが、本当は心優しい人だったのですね。
                                                    のぶくに

超長いメール    
  或る不登校児の記録