マッコウクジラ(抹香鯨) 
         Sperm Whale
 ハクジラの中でも最大の種で,アメリカの作家メルビルの「白鯨」の中で,エーハブ船長との死闘で有名。

回  遊
 赤道近くの海域で,交尾や出産を行い,子育てをしながら高緯度地方へと餌を求めて北へと回遊する。雌と子供は緯度40度以内に止まり,秋になると南下する。
雄は極域まで移動する。

形 態
  マッコウクジラは,他のクジラに比べて頭が大きく,体長の約3分の1を占めている。頭の中には脳油がたくわえられており,ノールウエーなどでは,これを目的と
して捕鯨が行わ,脳油はろうそくの材料として利用された。脳油の入った部分を脳油器官といい,浮力調節に重要な役割をもっている。また, 反響定位のためのクリッ
ク音を発す る助け にもなっている。頭の下部に,比較的小さくうすい下あごがあり, そこには円錐形の歯が生えている。からだはひらたく,頭の左前に噴気孔が1
つある。からだの後方1/3のところに背こぶがある。頭の後ろには,皮膚にしわのよっ た部分ある。成長した雌は体長およそ12m,雄は18mに達する。体色は暗灰色
か黒で唇は白く,腹部に白っぽい斑点がある。

生  態
 マッコウクジラは,魚と甲殻類,とくにダイオウイカなど深海に住む大きなイカを餌としている。大きくするどいクリック音で獲物を失神させて獲物を取ると考えられ
ている。イカを求めて,ときには1000m以上の深海にもぐることもある。ふつう,45〜60分潜水する。潜水後,12〜15分ほど水面に出て,呼吸する。これがクジラ
の潮吹きである。

脳油器官
  脳油器官の中の脳油は,33.5°Cで液体となり,液体では比重は小さい。潜水時は,鼻から海水を取りこんで脳油を冷却して固体化する。すると比重が大きくなり
潜水しやすくなる。浮上する時は,脳油器官を取り 囲む毛細血管に血液を流し込んで,脳油を温めて液化し,比重を小さくして浮上を容易にしている

群れをつくって移動する
 回遊するときは,大人の雌は,まだ若い雌雄の個体や子供といっしょに群れをつくる。ときには50頭もの群れ をつくることもあるが,ふつうは12頭ぐらいである。
個体どうしはクリック音を使ってコミュニケーションを行う。クリック音は10kmは届くと考えられるので,実際は音の聞こえる範囲で,複数の群れからなる社会的単位
を構成している可能性もある。コミュニケーションには,個体ごとにちがうコーダ(連続したクリック音)があり,このコーダでお互いを識別していると考えられている。
 大人の雄はふつうオスだけの群れで移動する。まれに単独のこともある。短期間雌のいる群れに合流して交尾する。マッコウクジラの妊娠期間は,15〜16カ月で
1匹の子供を産む

マッコウクジラ

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