登山と高山病-その2

標高(m)

2350

2700

3500

3900

4400

4800

平均SpO2(%)

93.2

91.1

85.8

84.5

82.6

78.7

σ(標準偏差)(%)

2.5

2.6

4.5

5.2

4.8

5.6

危険値(平均−σx2)

88.2

85.9

78.8

74.1

73.1

67.5

エベレスト街道でのトレッカーのSpO2とその危険値

この際には高度順応の可否の判断は、平均値より2σ以下から改善しないケースを(後述の)AMS発症の危険群と考えて対処したようです。

この表からも、富士山頂(3776m)付近でのSpO2(%)は85%1)程になることが予想されます。

1)医療の現場での大まかな指標は、SpO2 90%、75%がPaO2 60%、40%の相当するようです。95%以下では、直接測定のSaO2、PaO2と対比させて評価する必要があります。

それではPaO2とSpO2はどのような関係にあるのでしょうか?この両者は直線的でなく非直線関係(S字型)を示します。血液のpH(酸素イオン濃度)、温度およびPCO2に依存する、有名なBohr曲線(右図)で示されます。通常PCO2上昇ないしpH低下、温度上昇で右方に、逆の変化は左方へ移動します。

SpO250%時のPO2値は通常26〜28  Torrですが、これをP50T50あるいはP1/2といい、酸素解離曲線の左右への移動、言い換えればHbのO2親和性を表現するものとして使われます。繰り返しになりますが、高度4000mでSpO280%7300mで 50%の低値2)です。高所では気温も低下しますし、当然体温もやや低下します。高所でのAMSの発症予防の為には、深い呼吸法(詳しくは後述)が勧められています。そうなるとPCO2はやや低下しpHもアルカリ側に傾くので、解離曲線の左方移動(P50の低下)になることが予想されます。即ち、同程度の酸素分圧で、Hbの酸素飽和度は上昇することになります。これは低酸素状況では有利に働くことになりそうです。


2)医療関係者でこの数値(SpO2=50%)を見れば、
即「酸素投与、気管内挿管、人工呼吸!!」と叫びたくなる数値に違いありません。

そうは言っても5000mの高所では、PaO2,SpO2が各々40Torr、75%くらいに低下するので、これは本来なら人間が生活(ましてや運動は?)できるレベルの酸素状況ではありません。

因みに、国際民間航空機関(ICAO)が定めている国際標準大気(ISA)で、高度と気圧の関係から高度を推定する方法があり、これは一般に高度計の理論的裏付けとなっている。(右図)
その3に続く