この十年を、レオン、お前は一人きりで歩き続けた。
この十年を、僕はかえるの姿ですっ飛ばした。
レオン、お前、変わったな…いや、変わっていないのか?
年を取ったね。髪に白いモノが混じり始めていた。僕の方が年上だったなんて、とても思えなくなったな。
それに、以前より、だいぶ頑固になったな。まあ、昔から頑固ではあったけど…。
けど、やっぱり変わってないな…一途で生真面目でストイックなところ、全然変わってないな。
人に任せるのが苦手なところも、相変わらずだな。
…そりゃ、人に任せるのは色々気苦労が多くて大変だからな。自分で抱え込んだ方が、楽だったんだろ?
程度こそ違え、そんなところは、僕ら、似たもの同士だったな。
けどさ、長年生きてりゃ、そういうスキルだって、少しは自然に憶えていくもんだろ?
…そうか…その代わりに、お前は、僕の偶像を崇める事を憶えてしまったんだな。
お前が変わったのは、きっと、そのせいなんだろうな。
この十年で一番変わったのは、お前の中の、僕の姿だったのかもしれないな。
僕は、変わってないよ…いや、変わったのか?
僕にとっちゃ、この十年はほとんど無かったようなもんだからな。外見は多分、ほとんど変わっちゃいないよ。
でも、気が付いた事はある。
十年前には、僕は「世のため人のため」に働くのは、ただ「彼女」のためだと
…全ては「彼女」に認められるためだけにしている事だと……そう、思っていたんだけど、なぁ。
でも、…何だかなぁ。…ホントは、僕自身がそうしたいからやってたんだな。驚いたよ。
…いつの間にか、僕は、変わっていたんだな。自分で思ってたのとは違う僕に…今更気が付いたよ。
レオン、お前は、それを知っていたのか? …お前が作った僕の偶像の中心には、僕の知らなかった僕がいたのか?
今となっては、知るよしもないけど…。
お前がまだ生きてたら、今頃僕等、大げんかしてたかもな。
でも、どうせ分かれるなら、生きてるお前とケンカ別れしたかったよ…。さよなら、レオン。
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