…え、何か用かい、旅の人? ああ、アタシは、この町の者だよ。 ホビット横丁に住んでるけど? …ふーん。あんた、コロナから来たのかい? 見たところ、吟遊詩人みたいだけど… ああ、やっぱり。じゃさ、もしかして、ミーユって吟遊詩人のこと、知らないかい? へえ! あんた、ミーユの孫弟子かい! どうりで品があると思ったよ! 実はね、アタシもミーユの孫弟子なのさ。アタシの母さんは、ミーユの一番弟子なんだ。 …へ、あんた、知らないの? ミーユの一番弟子は、ホビットのリュッタなんだよ! あんた、ホントにミーユの孫弟子なのかい? …ふん、ならいいんだ。 ところでさ、アタシに、何の用なんだい? …ん? コロナのコリューン? 知ってるとも。 …ふん、ふん。赤竜殺しのコリューンが、コロナを去った後の話が知りたい? おかしいね。その話は、ほとんど最後まで歌になっているはずだけど? …なんだって? コロナじゃ、「コリューンの歌」は、コリューンが コロナを出るところで終わってるって?! …ひどい話だねえ。 それで、はるばるコロナから、歌の続きを探して来てくれたのかい。うれしいねえ、ホントに。 あんた、運がいいよ。「コリューンの歌」の続きを作ったのは、アタシの母さんなんだ。 モチロン、アタシも、全部歌えるよ。 じゃ、早速歌ってあげよう。これを聞けば、コリューンの冒険は、ほとんど最後まで… …ナニ? 今、ここで歌わなくていいって? ああ、そうだねえ。長い歌だからね。もっと落ち着いたところでじっくり聞きたいだろうね。 そうだ、何なら、母さんじきじきに歌ってもらったほうがいいかな。呼んできて… …それより、 「ほとんど最後まで」とはどういう意味かって? ああ。あのね、一番最後の話は、母さん、まだ歌にしていないのさ。 代わりにアタシが作ろうかと思ったんだけど…何しろ、アタシもこの目で見たんだからね。 でも、どうもうまくいかなくてねぇ… …え、その最後の話、聞きたいって? …ああ、いいとも。 あの頃は、アタシはまだ、ほんの子供だった…。 |