*9月27日*

<はじめに>
今回もけっこう詳しく書いています。
アプローチ等に不安な方に役立てば幸いです。
純粋にオンサイトを楽しみたい方は、「フリーファン12号」に掲載の、
初登者のトポをご覧ください。
また、文中にあるピッチグレードは今回、私の感じたものです。
壁の条件、荷物等により変わると思いますので、参考程度に考えてください。



 今回は奈良県の大台ヶ原にある千石グラのマルチピッチ、
「1995・サマーコレクション」を登りに来た。
パートナーはHさん。
前夜、大阪を7時45分に出発し、大台ヶ原の駐車場に11時前に到着した。
あたりはガスにつつまれて、冬型の気圧配置のため北西の風が強い。
テントで寝るつもりだったが、この風ではテントがはためく音で眠りづらいと思い、
車のシートをフルフラットにし、車内で寝ることにした。
時折、車が揺れるほどの風が朝まで吹いていた。

 4:50起床。
風はあいかわらず強い。
なかなか車から出られず、出発が遅くなってしまった。
気温はおそらく10度くらい。風があるので、体感温度はもっと低い。
フリースとゴアテックスの雨具を着込み、準備をする。

 6:10、駐車場を出発。
シオカラ谷へのハイキング道を歩く。
途中、看板とロープで塞がれた踏み跡が右にあるのだが、これは間違い。
千石尾根の稜線の道だと帰りに判明。
そのまま石段の道をどんどん下る。
下りきったところで、右に大きな看板で塞がれた水平道がある。
これをしばらく歩くと、道の左右に赤テープがあるルンゼに出会う。
前方には岩峰が見える。
このルンゼをシオカラ谷まで下るのだが、苔の生えた石でもけっこう動く。
7:10ようやく沢が見えてきた。
あまり下りすぎると大変そうなので、右手の樹林の隙間から見える千石グラのほうへと
寄りながらさらに下る。
しばらくすると壁の基部が見えてきた。基部の方が歩きやすそうだったので、
そのまま基部をまいて取り付きに到着。
ルート全景
取り付きから見上げた「千石ー」。
矢印のあたりが最終ピッチ。

時刻は7:42。
少し行動食を食べ、登攀の準備をして取り付く。
登攀開始は8:12。

 1P目、Hさんリード。
左上する凹角。チムニーっぽい部分もある。
ノープロテクションだが問題なし。
グレードは5.5くらいだろうか。私がフォローする。

 2P目、私のリード。
ペツルのボルトが打たれたフェースを登る。
間隔が近く、A1でもいけそうなくらいだ。
グレードは5.10b 。テラスに上がるワンムーヴが
ちょっとワルイ。
荷物を9mmのバックロープとペツルのタイブロックで荷上げし、セカンドも空身で登ってもらう。
Hさん、ノーテンでフォロー。

 3P目、Hさんリード。
快適なフェース。空身で登ればそんなに問題はない。

 私は荷物を背負ってフォローする。
グレードは5.10a 。

 4P目、私がリード。
このピッチがルート全体の核心のピッチとなる。
傾斜の強いフェースを直上し、カブリぎみの部分を登る。
あやうくハマリそうになったが、ノーテンで抜ける。
終了点のレッジは狭く、ややハンギングぎみにビレイする。
このピッチも荷上げをし、空身でフォローしてもらう。
Hさんもノーテンで登る。
グレードは5.10c 。

 5P目、Hさんのリード。
易しいフェース。途中少しランナウトする。
終了点は中央バンドの立木となる。
バンドの下部の太い木でビレイしてもらったが、上を見るともう一本ボルトが有る。
次のピッチは真横へのトラバースで始まるから、終了点はそのボルトを越えた木で
ビレイするのが良さそうだ。
5mほど上の木で短くピッチを切り、あらためて次のピッチに入る。
このピッチ、グレードは5.8。

 6P目、私のリード。
ブッシュのバンドを慎重にトラバース。ボルトは3本。
左のフェース部分のワンムーブが意外とワルイ。5.7くらいかな?
最後はルンゼ状を7mほど登って終了点へ。
ここもちゃんとペツルのアンカーだ。

 7P目、Hさんリード。
7ピッチ目
フレークをトラバースするHさん。

ここからが「サマコレ」のハイライトだ。
まず、右上する急なレッジを
ハング下まで登る。
そこから左へフレークを大トラバース。
もたもたしてるとパンプする。
フォローで荷物を背負った私はちょっとつらかった。
グレードは5.8。

 
8P目、リードは私。
快適なカンテ。一部もろいところがあった。
浮き石に注意して登る。
右側はスッパリ切れ落ちている。
高度感がなかなかだ。
グレードは5.8。



 9P目、Hさんのリード。
2本目のボルトからわざわざカンテの右、つまり
高度感を味わえるようにボルトを打ってくれている。
中間は易しくなって、最後は小ハング越え。
ホールドが大きいので楽勝でクリア。
8ピッチ目
8ピッチ目のカンテをリードする私。

グレードは5.8。
最終の終了点は立木でビレイとなる。

 登攀終了は14:10。
ほぼ6時間かかった。
ちょっと時間がかかりすぎだ。
原因はダブルロープがもつれたり、
ピッチの切り方が悪かったり、
難しいピッチは荷上げを
したことにあると思う。
もっと時間短縮できるように
しなければ・・・反省。

 終了点で写真を撮り、
行動食を食べて帰途につく。

 かすかな踏み跡を
尾根の稜線までたどり、
あとは稜線通しに明瞭な踏み跡を歩く。
しばらく行くと踏み跡は不明瞭になるので、カンを頼りに進む。
稜線はだんだん広くなって、ほんとにこっちでいいのかな?と、ちょっと不安になったが、
朝、ちょうど通ったロープと看板のある踏み跡のところに出た。
広い稜線は右寄りに歩くといいと思う。
そのままハイキング道を歩き、駐車場に到着したのは3:05。
片付けをして帰路に就く。
3:40出発。
大阪に到着したのは19:00ころになった。

 今回は反省する点もあるが、登攀に関しては満足のいくものだった。
天気もまずまずだったし、完全に「つるべ」で登り、二人ともノーテンションだった。
また登る機会があったら、次は違うピッチをリードしてみたいと思う。
素晴らしいパートナーのHさんありがとうございました。


< DATA >

ルート名・・・「1995・サマーコレクション」
ルート概要・・9ピッチ、277m、5.10c
場所・・・・・奈良県吉野郡上北山村、大台ヶ原山・千石グラ
岩質・・・・・硬砂岩
シーズン・・・春と秋がベスト。夏は夕立が多い。
登攀時間・・・約6時間。力のあるペアなら4時間くらいか?
注意事項・・・大台ヶ原一帯は特別保護地域に指定され、キャンプはもちろん
       ガスコンロの使用も禁止されている。
       快適なマルチピッチではあるが、フリークライミングのつもりで安易に取り付いては
       危険である。それなりの装備と心がまえが必要。


<今回使用したギア>

10.5ミリ・50mシングルロープ、9ミリ・50mダブル用ロープ(バックロープとして荷上げに使用)
ヌンチャク20本(2人で)、長スリング2本、ディジーチェーン
ペツル・タイブロック(荷上げに使用)、安全環付カラビナ3枚、カラビナ4枚
ハーネス、チョークバッグ、ATC、エイト環、ヘルメット
シューズ(今回はファイヴテンのスパイアを使用)、水(一人1L)、行動食、雨具
アプローチ用シューズ

 トポ


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