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鋼構造塑性設計指針と全塑性モーメントの概念
 梁単体の全塑性モーメントの概念は,塑性断面係数と降伏応力度をAISC,Mill Certificate各種の保証値(lot若しくはIngot毎)から正確に算出できる。

 崩壊と崩壊機構のプロセス概念から塑性ヒンジの発生から崩壊まで推察と認識による崩壊荷重を求めることである。

 塑性設計の適用範囲と塑性解析上の仮定として条件がある。

・骨組み形式は,ラーメン構造およびブレース付きラーメン構造を対象とする。

・H形あるいは矩形中空断面などの充復断面材,円形中空断面材を対象とする。

・軽鋼構造は対象外とする。

 崩壊荷重の計算は,全塑性モーメント,塑性ヒンジと崩壊機構の概念に基づく解析法の踏襲と,解析を容易にするための仮定がある。
【詳細は本文によることとし簡略記載する】

・曲げモーメントと曲率の関係は,曲率は曲げモーメントが一定のまま自由に増大することができ,全塑性モーメントに達した断面において塑性ヒンジを形成する。

・塑性ヒンジは材軸上の1点に集中して起き,塑性域の拡大は無視する。

・軸力の影響は,全塑性モーメントの低下についてのみ考慮し,塑性ヒンジの回転中心の材軸からのずれについては無視するが,ブレースについては軸力のみ考慮する。

・全塑性モーメントに及ぼす剪断力の影響は考えないが,柱梁接合部パネルについては,せん断降伏を考慮する。

・力の釣合いは変形前の位置において考える。

・荷重の繰り返しによる耐力の低下は考慮しない。

・材料規格の制限。

以上の仮定の下に解析を行うので,塑性設計では,設計された構造物において,これらの仮定が成立するかどうかを確かめる必要がある。

【ここで考察】

・確かめる手法は,破壊強度検証理学的手法が一般的になる。

・継手部接続構造・寿命評価・安全率・安全係数・交番荷重に対する係数・材別線膨張係数・サンブナン捩じり・剛比・横座屈・図芯・細長比・板要素の幅厚比・縦弾性係数・温度勾配・雰囲気温度と遷移温度・冶金・使用条件・建築基準法施行令の構造計算・各種仕様要求に対する遵守・Mill メーカーとの締結事項の遵守・設計要領・製造要領・検査要領が適切であることが前提となる。

・AISCの要求事項と適合規格の順守とAIJ規格へ適切な落とし込みである。

・設計部署の統治Governanceとサプライチェーンマネージメントによる,全塑性モーメントは鋼材の特質【材料調達要求事項】の保証値を採用することで正確な崩壊荷重が得れる。

 概念指標から,鋼構造設計規準【第二版】に縦弾性係数を付加考慮すれば適切なプロセスにより設計できる。

以上の概術と,詳細は「鋼構造塑性設計指針」の原文によることとする。

PS1:AISC規格,Manual of Steel Constructionには各種断面の標準型鋼の塑性断面係数値が掲載される。

PS2;機械工学便覧に矩形断面材の塑性断面係数と断面係数の比率が記載される。

PS3:最終強度は破断試験値による破断面積をベースに算出。

PS4:高層ビルの火災と消火【完全焼きなまし効果と焼き入れ効果】を考慮するとき塑性崩壊メカニズムが材料特性の変遷で高速破壊が起きる。