事故の日

平成16年11月17日 夕方7時前電話が鳴りました
文乃がバイクにはねられ すでに救急車で運ばれたので
すぐ来てほしい・・という内容でした  

え? 事故?  
びっくりはしたけど どの程度の怪我かも分からないまま・・ ただ千里救命の病院に
行ったと聞いたのが少し心配でした・・

息子の弘一がまだ帰っていない
携帯で連絡をとるが こういうときに限ってすぐに出ない・・
行く用意をしていると やっと帰って来た

私は連絡してるのに 電話出てよ・・とちょっと怒りました
文乃が交通事故にあったから 行ってくる・・と出かけようとしたら
やはり弘一も行くと言い そのまま家を出ました

現場に着いたら 同じ部活の人達 そして先生 近くのお母さんも
いてくれてました
事故を目撃した人は 一緒に救急車に乗って行ったらしく
詳しいことは 全くわかりませんでした

警察の人の話を少し聞いて
そこに残っていた 文乃の靴とカバン バッシュケースをもらい
すぐに 病院の方へ向かいました
先生の車で 同じ部活の先輩達も 後からついてきてくれました

病院に着くと 文乃が乗っていたであろう救急車が入り口の近くに
止まっていました
その中を覗くと 血の跡がいっぱいでした
それだけで 何を物語っているのか 想像がつきました・・
それを横目に 私達は中へと入って行きました

最後履いてた靴
11時過 ぎてからだろうか やっと先生に呼ばれた

脳挫傷 頭蓋骨骨折 頭蓋底骨折 右気胸・・

CTを見せられた 
運ばれた時の状況 今どんな状態なのか どのような処置をして 今考えられることはどういうことで これからどのような治療をしていくのか そして 命の危険性についても話された 
重体だった 急変する可能性もある・・と言われた

脳の中には無数に出血の跡があるらしい そして予想以上に腫れがひどいらしい
その腫れは硬い頭蓋骨に囲まれ 逃げ場がなく 圧迫され それが最後には呼吸をつかさどる脳幹という部分を
圧迫していく・・ それを避けるため 低温療法を用いて 脳の腫れを抑えていく治療を 今やっている・・

特に 左後ろの部分を強く打っている ただひびが入っているというより 一部骨折した骨がずれてしまっている状態らしい
耳・・特に左耳からの出血がひどい  鼻からも・・口からも・・多分 中は血でいっぱいなんだろう・・
この1日〜2日で 少しでも腫れがおさまればいいのだが 厳しい状態だった

この時 まだ文乃には会わせてもらえなかった
文乃に会わせてもらえたのは 日が変わるか変わらないか位だった 

その後 文乃が着ていた制服と携帯を受け取った  身に着けていた制服だけは 来ていた警察の人が持って帰った

文乃は すでに処置中・・
救急隊員の人たちから 意識不明ということだけ耳に入ってきました

先に来ていたバスケ部の人たちが 座っている
私達も 少し離れて座った  
何時頃着いたんだろう? 
8時は過ぎてなかったと思うけど・・ 
その間 少し生徒や先生と話をした・・

待ってる間に 父さんが来た
そして 先生方も駆けつけてくれていました

待ってる時間が 長かった
9時を過ぎ 10時も過ぎ・・
その時 何故か 文乃の携帯にメールを送ってみようと思い
Cメールで  あやの頑張れ って送ってみたけど
送信できなった・・

ああ・・携帯駄目になったのかな・・って思った

少しして もう一度 今度はEメールで送ってみたら送信できた
携帯は 大丈夫だった・・  少し安心した

そして 待っているとき 思った・・
人間 そう簡単に死ぬもんじゃない・・って


その後 もう一度先生から話があった
二度めのCTを見せられた 運ばれたときと 数時間たった後と・・
時間がたつににつれ 腫れはひどくなってるらしい 脳の腫れ 圧が
続くと脳幹が圧迫され 心停止に陥る・・
それが何を意味するのか 説明された 
そうなれば 救命は難しい・・と言われた

今は様子を見守るしかないのだ・・
これ以上腫れないで・・! おさまって・・!
可能性が少しであったとしても 

まだ・・まだ・・あきらめてなんかいなかった・・!

私達は そのまま一夜を病院で過ごした

次へ

やっと文乃に会わせてもらえた
夜中だったので ICUは暗かった 他の患者さんたちもいる
文乃は一番奥の個室に入っていた 暗闇で少しだけ電気のついたところで

少し 体を起こした状態で寝ていた

両手を無造作に投げ出して 頭に包帯を巻いて
近づきながら  え・・?これが文乃・・って感じた・・
顔はぱんぱんに腫れて 目の周りが青くなって 下唇が腫れてしまって・・
血の跡も残っている・・ 首も支えられていて 全然文乃の顔じゃなかった
こんなにも変わってしまうのか・・

人工呼吸器をつけている 文乃は今 自分で呼吸している でも弱いので
それを少し助けているんだと 看護士さんは言ってくれた 
手を握って 喋ってあげてください・・と言われ 聞こえるんだろうか・・と思いながら
手を握ってあげた 思わず 冷たい・・と口に出てしまった
低温療法の為 今は冷たいですと言われ そうなんだ・・と心の中で思った
あやちゃん・・あやちゃん・・と何度か呼んでみた
そして しばらく手を握ったまま 文乃と その周りの装置を見渡してみる
 
今はまだ 文乃はがんばっているところなんだ・・頑張れ!
なんとか頑張って 少しでも良い方向へ向かって・・!

でも もうもとの文乃には戻らないんだろうか・・
そしたら だんだん指先がしびれる感じになってきて 
体に力が入らなくなってきて・・息がしにくくなってきて 座り込んでしまった


部活帰りにその事故は起こりました