Top  Information  Profile  Policy  Map  Bbs  Gallery  mail

完成直後の建築家(スタン・ラッセル氏)によるコメントを記載しました。
建主が要望したのは、小さなコンサートや展覧会を開いたり、近所の人たちが集うことのできる空間であった。
建主の夫人が話された、3匹の仔豚がそれぞれの家をつくる童話がテ一マとなり、この建物は「アトリエ風”」とネーミングされた。
淡路島には、家を建てるための材料が豊富にある。荒壁土、瓦、石、竹など、そして材木は四国からと、すべてが身近なところから手に入る。敷地周辺の環境を考え、自然の材料や廃材を使うことにした。敷地は山あいにあり、ミカンやビワの畑に囲まれている。この有機的な雰囲気には直線より曲線が、そして丸い形態の建物がふさわしいと思った。
最初のスケッチで円形の空間と、それを広げるように円形の外側に沿って半周する細長い空間を考えた。円形部分はリビングで、2層吹抜けである。リビング周囲の1階に、玄関、土問、ダイニング、キッチンがあり、の上部は寝室である。
デザインが決まると、次はそれに合った構造と施工を考えた。丸い形を木造でつくるのは、スチールやコンクリートでつくるように簡単にはいかない。多くのスケッチと熟考の末、主となる円形部分は正12角形平面とした。それぞれの辺は1,600oで、これは引違いの窓をつくるのにぴったりのサイズで、平面もちょうどよい広さとなった。外壁を丸くするのにさまざまな方法が考えられたが、竹の下地に土壁、漆喰という伝統的な方法をとった。自然の材料を用いることで、環境にも優しく、地元の職人にとっても慣れた手法であった。屋根は中心から放射状に広がる車輸のスポークのような構造で、瓦屋根を支えている。
大屋根は六角形で、外壁を守るために軒を深くしている。小屋根は6枚の扇形が並べられている。瓦は淡路産で、周辺の雰囲気に合わせて色を選択した。内部空間は仕上げの天井がなく、構造がそのまま見える。
内壁はマツの木摺りで、少し隙間を空けている。
これは壁に絵画を掛けたり,音響を考えてのことである。また木摺りにすることで、丸い形態を強調しようと考えた。


玄関からキッチンまで続く土間には、割れ瓦をモザイク状に敷き詰め、中央に瓦でつくった囲炉裏を置いた。リビングの床はスギ板で、土間からの高さが囲炉裏のまわりに座るのにちょうどよい。
玄関の床は、気分や用途によって、石や貝殻をさまざまに置き換えられる。


浴室へはキッチンを通って入るが、ドアを開けてすぐ脱衣場があり、低い壁で浴室と仕切られている。玄関を入ってすぐ、弧を描く壁に沿って階段が2階へ続いている。2階の寝室は、展覧会場あるいはコンサート時の客席として使うことができる。寝室の奥は
小さなバルコニーがあり、そこから周辺の山並みや遠くの海を見渡すことができる。


「アトリエ風”」が、ここに集う人たちにとって、心なごむ空間になることを願っている。(スタン・ラッセル)