創業20周年記念誌「すまいる」

 1.住まいを考える
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@   生活とは

 生活は、人が生きている限り、その生命を維持し、育むために行なっている必要不可欠な活動の事である。基礎となる「衣食住」の他、日常生活動作という名でいうようなものや、働く事、余暇を営む、コミュニケーションをとり、生きる事の中に積極的な意義を見出し、それを喜びとする営み、職業生活と私的生活、又、その間の社会的な生活といった分野にまたがるもの全てをいう。又、その営みの実態は、独身か、家族を持つか、或は独居であるかにより異なる。

 A   生活の三分野

 ・家の内と外の関係で
   職業生活=職業選択、就職、出向、失業
   社会生活=地域社会との係わり・コミュニティー
   家庭生活=子育てと親の介護
 ・家の内の人間関係で
   夫婦生活
   親子関係
   兄弟姉妹関係

 B    生活を構成するもの

  ・住=住む、住居を自分らしい空間に創り上げる。
  ・コミュニケーション=話す、聴く、語らう、家族の団欒
  ・食事=食べる、生活の糧
  ・家計=家の経済、エンゲル係数、エンジェル係数
  ・労働=働く、活動する、所定の目的のある行動をする。
  ・性=性差、男性、女性、それぞれの性を意識し、そのように振舞う
  ・恋愛・結婚=恋愛し、結婚し、配偶者を持つ
  ・出産・育児=子供を産み、育て、教育する。
  ・服飾=着る、何を着るかを選択する
  ・余暇=スポーツ、レジャー、旅などに代表される趣味全般
  ・扶養=子供、老親の世話をする、健康の維持と増進
  ・葬儀=出産の対角にある死に伴うもの、人生の重要な儀式
  ・信仰=何か自ら信じるものをもつ、家族の祖先の為の宗教行為をする

 C    衣食住
 
 ・衣食住とは、人が生活していく上で必要な衣(服装、ファッション)、食(食事、食文化)、住(住居、居住)の事。生活の基本の柱となるものである。個々の詳細ではなく、それらをどの様に組み合わせて暮らし向き、ライフスタイルを維持しているか、という事を指していうものである。
 
 D   家庭とは

 ・生活を共にする夫婦・親子等の家族の成員で創られていく集まり、及び家族が生活する場所を指す。家庭は、人間が形成する社会の最小単位である家族と、これが生活の中心とする場を内包する概念であり、主に家(家屋)と不可分である。しかし、「家」という容器を持たず・或は一般には家と認識されないその他のものに居住する家族もあるため、家庭そのものが「家」という容器に依存するかどうかは、その家族が属する文化により一概には言えない。又、個人の価値観の中には、家族としてペット等人間以外を挙げ、このペットとの生活を共有する場所を「家庭」の範疇に含める等、定義の揺らぎが見られる。やや逸脱的なケースを除外して一般的に日本語に於ける家庭を定義すると、「個人が家族と生活を共有する場」である。家庭は個人の心情風景に内在し、この感覚を共有できる他人が家族である。人間は社会的動物であり、社会に依存したり働き掛けて存在しているが、その上で家庭はこういった人間の性質に求められて存在している。単に一緒に住むだけでは不十分である。そこで生まれてきた子供にとっては、家庭は「第二の子宮である」という人もあり、常に火宅という人もある。本来は、人がそこに戻り、くつろぐ事が出来、「家にいる」と感じる事の出来る安らぎを持った「庇護された空間」の事である。
 ・家庭の機能 家族のライフスタイルにおいて、家庭はしばしば子育ての場であり、また様々な家事(食事の世話、掃除洗濯、買い物、家計)、一家団欒、庭仕事、老人の世話と介護、地域の付き合い等、各々の家庭に関する事柄のマネージメント機能を持つ。
 
 E    核家族について
 
 ・社会における家族の形態の一つ。拡大家族、大家族、複合家族と対なる表現である。全ての家族の基礎的な単位。具体的に    は@夫婦とその未婚の子女A夫婦のみB父親又は母親とその未婚の子女のいずれかからなる家族を指す。日本では核家族世帯が全体の60%近くを占める。核家族が日本の家族形態の中心である事は長い間変わっていない。その内訳は、「夫婦のみ」が約20%、「夫婦と子」の形態が約30%、「一人親家庭」が約8%である。大家族に対して転居や住居の改造など居住に関するフレキシビリティーが高く、親類間のプライバシーが維持しやすいが、多人数で同居する大家族と比べて、親子三世代による家族労働や育児。家内労働の分担がしづらくなる。
 ・経緯

 日本の場合、核家族率そのものは1920年(大正9年)に55%と既に過半数を占めており、1960年代に急激に上層し1963年(昭和38年)には流行語となった。その後1975年(昭和50年)の約64%を頂点としてその後は徐々に低下し始めている。これは親世代が複数の子のうち1子の世帯と同居すれば、他の子の世帯の多くの場合「核家族」になるためである。戦後問題とされてきた核家族化の焦点は、むしろ親世帯の単独世帯化と居住構造の変化である。1975年(昭和50年)以降、単独世帯、特に高齢者の単独世帯が急増しており、これは産業構造の変化(東京一極集中等)や人工の都市化、転勤などの物理的事情により、子供世代が、長寿化してきた親夫婦と同居が困難になっている。別居している老親の長寿化に伴う介護問題、或は夫婦の共稼ぎ増加により下校後の子供(小中学生前後)が家で一人きりになる問題「核家族」が議論される原因の一つである。

 F    無縁社会について

 ・日本では少子高齢化、女性の社会進出によるかつての結婚に対する若者の意識の変化、地縁血縁社会の崩壊、個人情報保護法によるプライバシー保護の厳格化、家族や社会とのコミュニケーションが希薄化しネットによる交流が主になっている若者、又、終身雇用制度の崩壊を始め、長引く不況において団塊の世代の退職・雇用減少といった要因が重なり合い、単身者は益々孤立しやすい社会へと急速に移行している。2030年以降の生涯未婚率は30%を越えるであろうと予測されてる。更にニートやフリーター、派遣社員の増加が著しく30代、40代で既に社会から孤立する者が急速に増えている。これは、日本に限らず先進国一般の風潮であり社会問題化している。
 ・日本は自殺率が先進国の中で非常に高い一方、年間3万人以上が孤独死している。死因は病気、自殺など原因は様々だが、誰にも気付かれず亡くなり、身元すら判明しないまま火葬され、無縁墓地に送られることもある。亡くなってまで一人は寂しいと考え、財産や所持品、更には自分自身の死後の処置をNPOと生前契約するものも少なくない。全国の自治体の調査によれば、近年「身元不明の自殺と見られる死者」や「行き倒れ死」等、国の統計上では分類されない「新たな死」が急増している事が判明した。
 ・こうした風潮をビジネスチャンスと捉えられ、さまざまな単身者向けのビジネスや商品が開発、販売されている。身辺整理や遺品整理、埋葬等を専門に請け負う「特殊清掃業」。共同墓、話し相手、保証人代行などの「無縁ビジネス」が繁盛している。
 ・一方、「無縁社会は自由を求めた日本人が、高度成長の人材需要に併せて都市に移動した必然の結果である。終身雇用による疑似共同体を維持できない以上、個人を単位として社会を再構築するしかない」とする考え方もある。<参考=リバタリアニズムとリベラリズム>

 G    日常生活動作

 ・日常生活動作(ADL)とは、食事・更衣・移動・排泄・整容・入浴など生活を営む上で不可欠な基本的行動を指す。それぞれについて自立/一部介助/全介助のいずれかであるか評価する事で障害者や高齢者の生活自立度を表現する。日常生活活動ともいう。

 H    QOL 「クオリティーオブライフ」 生活の質

 ・QOLとは一人の人生の質や社会的に見た生活の質の事。つまり、ある人がどれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送り、人生に幸福を見出しているか、ということを尺度として捉える概念。QOLの「幸福とは心身の健康、良好な人間関係、やりがいのある仕事、快適な住環境、充分な教育、レクレーション活動、レジャー等」、様々な観点から計られる。又、QOLには国家の発展、個人の人権・自由が保障されている度合い、居住の快適さとの関連性も指摘される。したがって、クオリティーオブライフは、個人の収入や財産を基に算出される生活水準とは分けて考えられている。

 I    医療・介護での取り組み。

 ・QOLに対する取り組みは医療の歴史とともに発展してきた。医療は人を診るものであり医学は病気を見るものだとする考え方があるが、医療も化学的側面が強くなり、「病気は治ったが患者は死んだ」という状態が問題となり、長期療養を要する疾患、消耗が激しい疾患や進行性疾患では、いたずらな延命治療、患者への侵襲が激しい治療を継続する事によって、患者が自らの理想とする生き方、もしくは社会的に見て「人間らしい生活」と考える生活が実現できない事が自覚された。この様な状況を「QOL(生活の質)が低下する」と呼んでいる。これに対し、患者が自身の尊厳をより保ち得る生活の実現を目的とした援助が重要であるという考え方が生じたのである。これを「QOL(生活の質)を維持する、向上させる」等という。

<2014年4月作成、2014年11月現在確認済>
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