創業20周年記念誌「すまいる」

 1.住まいを考える
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 @   住まいとは人の居住を用途とする建築物
 
 周囲の環境から住人の快適な生活を守る者であり、生活範囲となる環境を含める場合もある。
 ここでいう「周囲の環境」とは、気候(雨、風、暑さ、寒さ、湿気等)、異臭、騒音、他、人の視線や聞き耳(プライバシーの保護)、天敵(猛獣、猛禽、害虫等)、立地条件によって異なるものであり、住宅に求められる対応もそれによって異なる。

 現代では、地震や突風、ゲリラ豪雨等の自然災害、原発事故や工場排煙の大気汚染、地滑りや地盤の液状化現象等のある意味での人的災害も求められる要素としてあげられます。これらの他にも多くの考えなければならない事柄は、時代と共に増え続けていきます。

 A   一つの敷地に一世帯が居住する戸建て住宅(個人住宅、建築基準法においては専用住宅)と、複数世帯が居住する集合住宅(建築基準法においては集合住宅)とに大別される。

 B   住宅の形には、社会の変化や流行に応じて、和風、洋風、欧風住宅と言った呼び名があり、高齢者や障害者の在宅ケアを考慮にいれ、二世帯住宅、三世帯住宅や、バリアフリー住宅といった呼称もある。

 C   国勢調査では、区画された建物の一部で、一つの世帯が独立して家庭生活を営む事が出来るように建てられた住宅としている。

 D   伝統的住宅

 ・民家=一般庶民が暮らす住いの事で、日本建築史や民俗学では、主に江戸時代の農家、町家の類を民家という。明治時代以降に建立された住宅で、伝統的様式・技法を用いたものもこれに含まれる。又、中・下層武士の住いも農家と同様の技法が用いられているものは民家に含める。現代では団地やマンション等の集合住宅に対して、一戸建ての比較的小規模な住宅を指して民家と呼ぶ事がある。

 ・庶民の住宅である事を定義する場合は、竪穴住居もそれに含まれる。竪穴住居は室町時代まで利用されたが、堀立柱建築が鎌倉時代以降に普及し、中世以降の民家の建築構造として一般化した。

  千年家
   ・箱木家住宅(兵庫県、鎌倉から南北朝時代の建築)
   ・古井家住宅(兵庫県、室町時代後期の建築)
   ・坂田家住宅(兵庫県、日本最古級の古民家だったが1962年に消失)

 ・農家=屋内に土間があり、田の字型の間取りとしたものが典型的なものである。土間には煮炊きをするかまどがあり、馬屋もよく見られる。いろりの周りで家長を中心に食事を取る。時代が下がると接客用の部屋が造られ冠婚葬祭で人が集まる際は、戸や襖を開け放して部屋を広く使えるように工夫された。土間で縄をなったり、縁側で機織をしたり、屋根裏で蚕を飼う等、住居と生業の結びつきが強い。

 ・町家=間口が狭く、奥行きがあり、裏まで通り抜けの通路が設けられている事が多い。間口が狭いのは、間口の大きさに応じて税金をかけていた名残だといい、道路に面して短冊形に敷地を取る形状の町家が各地に見られる。道路に面した表側は店であることが多く、裏の方に住いや蔵などを設けた。京町家や、「粋な黒塀、見越しの松」に唄われる商家などに見られる、坪庭や中庭は、通風・採光の役割を果たしている。

 E   不動産販売による住宅

  ◎新築住宅

   ・建売住宅=土地と家屋がセットになった状態で販売されるもの。新築マンションと同様に建築確認申請を済ませた段階でなければ、宅地建物取引業法により売出しや広告を出す事が出来ない為、家屋の間取りデザインはデベロッパーが決定するものに固定される。

   ・注文住宅=施工主が設計事務所・工務店・ハウスメーカーに依頼し、既に用意してある土地に家屋を建築させるもの。プレハブ住宅のようにある程度レイアウトが決まっているものが主流となっているが、オーダーメイドの為、間取りや外観・構造の設計が自由に決められる。只、注文住宅における定義には多くの問題点を伴っており、この事に関しては後述で紹介させていただきます。

   ・建築条件付土地−土地の売買契約締結後、一定期間内に指定したハウスメーカーで住宅の着工が行える事を条件に売り出される土地。ハウスメーカーが指定されない場合もある。条件に反した場合は売買契約が解消される。都市部では築年数が相当経過した戸建て(古家)が条件付土地として売り出される事もある。

  ◎中古住宅


 F   構造形式による分類

 ・木造住宅
 木造住宅=木構造は建築の構造の一つで、構造耐力上主要な部分に木材を用いる構造である。下記にも個別説明を入れていますが、ここでは伝統的工法を説明いたします。伝統的工法(社寺建築や大規模高級住宅に多く見られる)太めの柱と梁、貫を用いて、互いの部材を貫通させる構造形式。車地や込み栓を用いて固定させる。外力や変形に対しては、主に木材のめり込みにより抵抗する。この為、大変形に対しても粘り強い構造であり、地震・台風の被害の多い日本の風土に適した工法といえる。


 ・在来工法(木造軸組み工法)
 柱と梁で支える構造形式で、筋交い・耐力壁によって抵抗する。伝統工法とは異なり接合部にホールダウンや羽子板金物等で補強するが、従来から伝統工法も取り入れ、近年では2×4工法等各工法の利点を取り入れることで、強度面では非常に強くなっている。又、一般住宅に採用される事が多く、その間取りや増改築・改装の自由性に富んでいる。
 木造軸組構法の原形は、竪穴式住居に見られる。すなわち、柱を立てて桁を支え、その桁に梁を架けて主要な構造としている。太古の頂部が二又の自然木の柱に桁や梁を架けて縄で縛って固定する接合方法から、縄文時代前期には木材を加工する技術が出現したと見られ、道具と木材加工技術の進歩とともに継手・仕口などほぞ・ほぞ穴を利用した、より合理的な接合方法が用いられるようになった。在来工法はこうした伝統的な構架・接合方法を受け継いているが、伝統工法が粘りで揺れを吸収する柔構造であるのに対し揺れを受け止める剛構造となっているなど、異なる点も多く、基礎の構築、土台の設置、基礎と土台の緊結、筋交いの多用や各種ボルトやプレートといった補強金物の使用など多くの技術は昭和時代後期以降から発達したものである。また、こうした技術は耐震基準の改正などにより大きく変化しており、他の工法に比べ耐震基準改正前後で構成要素が大きく異なるのが特徴である。主要な構成要素は以下の3つに分けられる。

 主要部分
 木造軸組構法は伝統工法から引き継がれた継手・仕口といった、ほぞ・ほぞ穴による接合方法を基本としている。ただし、柱は伝統工法より細めで、柱を貫通させて水平材を通す貫も殆ど用いられない。このため、接合部は伝統工法より脆弱な傾向にあり、殆どで金物により強化される。また、伝統工法ではまれであった筋交いが多用され、建築基準法でその使用が義務づけられている。近年は木造枠組壁構法である耐力壁の使用が義務づけられており、現在の在来工法は厳密には木造軸組構法ではなくなっている。

 屋根構造は「小屋組」と呼ばれ、主要部分の上に設置する構造物である。小屋組は主要部分の柱に桁や梁を架け、梁の上に束を立てて、その上に母屋と棟木で斜面を形成し垂木を取り付けて屋根を葺く構成を基本としている。その構造は主に伝統工法を引き継ぐ和小屋と西欧建築の構法を取り入れた洋小屋の二つに分類される。和小屋は形状・大きさの柔軟性が高く、現代の木造軸組構法住宅の多くに用いられている。洋小屋は強度に優れる構造であるため大きな屋根空間を構築するのに用いられることが多い。

 和小屋は、主に折置組(おりおきぐみ)と京呂組(きょうろぐみ)の2つがある。折置組は柱の上に直接「小屋梁」を架け、その上に「軒桁」を渡す形式で、京呂組は逆に柱の上に「軒桁」を渡し、その上に「小屋梁」を架ける形式である。折置組は小屋梁と軒桁の接合に「渡りあご」と呼ばれる両部材に掘られたホゾを噛み合わせる仕口を基本としており、強度に優れるが加工には手間がかかるため、かつては主要な構法であったが高度経済成長頃からあまり用いられなくなっている。京呂組は現在の主流な構法で「蟻落とし」と呼ばれる軒桁に掘られたホゾに小屋梁材を落とし込む仕口であるため、加工が折置組よりも容易である反面、部材の接合が弱く羽子板ボルト等の金物で補強する必要がある。京呂組の基本的な構成は、柱の上に渡した軒桁に小屋梁を1間(1.8m〜2m程度)間隔に渡し、梁の上に小屋束を半間(90cm程度)間隔に立て、上に母屋・棟木を渡す。小屋束・棟木・母屋の継手部分には、釘や鎹(かすがい)を打ち、小屋束・母屋・梁・棟木に小屋筋交いを打ち付けて、剛性を強化する。母屋・棟木上に垂木を一定間隔に並べれば屋根の斜面が完成する。なお、梁の長さは2間(3.6m)程度が標準的である。洋小屋は、真束組や対束組等がある外来の組み方である。平面トラスを組むので梁間を和小屋に比べ広くすることができ、強度上必要な柱の数を比較的少なくできるので、和小屋に比べて部屋の空間や屋根裏の空間を広くとることができる。洋小屋の基本的な構成は、柱の上に渡した敷桁に、合掌・真束・ろく梁・吊束・小屋方杖等の部材でトラス構造を形成する。この上に母屋・棟木を渡し、垂木を一定間隔に並べて斜面が完成する。

 日本建築の源流である竪穴式住居などでは土に穴を掘って柱を立てる掘っ立て柱が用いられていたが、地面から水分が上がれば柱は腐ってしまうため、伝統工法では礎石の上に柱を並べる構法が採られていた。在来工法はこの部分が大きく異なり、鉄筋とコンクリートで「基礎」を構築し、柱は下部で「土台」と呼ばれる横材に接合され、基礎と土台をアンカーボルトで固定する。このため、地震に際しては揺れを逃がす伝統工法に対して慣性を全て受け止めることになり、ホールダウン金物や羽子板ボルトなどによる補強が不可欠となっている。基礎は近年まで布基礎が基本であったが、湿気対策や耐震性などの観点からべた基礎に主流が移っている。

 <特徴>
 ・日本の木造住宅の工法としては、主流の工法である。技術的には伝統工法そのものというわけではなく、多くは1960年代頃から発達したものである。

 ・使用される木材は、例として、土台が105o×105oの檜、大引きが90o×90oの檜、柱が105o×105oの杉、間柱が30o×105oの杉、梁が105o×{105o, 120o, 150o, 180o, 210o, 240o, 270o, 300o, 330o, 360o}の米松筋交いが105o×45oの米松、母屋が105o×105oの米松、垂木が45o×45oの米松など、只、地域により使用材種が変化し、又、最近では積層材の使用など、最近は実に多種多様である。

 ・木造軸組構法では、各部材に、継手・仕口などの複雑な加工を施すため、手作業による加工には高度な技術が必要とされるそのため、近年は人件費および工期を減らすためプレカット工場での機械による継手・仕口の加工が主流となっている。

 ・使用する釘は、主に鉄丸くぎ(N釘)のN50・N65・N75・N90であるが、これらの釘は他の釘と見分けがつきにくく、誤使用を防ぐため厳重な検査が不可欠である。

 ・木材同士の接合のみでは地震により引っ張られて抜ける可能性があるため、近年は柱の上部と下部にはかど金物やホールダウン金物、梁の両端部には羽子板ボルト、筋交いの両端部には筋交いプレートなど、補強金物の使用が義務付けられている。しかし、ホールダウン金物は施工漏れ事例も多くあるため、この取り付けには厳重な検査が不可欠である。            

 ・構造上、柱と梁に応力が集中するため、地震荷重や風荷重などの水平荷重(横からの力)に耐えられるように筋交いや構造用板などを用いて一定量以上の耐力壁・耐力床を作ることが義務付けられている。

 ・木造軸組構法の耐震基準は兵庫県南部地震や新潟県中越地震などの大きな地震によって木造軸組構法の脆弱性が指摘されるたびに見直され、1981年(昭和56年)(必要壁量の割増し)、2000年(平成12年)(偏心率の制限・ホールダウン金物などの設置義務化)、2008年(平成20年)(すべての建物での構造計算の義務化)と改正されてきた。そのため、(第二次世界大戦後に建設されたものでは)建築年代の古いものほど耐震性が低い可能性が高い傾向があり、構造用合板を採用した新しいものについては、木造枠組壁構法に匹敵する耐震性を確保しているとされる。

 ・柱や梁などの線材が基本構造であることから、気密性・断熱性・防音性の向上には工夫が必要であり、近年は構造用合板などのボード類に気密パッキンを貼り付けて軸組みに打ちつけるボード気密工法などが開発されている。これに断熱材を組み合わせることによって、次世代省エネルギー基準に適合した建築物を作ることができる。

 ・耐力壁ではない壁は構造上建物の剛性に殆ど寄与しないため、窓や扉等の開口部を拡大したり増設したりするような大規模なリフォームが容易なメリットもある。しかし、耐力壁まで撤去するような悪質なリフォームには注意する必要がある。

 ・施工順序としては、基本的に基礎→土台→主要部分→小屋組み→屋根→床→壁 となる。屋根が比較的早期の段階で取り付くのは雨の多い日本において適しているとされる。


 ・2×4工法(木造枠組壁工法)

 木材の枠組に構造用合板を打ち付けた壁と床で支える構造形式で、外力や変形に対しては強固に結合された耐力壁と剛床で支える構造形式。
 木造枠組壁構法は、耐力壁と剛床を強固に一体化した箱型構造である。木造軸組構法が、柱や梁といった軸組(線材)で支えるのに対し、木造枠組壁工法は、フレーム状に組まれた木材に構造用合板を打ち付けた壁や床(面材)で支える。それゆえ、高い耐震性・耐火性・断熱性・気密性・防音性をもつ。

 <名称の由来>
 アメリカ合衆国の建築工法のうち、特にプラットフォーム工法を日本で定義した名称である。1973年(昭和48年)に制定された。「木造枠組壁構法」は『学術用語集建築学編』に定められた名称である。下枠・縦枠・上枠などの主要な部分が、2インチ×4インチサイズをはじめとする規格品の構造用製材(ディメンションランバー)で構成されることから、2×4(ツーバイフォー)工法と通称される。一方、2×6工法は、主要な部分に2インチ×6インチサイズの構造用製材を使うものを指す。
 ただし、構造用製材のなどは未乾燥製材前の寸法であり、実際に流通する乾燥製材済の構造用製材はこれよりも1/2インチ程度小さい。以下に例を示す。

   ・呼び名:2x4 実寸1.5インチx3.5インチ
   ・呼び名:2x6 実寸1.5インチx5.5インチ
   ・呼び名:2x10 実寸1.5インチx9.25インチ
   ・呼び名:1x4 実寸0.75インチx3.5インチ         
 <特徴>
 ・使用する木材は、主に、寸法形式 204(38o×89o)・206 (38o×140o)・208 (38o×184o)・210 (38o×235o)・212 (38o×286o)・404 (89o×89o)の6種類と構造用合板だけであり、規格化された木材は、工場での大量生産により手間やコストを抑えることができる。

 ・継手・仕口などの複雑な加工が不要であり、ほとんどが直線カットのみで済むため、高度な技術を必要とせず、人件費および工期を抑えることができる。            

 ・使用する釘は、主に、2×4用太め鉄丸くぎ(CN釘)のCN50(緑)・CN65(黄)・CN75(青)・CN90(赤)の4種類だけであり、色もついていることから、釘の誤使用が起こりにくく、打ち込み済みの釘の検査もすることができる。なお、広く普及している鉄丸くぎ(N釘)などの使用は認められていない。なお、石膏ボードの打ち付けには、石こうボード用くぎを用いる。
 
 ・構造用合板を直接打ち付けた耐力壁および剛床で建物を強固に一体化しているため、耐震性・耐風圧性に優れている。特に耐震性については、兵庫県南部地震および新潟中越地震などで、建物の新旧を問わず、ほとんどの建物で大きな被害を生じなかったことからも証明されている。これに対し、木造軸組構法の建築物は、倒壊したものや、大きな被害を生じたものが多かった。ただし、住宅の絶対数は木造軸組構法の方が格段に多いこと、全体的に築年数が古めであることは留意すべきである。また木造枠組壁構法の建物に被害が出なかったわけでは決してない。過信は禁物であり、耐震強度が高いからと言って、家具固定、ガラス飛散防止、避難経路の確保などを怠ってはならない。

 ・壁や床といった面要素を基本としていることから、隙間が大変少なく、断熱性・気密性・防音性に優れている。特に気密性については、断熱材と防湿気密シートの使用により、比較的容易に次世代省エネルギー基準に適合した建築物を作れるばかりでなく、さらに厳しい省エネ基準であるR2000に適合した建築物を作ることさえ可能である。

 ・各部屋は、内壁および天井に石膏ボードを打ち付けてあるため、火災に強く、隣室や上階への延焼を遅くする効果がある。また、石膏ボードを厚くしたり重ね貼りしたりすることにより、比較的容易に準耐火構造の建築物を作れるばかりでなく、耐火構造の建築物さえも作ることができる。

 ・耐力壁線と呼ばれる耐力壁で囲まれた空間を構成していかなければならないため、間取り、部屋の大きさ、窓の位置、大きさ等、ある程度の制限を受ける。しかし、逆にこのような制約が、構造的強度を高めているとも言える。

 ・耐力壁が構造上重要な位置を占めるため、窓や扉等の開口部を拡大したり増設したりするような大規模なリフォームはできないデメリットもある。

 ・施工順序としては、2階建ての場合、1階床→1階壁→2階床→2階壁→屋根となる。屋根が最後となるのは、木造軸組構法と対照的である。雨の多い日本においては、施工中に床に水が溜まったりしないように、養生を重視する必要がある。なお、短時間の濡れに対しては、乾かせば問題ない。

 ・欧米、特に北米やカナダにおいては、木造住宅の一般的工法である。

 ・日本においては、木造軸組構法の割合が多く、この構法が普及しているとは言い難い。しかし、耐震性・耐風性・耐火性・断熱性・気密性・防音性などの良さが評価され、近年シェアを伸ばしつつある。

 ・構造方法(枠組みを組む際の木材の間隔、構造用合板の張付方法及び釘等の金物による留付間隔等)を理解した設計者・工事監理者・施工業者による設計・工事が不可欠である。また、行政機関や民間の確認検査機関等による検査の際に、検査官の理解力が乏しい場合、見落としの可能性もあるので注意が必要である。

 ・技術基準については建築基準法告示第56号にて、最低限の仕様規定が明記されている。


・木骨造(木質ラーメン構法)

 太い柱と梁を用い、モーメント抵抗接合によりそれらを剛に接した構造形式で、いわゆる木造のラーメン構造である。木製の柱と梁を完全に剛接合する事は難しく剛接合ではなく半剛接合として取り扱う。外力や変形に対し柱と梁のみで抵抗する為、耐力壁は基本的に必要ないとされているが、耐力壁で強度を補う事もある。住宅・事務所・公共施設などに用いられる。

 <ラーメン (骨組)>
 ラーメンは長方形の角部が剛接合されていて、外力により部材に発生した曲げモーメントは接合部材に伝達しながら全体の部材で強度を構成する。部材に平行な荷重(建物では地震や風などによる横からの力)がかかった場合でも、接合部で抗力を発生して筋交い構造を不要とする一方、接合部に高い強度が要求される。不静定構造であることから、一部が破壊しても応力の再分配が行われて崩壊することはなく、多くの箇所に破壊が生じたときに崩壊に至る。この性質を最大限に発揮するには、柱より梁が先に破壊するようにすること、破壊モードは曲げ破壊のみとし、せん断破壊を許さないことなどが重要である。
 比較される構造概念として、各部材の接合部がピン接合されたトラスや、部材を線ではなく面ととらえる壁式構造、曲げモーメントを圧縮力に変換するアーチ構造などが挙げられる。
 

 <建築分野におけるラーメン構造>
 ラーメン構造は、近代建築における最も一般的な構造形式であり、構造材別に見ると、鉄骨造(S造)、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の建築物の多くに採用されている。ラーメン構造が現在のように一般的な形式となったのは、建築史的視点から見ると、ごく最近、20世紀に入ってからのことであり、ラーメン構造の普及は上記に挙げた建築材料、すなわち鉄とコンクリートの普及と切っても切れない関係にある。

 歴史的な蓄積も多く、信頼性が非常に高い。事務所ビルや中層集合住宅などには柱間を6.8mにしたものがもっともコスト効率のよいものとされ、経済スパンとも呼ばれている。
 近年ドリフトピン工法の普及に伴い、木質建築物においてもラーメン構造が可能となった。
 基本的にはブレースや耐震壁が不要である為、間仕切りのない広々とした空間を作ることができる。
 建築分野では、鉄骨造・鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造においては最も多く用いられている構造形式である。一方、木造においては、部材同士を剛強に接合することが困難なので、ほとんど実績がない(接合部に金物を用いたとしても、金物が木材にめり込みやすく、完全な剛接合を作ることは難しい)。
 荷重に対しては、主に柱と梁の曲げによって抵抗するため、柱と梁は非常に太いものとなる。一般的な柱の寸法は、鉄骨造で300o角〜900o角程度、鉄筋コンクリート造で600o角 -〜1200o角程度となる。
 荷重による部材の変形は、曲げ変形が支配的であり、せん断変形・軸方向変形はほとんど発生しない。
 地震荷重・風荷重に対しての変形量は、壁式構造などに比べて大きくなる。しかし、大変形時においても粘り強く抵抗する特性がある。ただし、大変形に追従できない建具類や仕上げ材が損傷を受けることが多い。


 <土木分野におけるラーメン構造>
 土構造物、河川・海洋構造物なども含み、いわゆるインフラ整備全般を対象とする土木分野においては、一部の鋼構造・コンクリート構造について、あえて静定構造物と区別する際にラーメンの呼称が用いられる。代表的なものとして、橋梁の上部構造において、ピン支点である支承を設けずに剛結構造としたラーメン橋がある。そのほか、橋梁下部構造においては、単柱形式の橋脚が一点固定の静定構造であるのに対し、不静定構造である門型橋脚を「ラーメン橋脚」と称して区別することがある。

 <構造計算方法>
 ラーメン構造の構造計算は複雑である。そのため、次のような方法が用いられる。

 ・不静定次数が非常に高いため、手計算による計算は困難である(非常に高次な連立方程式を解かなければならない)。そのため、手計算の場合、近似的な解を求める方法として、固定モーメント法やD値法がよく用いられる。

 ・コンピュータを用いた計算では、マトリックス変位法を用いることによって、すべての節点の変位とすべての部材の応力を正確に求めることができる。これは、市販の構造計算ソフトによって行うことができる。


・鉄骨造住宅、
 躯体に鉄製や鋼製の部材を用いる建築をいう柱、梁、筋交いを使用したプレース構造、柱と梁を剛接合により完全に固定し、筋交いを不要としたラーメン構造、小さな三角形を多数組み合わせたトラス構造がある。又、製鋼厚6o以上・未満で重量鉄骨 (主にラーメン構造・トラス構造に用いられる)軽量鉄骨 (主にプレース構造に用いられる)が有り、製鋼工程では高炉材と電炉材に分類される。


・鉄筋コンクリート造住宅
 金属の鉄が持つ性質の容易に破談しない粘り強さと引張強度、セメントと骨材(砂・砂利)を水で混ぜたコンクリートが持つ高い圧縮強度を併用した構造。


・プレハブ住宅、
 一般的にはプレハブメーカーの規格住宅をいう。プレハブとは、プレファブリケーションから簡略化された日本語で、建築業界でよく使う言葉。あらかじめ工場である程度のところまで作っておき、現場では組み立てるだけというような仕組みをいう。現在では殆どの構造形式や工法で、部分的又は、ほぼ全般的(プレハブ住宅メーカー等)に活用されています。

<2014年4月作成、2014年11月現在確認済>
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