創業20周年記念誌「すまいる」

 2.住むを実践する

 
ひとこと

「マスコミ報道や各種広告、少し角度を変えて観察してみませんか。」
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@  太陽光発電ブーム?
 原発の継続・廃止論に伴って、自然エネルギーの活用が取りざたされています。太陽光、風力・地熱等等。今後開発・研究が進められる中、国の法整備によってはより良い環境が創り出されていくと期待したいものです。

太陽光発電に関して一言。
 弊社では、新しい興味深い商品が発売されても、注目は続けますが暫らくは静観します。それは、新商品の短所が次第に明らかになり、改良され、弊社建物の一部として問題を起こす可能性が無いか、又、設計上や修理改修の問題点も見極めた上、初めてお客様から要望があればご紹介させて頂くのです。建物を建てるという事は、大きな責任が伴います。世に出した建物が一商品や一機能の不具合であったとしても、住まう事に問題を抱えた場合、その時点でその商品を薦めた弊社の責任が発生します。商品知識も無いままに、見た目や勝手が良さそうだからとして商品を紹介し、不具合が発生したら製造メーカーに任せるだけでは、施主様との信頼関係は失墜し、弊社の信用問題に発展します。状況次第では工務店としての立場も失う事になります。

<ケース1>

 
太陽光発電を含む大規模改装工事

 当時の建物は、古くから建っている和風建築で、和瓦葺き、下地は瓦土を敷いた上に瓦を乗せる工法です。小屋組はしっかりしていました。外壁は荒壁施工、筋交いはバランスよく配置されていました。基礎は鉄筋コンクリート造布基礎です。そこで実際に設置する事を前提に商品の開発会社と設置業者を現場に呼び、色々質問をしました。太陽光発電の重量は2面で一トン近い数百キログラム、屋根はその段階で改修の予定はありません。

 質問の趣旨は
@ 太陽光発電設備を一派な住宅の屋根上に乗せることは、総荷重に対する建物構造耐力上の再計算や責任施工を前提にされる上で設置されるならば、建物の現状調査はしないのか。
A  本体取り付けに関連する金物や部品の屋根面への固定方法や本体と建物内部に至るまでの配線配管方法の実質的具体的な説明はされないのか。
B  屋根面のメンテナンスはどうするのか。
C  将来における発電機の撤去、或は復旧費とそれに伴う建物本体の修復費等の予測とその考え方。

(工事会社の返答)
 「今まで自分の知る限り何も起きていないので大丈夫だと思います。」「そこまで考えた事はありませんので分かりません。」との事でした。

D  更に、今まで発電機の荷重に対して問題ないとする研究や学術的経緯での書面の有無に関する質問をしました。

(工事会社の返答)
 「ありません」「分かりません」という返答でした。

 最近になって太陽光発電の設置基準なるものが、それなりの基準として設けているようですが、既設の住宅に対し間違いのない対応を求めることに対する具体的な基準はありませんでした。 


<ケース2>
 
 雨漏りの修繕と建物内部の改装工事

 ここでは太陽光発電のケースではないが、屋根への負荷が及ぼすトラブルとしてお伝えします。大型の温水器が南面の屋根に乗っていました。瓦葺き屋根でしたが、温水器の下やその周囲はパネルの陰になり大量の雑草と苔が生えていて、屋根材や温水器の経年劣化とメンテナンス不足が雨漏りの原因でした。
 結局温水器を撤去し、南面屋根の垂木・野地板・ルーフィング・屋根材全てのやり替えとなりました。報道や広告では太陽光発電機で屋根面は傷めないだとか、荷重に関しても分散荷重の為、問題ないと言われているようですが、どのような環境条件の設定で、どれだけの期間を費やして確認をされたのか理解に苦しみます。


<補助金>

 今、政府は太陽光発電等の設置に対し補助金を出し推奨しています。私共も太陽光発電に関心を持ち、取り入れようとして研究し、確認作業を続けて15年以上経ちますが、前段で書いた返答や説明がなく、基準があいまいな為、今のところ新築・既存住宅のどちらにも施工に至った事実はありません。それは、発電機材の優良化は進んでいても、建物への配慮という観点では、政府もメーカーも殆ど変化が無いからです。又、弊社の様な末端の事業者がそれらの事柄に口出ししても、政府方針が打ち出された段階ですぐに対応し、一旦休止してでも安全安心を確保すること自体、事前の考慮不足を露呈するだけで、税金を使用してでの促進に対し責任の取りようがない為、聞かないふりをしていると思われます。只、この様な事例はこの業界には多くありますので、気をつけていただきたい。


<メンテナンス>

 少なくとも太陽光パネルを木造の勾配屋根の上に乗せる場合の対応は、建物の構造上の問題だけでなく、太陽光パネルを載せたことによる建物全体のコストを含めたメンテナンス面もしっかり検討すべきだと感じています。(但し、RC造、S造等の耐用年数や下地材が明らかな建物の陸屋根に、専用の正しい防水処置の上にアルミ鋼材の土台や枠組みに載せる場合は可能で、大変有効と考えています。逆に、一般住宅の木質系購買屋根ではなく、新規建築のビルやマンション等に補助金を出して、原則的に取付義務化を提言する位の姿勢があってもよいのではと考えます。)


<電力買取制度>

 もう一点、電力の買取制度にも大きな問題点が隠されています。太陽光発電の保証期間と耐用年数から、逆算したように買い取り価格及び補助金が設定されているように感じるのは私共だけでしょうか。
 例えば、太陽光発電の買い取り価格は40円台、風力発電の買い取り価格は50円台と仕入れ価格が高すぎます。しかし、石炭等の火力や水力の発電原価は10円前後だと聞いています。
 電力国民の生活必需品ですから、仕入れ価格や製造原価が高くても、その価格に必要経費を載せるだけで販売価格として提供出来るシステムになっています。
 しかし、企業努力の無い中での必要経費は全て国民負担とされ、太陽光に発電に代表される電力の買取価格まで国民負担を強いられる事に、憤りを感じます。ドイツでは既にその事が問題とされ、不公平感是正の為の動きが市民からの活動ベースで国家の問題として解決の為の思考が始まっています。
 今は電力不足と称して、国家の危機の様な風潮から、原子力発電に意図的方向性を感じます。震災の後始末は別にして、電力需給が落ち着いてくると、必ず民間電力の買い取り価格は大幅に下げられてしまうと予想します。民間は奨励された発電システムを取り入れ、大金を掛けても採算ベースに乗っていると喜んでいる報道を見ますが、いずれ発電システムの維持管理が出来なくなり、設置した設備を放置しゴミの山と化してしまうのではないかという不安もあります。
 一般企業では、国内では独占禁止の法則から競争原理が働き、相当な経営努力が必要となり、コスト削減と販売価格の設定、環境への配慮、保証体制の徹底が要求されます。電力やガス等の生活必需品以外の商品類は、国内だけでなく海外企業との競争が激しく、今日を生き抜くことに必死です。


<設置から回収まで>

 弊社は太陽光発電システムそのものを否定しているのではありません。そのシステムを発展させなければならないならば、開発し販売している企業や、推奨している政府や行政が、景気回復や、電源確保といった観点だけでなく、設置条件への具体的配慮やそれに伴う徹底的な指導・研究も行うべきだと思うのです。それが出来ないならば、政府や行政はご都合主義の余計な口出しや、訳も分からない誰の為の物か分からない補助金等の名目で場当たり的に税金を使わないでいただきたいものです。
 先にも自然エネルギーの推奨のところで述べましたが、例えば、原子力発電に関しても放射性廃棄物の最終処分場は日本の何処にもありません。
 最終処分場も確保しないどころか、中間処理にも大きな問題を抱え、その対応に未来が見えないままに原子力発電の研究開発や推奨をしている日本は、世界有数の原子力発電先進国と言えるのでしょうか。
 他方では使用しない火力発電所等は予備の発電所と称し放置され、再利用には大量の資金が必要となり、これも国民負担となる事でしょう。
 以前の耐震偽装事件の様に設計士や関連会社に責任の全てを被せ、マスコミもそれを助長し、国会で証人喚問までして、本来、国や行政の根本的な対応や関連する法律に大きな問題・不備があった事柄に蓋をし責任逃れをされるのだろうと感じています。この様に、反発の出来ない弱者をさらし者にしたり、偏った報道や国策を国家の為として弱者に負担や切り捨てをして堂々としている様には憤りを感じざるをえません。国民は何故黙っているのか不思議でなりません。


<2014年4月作成、2014年11月現在確認済>

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