境内に残った南次郎と倫子は二人の少年に引きづられていく息子を見つめていた。
その瞳には胸中の思いを語るかのように複雑な色が窺える。
「アイツ等がそうなのか?」
「ええ、恐らく」
倫子は彼等の瞳の中に光る強い意志を思い出していた。
「あの強い意志を宿す瞳。そして纏う気質。上手く隠してはいるけれど、アノ人に良く似ているわ」
懐かしそうに、けれど哀しさを含ませながら脳裏に焼き付いて離れない過去を思い浮かべる。
大事なものを喪い、別の大事なものを授かった。決して忘れることなど出来ない。
「俺は見分けはつかねぇ。だが、アイツ等は悪いヤツ等じゃねぇと俺の第六感は感じてる」
いつものふざけた感じは全く見えず、サムライと呼ばれていた試合の時の真剣さが出ているのか。
「そうね。私もそう思うわ。見守りましょう。可能な限り」
「あぁ」
南次郎は倫子の肩をそっと抱き寄せた。
第一章 −完−