青春探偵事務所2 1


  



 暗闇の中に、悲痛な声が聞こえる。

 誰の声だろう。

 知っている……、大好きな人の声だったような……。

「きり! きり! 目を開けてくれっ!」

 はっきりと耳に聞こえてきた声にリョーマは目を開けた。

「っ……な、なに?」

 目を開けると、そこは驚くほど鮮明な赤が一面を染めていた。初めは夕日の光かとも思

ったが、窓の向こうからは細い月が見て取れる。

 では、この赤は一体なんなのか、とリョーマが目を細めていると、

「きり、お願いだから、目を開けてくれっ!」

 その声がした方に目を向けてみると、そこには二人の男女がいた。

(誰だっけ?)

「……ねぇ」

「こないでくれっ」

 二人に近寄ろうとしたが、悲痛な男の声にリョーマの足が止まる。よく見ると、男の腕

の中には女性が静かに横たわっていた。

(知っている……。この女性を俺は知っている……!)

「……きり姉?」

 思い出した名前を呼んでみるが、きりはぴくりとも動かない。

 ふと、握り締めた手が、何かで濡れているのに気付き、目の高さまで持ち上げてみる。

「…………」

 ポタ、ポタと、指の隙間から滴り落ちる赤い滴。

 それは、部屋一面を染める赤と同じもの。

「     っ!」

 それがきりの流した血だと理解した瞬間、リョーマは声にならない叫び声をあげていた。











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