always 9


  



 手塚が去ると不二は意識をリョーマに戻した。

 腕をゆっくりとリョーマの身体に回し、優しく包み込むように抱き締める。そ

の行為に対してリョーマは全身をビクッと振るわせた。

「怖がらないでリョーマ君。本当にごめんね。そうだよね、リョーマ君は何も悪

くないよね。僕がリョーマ君をからかったりしたのがいけなかったんだよね。リ

ョーマ君が怒るの当然だよね。本当にごめんね」

 不二はとても優しい声で何度も何度もリョーマに謝った。

 リョーマは恐る恐る自分の手を不二の背中に持っていき、そして、抱き締めた。

「許してくれるの?」

 不二もまた恐る恐るという感じでリョーマに尋ねる。

「……俺も、ごめんなさい。周助だけが悪いんじゃないのに全部周助のせいにし

た」

 不二の胸に顔を埋めたままリョーマは不二に自分の非を謝った。

「うん。じゃあ、お互いにごめんなさいだね。リョーマ君許してくれてありがと

うvv」

 不二はリョーマが許してくれたことで本日久しぶりの心からの笑顔を見せた。

そして、嬉しさは抑えきれるはずもなくリョーマのサラサラの黒髪にキスを落と

した。

「ちょっ……何すんの!」

「だってリョーマ君が許してくれたから嬉しくて♪」

「……アンタやっぱりバカじゃないの?」

「うん。僕はリョーマ君に対してだけはバカになるんだ」

 不二の言葉にリョーマはもう返事をする気力もないほど脱力した。そして、不

二と仲直りできたことにホッとして、そのまま道路に座り込んでしまった。

「リョーマ君大丈夫!?」

「ホッとしたら腰が抜けた……」

 自分の状態が余りにも恥ずかしくて、少々ぶっきらぼうになるのは仕方ない。

 不二はクスッと笑みを零した。

「笑うなっ!!」

「笑ってないよ。やっぱりリョーマ君は可愛いなぁ〜と思ってね♪」

「よけい悪いじゃんか! 俺は可愛いなんて言われてもちっとも嬉しくない!!

やっぱり周助なんか嫌……うわっ!?」

「でもね。僕は大好きだから」

 リョーマの言葉の途中で、それ以上言わせないようにリョーマを抱き上げた。

所謂お姫様抱っこで。

「何すんの!!」

「リョーマ君歩けないでしょ? その状態で僕の家まで歩くことなんてできない

から、僕が抱っこしていってあげるvv」

「い、いらない。そんなの絶対いらない! てか、俺の家目の前じゃん。何で周

助んちまで行かなきゃなんないわけ?」

 リョーマは必死で断るが、不二がそれを聞き入れるはずもなく、不二の家に向

かって足を進める。

「周助っ!!」

「何?」

「何じゃないだろ!!」

「だってリョーマ君と二人っきりで過ごすために、母さんは父さんの所に、姉さ

んは彼氏の所に行ってくれたんだよ? リョーマ君は二人の好意を無駄にするの

?」

 そんな訳ないよねという周助の心の声がリョーマにははっきり聞こえていた。

そう、リョーマに選択権など最初からなかったのである。だから、何か仕返しが

したくてない知恵を絞って考えてみるのだが結局は何も思いつかず、いつものよ

うに我侭を言うことで自分を納得させる。

「茶碗蒸しと豆腐の味噌汁と焼き魚と炊き立ての御飯」

「うん、分かった。お安い御用だよ」

 不二はリョーマの言葉から全てを理解したのだった。











 不二の手料理をお腹いっぱい食べ、ゆっくりお風呂に入ったリョーマは、本日

たくさん泣いたためか午後九時過ぎには夢の住人と化していた。

 不二はいつものように自分のベッドにリョーマを寝かせ、自身もその隣に滑り

込む。そして、部屋の電気を消すが、眠ることはせず、とても優しい瞳でリョー

マの年相応のあどけない寝顔を見つめている。

 どれくらいそうしていたのか、ふと時計に目をやり、針が11時57分を指してい

るのを見ると、

「せっかく気持ち良さげに眠ってるんだけど、ごめんねリョーマ君」

 まだ眠りの海を漂っているリョーマに一言謝り、少し強めの力で身体を揺すり

リョーマを起こす。

「う〜ん。……何? しゅ…すけ」

「ごめんねリョーマ君。でも、どうしても僕が一番最初に言いたかったから……」

 目的語を省いたまま不二は言葉を一旦切る。

「……?」

 不二が何をしたいのか全く分からなかった。寝起きなので当然といえば当然な

のであるが。

 不二の目は時計の秒針に向けられていた。それが6の数字を通ると時計から視

線をリョーマに戻す。

「しゅ……」

 リョーマが不二の名を呼ぼうとすると唇に不二の人差し指がそっと当てられた。

リョーマの頭はますます混乱する。そして、秒針が丁度12の所に来ると不二は満

面の笑みを浮かべ、

「誕生日おめでとう」

「そっか……。俺誕生日なんだ」

「そうだよ。13年前君が生まれた大事な日だよ」

「もしかし……なくても、それ言うために起こしたの?」

 呆れたように不二を見つめる。

「当然でしょ。僕以外の人間が一番先に君の誕生日を祝うなんて、たとえ君の家

族だろうと許せないからね」

「アンタまじでバカ。俺もう寝るから。おやすみ」

 リョーマは毛布を頭からスッポリ被って再び夢の中へと入っていった。

「おやすみ、リョーマ君」

 リョーマの誕生日を一番に祝うことができ、満足すると不二も今度は夢の住人

と化す。

 不二が寝入ったのを見計らって、先に寝たはずのリョーマが毛布からヒョッコ

リ顔を出した。その顔は微かに赤く染まっていた。そして、不二が完全に寝てい

るのを確認すると、触れるだけのキスを不二の唇に落とした。

「しゅうすけ、ありがと。大好きだよvv」

 そっと囁くと、不二の胸元に顔を埋め、リョーマも今度こそ本当に眠りについ

た。







 リョーマが初めて自分から不二にしたキスを知っているのは、キスした本人で

あるリョーマと、カーテンの隙間から覗き見していた夜空に煌々と輝く星々とお

月様だけであった。










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   ◆◆コメント◆◆       これにて管理人の初の不二リョ終了♪       スランプに陥り、ネタに尽きたとはいえ……       今もそんなに変わっていないのですが、       文章がなんとも……(−_−;)                    まぁでも、二人は結局ラブラブ(死)ということです。       この時は本当に不二リョオンリーで突っ走ってましたから(笑)       その後色々とリョ受けに手を出して、今に至るわけですね。       サイト作るなんてこの時は一切頭になかったはずなのに       どこで道を変えたのか…… 元相方の影響と前の会社の所為であろうとは思うのですがね。              なにはともあれ、最後までお付き合いありがとうございました♪                2005.09.20 如月水瀬