『あーっそれオレのハンバーグだってばよ!』 『そんなん知るか、ドベ。』 『あーもうっうるさいわよ、ナルト!』 『…三人とももう少し和やかにご飯を食べる気はないのか?おかわりはまだあるんだから。…サスケ、 お前の時ももしよかったらみんなで祝おうな。』 『……ありがとうございます。』 いつものやりとりで賑やかに、だけどいつもと少し違うメンバーで楽しく食卓を囲んだのは少し前。 しかし今、数時間前の喧騒が嘘のように、イルカの家は静まり返っていた。 「あーあ。寝ちまったか。」 食器を洗う手を止めて、イルカは振り返った。しばらく前にイルカがサクラを家まで送って行ったので、 眼前にはナルトとサスケの二人のみ。思い切りはしゃいだせいで疲れが出たのだろう。ナルトは卓にう つ伏せてすでに夢の中だった。 サスケも眠いのだろう、しきりに目を擦っている。 「サスケ。眠いなら泊まっていけばいい。布団もあるし。」 「…ども。」 必要最小限の謝意を表したサスケは、小さくあくびをすると眠りに引き込まれていった。 来客用の布団を敷き、二人を寝かせてやる。この季節になるとかなり夜は肌寒い。風邪をひかないように しっかりと掛け布団も掛けてやった。そして、背後の見知った気配に眉を顰める。 「…窓から入るのはやめてくださいと、この前お願いしたはずなんですけど。」 「あ〜そんなこともありましたねえ。」 ちっとも反省していない様子で飄々と言い放ったのは、いつの間に入って来たのか、イルカの背後に立ち にこやかに(イルカに言わせると胡散臭く)微笑むカカシだった。 「火影様の護衛はもういいんですか?」 カカシは今日の慰霊祭の式典に参加した火影の護衛の任務についていたのだ。 「ええ。もう屋敷の方へお帰りですよ。ついでに軽くご飯頂いてきちゃいました。」 「あんた…火影様にご飯たかったんですか。」 呆れ顔のイルカのなだめるために、カカシは急いで酒瓶を取り出した。もちろん火影を脅して入手した事実は ひた隠して。 「まあまあ先生。これで機嫌直してくださいよ。極上品ですよ。」 そう言うと、布団に寝かされている二人を見て微笑む。 「あーあ。幸せそうに寝てますねえ。オレも祝ってやりたかったなあ。火影様の命令さえなければ、オレもここ でのんびりとこいつら相手に過ごすつもりだったのに。一日中イルカ先生と過ごせるなんてうらやましいなあ。」 「何言ってんですか。あなたは上忍でしょうが。仕事優先です。」 穏やかに、それでいて困ったように笑うとイルカは脱いでいた支給品のベストを羽織る。 「カカシさん。晩酌の前にちょっと付き合って欲しい所があるんですけど。」 「いいですよ。イルカ先生とならどこへでも。」 笑ってカカシが返す。 どこへ行くのかなんて、言わずもがなだ。 |