――イルカが戦場でカカシに再会してしばらく経った頃。 二人はしばらくの間、肩を寄せ合い、座り込んでいたのだが… 「…ちょっと、カカシさん。この手は何なんですか?」 イルカは自分を抱きしめていたカカシの手が、忍服の間からすべり込み、イルカの肌に触れようとしていることに 気づき、嫌そうに不埒な手を引き剥がした。じろりと隣を睨むと、カカシの目が泳ぐ。 「だって、イルカ先生がかわいいこと言うんだもん。」 そう言うなり、先程のチャクラ切れはどこへいったのか、ガバリとイルカを押し倒した。 「あ、あんた何考えてるんですかっ!ここは戦場なんですよ!」 「だって、二ヶ月もイルカ先生に触れてないんですよ?溜まってるんですけど。」 「嫌ですっ!こ、こんな場所でっ」 押し倒された瞬間に自分たちが倒した敵の屍骸が視界に入ったイルカは、冗談じゃないとばかりに暴れだした。 誰だって、死体の側での情交など願い下げだろう。 だが常識はずれの上忍はさらにとんでもないことを言い出した。 「え〜、それじゃイルカ先生、今ここでオレに抱かれるのと、自陣にあるオレの使ってる上忍用の個人テントの 中で抱かれるのとどっちがいいですか?」 ちなみに材質が布なんで、声は駄々漏れですけど。 カカシの言葉を聞いたイルカの顔が真っ青になった。嫌だ。それだけは絶対に嫌だ。 「…てな訳で、イルカ先生いいでしょ?」 首筋をきつく吸われ、わずかにのけぞったイルカは真っ赤になりながら、かろうじて返事を返した。 「……はい…」 結局、カカシには敵わないのだ。 いつにないカカシの容赦無い攻めたてと愛撫にイルカは深く後悔することになる。 カカシとイルカが無事に戻ったとの知らせを受け取ったアスマは安心し、静かにタバコの煙を吐き出した。今回の 城落としでアスマは隊長として責任ある立場にあった。 長引いた戦も、イルカの持ってきた見取り図があればすぐにも決着が着くだろう。木の葉は、甘くない。 「カカシ、イルカ。入れ。」 アスマは、司令部代わりとなっている自分のテントに二人を招き入れた。入ってきたのは、チャクラ切れを起こした というわりにはピンピンしているカカシと、何故かぐったりとしているイルカであった。聡いアスマには何があったか 見当がついた。いや、知らないままでいたかったが。 (あーあ、考えたくねえ…) 賢明にも無言を守ったアスマに頭を下げ、目的を達して満足げなカカシを横目で睨み、イルカは心に誓う。 (もう、心配なんて、絶対しないっ) テントの入り口から覗く戦場の空が、腹立たしいくらいに青かった。 <終> |