1 「…何でいるんですか!」 夜遅くに仕事を終えて帰宅したイルカは、自宅のアパートにカカシの姿を見つけて絶叫した。 「いるに決まってるじゃないですか。アナタの恋人ですもん。」 「そんな立場を許した覚えは全くありません!」 見事に不法侵入を果たした男は、けろりとした表情で居間に居座っていた。例の卑猥な本を手にしている。 イルカの怒りを含んだ言葉は、この男には通じなかったようだ。 「そんなの今更でショ?」 言うなりカカシは、入り口で立ち尽くしていたイルカを抱き寄せた。そのすばやい動きはまさに上忍。 寸分の無駄もない。当たり前のように唇を奪われたイルカは、ただ呆然としているしかなかった。 家にまで押しかけてくるとは…安らぐ暇さえない。 愕然としていたイルカは、カカシの手が不埒な目的を持って肌を這い出したのに気づき、急いでその 腕から逃れようともがいた。しかし、カカシの腕はびくともしない。 「なっ…ちょ、ちょっとやめてくださいっ…!」 「ヤです。さっきの言葉、オレ傷つきました。責任とってくださいね。」 ニッコリと微笑む顔が怖い。瞳は笑っていないのだ。 首筋を舌でなぞられ、歯を立てられたイルカは悲鳴を上げた。 「ちょっと待ってくださいっ。俺、食事もまだなんですけど…!」 こうなれば、食事でも何でもダシにしてこの危機的状況から抜け出したい。だが、カカシは甘くなかった。 「嘘ばっか。かすかにだけどラーメンの臭いがする。どーせナルトと仲良く一楽にでも行ってたんデショ?」 鋭いカカシの嗅覚にイルカは青ざめた。イルカの目論みは脆くも崩れ去った挙句、嘘をついたことにまで気づかれている。 そして、容赦なく寝室に連れ込まれた。ベッドに投げ出されると、男二人の体重にベッドが悲鳴を上げた。 「嘘つきにはお仕置きを。イルカ先生、完徹でもいってみよーか。」 額宛と口布を外したカカシの色違いの瞳に見つめられたイルカは、サラリと告げられた言葉に首が 千切れんばかりに頭を振った。 「いやです、絶対嫌だ。」 しかし、容赦なくカカシの手がイルカの額宛と髪紐を外していく。まっすぐの豊かな黒髪が、ふわりとシーツに広がった。 それに目をやったカカシが、満足そうに毛先をもてあそぶ。 「大丈夫、この前みたいに薬がなくても感じさせてあげますから。安心してください。」 何が安心だ、というイルカのもっともな反論は、カカシに唇を塞がれて途中で消えた。 |