5 「ああっ、カ…っ、いやぁっ…ふっ」 「…イルカ先生。気持ちイイ?」 カカシは抽挿を繰り返しながらイルカに尋ねる。カカシの腰が動くたびに、イルカから嬌声が漏れた。 (それにしても乱れるねえ…やっぱりクスリが強力だからかな) 普段のアカデミー教師としての凛然とした姿とはかけ離れた艶のある姿に、カカシは驚かされていた。 均整は取れているが思っていたよりも細身で傷だらけな肢体は、カカシの吸い跡もそのままに桜色に染まり、 熱を持ち、潤んだ瞳には悦びの色が宿る。シーツに散った黒髪までもがその痴態を際立たせる。 カカシのイルカに対する執着は決して嘘ではなかった。今まで掃いて捨てるほどの女を相手にしてきたが、 本当に手に入れたいと思ったのはイルカただ一人だ。だからこそ手に入れられるならどんな手も厭わなかった。 人目を憚らずに好きです、と迫ってみたりもした。けれども彼は全くなびかなかった。その揺るがなさがいいと 思った。そして案外彼がただのお人好し中忍とは程遠い性格であることも知った。 そしてアスマから聞いた元暗部という彼の意外な真実もカカシの興味を惹いた。 ただの軽々しい遊びなんかのためにイビキに頼み込み、周防の薬を譲ってもらおうなどとは思わない。連中に 関わると高くつくのだから。 「はぁ…んっああ、イイ…っ!」 無意識にカカシの肩に手を回したイルカの上げる喘ぎ声に、思考を戻したカカシはさらにスピードを上げて イルカへ挿入を繰り返した。突き上げられる快感に酔い、ポロポロと涙をこぼすイルカに優しく口付け、カカシは 甘く囁く。 「イルカ先生、大好き。」 そして二人同時に達する。イルカの体がずるりと傾ぎ、カカシが抱きしめた。 「…イルカ先生ってすごくそそりますね。ねえ一晩中付き合ってよ?」 身だけでなく、心も必ず手に入れて、カカシ無しではいられないようにしてみせる。カカシは一人うっそりと笑う。 悪魔の囁きは長い夜の饗宴の序章にすぎなかった。 爽やかな光が窓から注ぎ、白いシーツに反射する様はなかなかに清々しいものなのだが――シーツの上で上忍に抱きしめられ たまま眠りに就いていた中忍は起きたとたんに怒りで身を震わしていた。 「…畜生…」 体が重い、喉が痛い、おまけに言葉にしたくないようなところも痛い。体中至る所に吸い跡が散らされている。 「先生、すごくよがってましたねぇ〜」 「お、覚えてません!」 「あれ、もしかして記憶が飛んでるの?」 にやにやと満足げに笑うカカシに後ろから抱きしめられ、イルカは羞恥と怒りで真っ赤になった。もはや振り払う元気さえない。 実のところ自分がどれだけ乱れたのかあやふやにしか記憶がない。というか思い出したくなかった。ただ、自分がカカシのいい ように抱かれたのだろうとだけは推測できた。考えただけで憤死しそうだ。 「…あっ仕事!」 枕元にある時計は昼近くを指している。今日は受付の仕事があったはずだ。しまった、と慌てたイルカが痛む体をなんとか 動かして身支度を整えようとベッドから起き上がったとき、カカシの腕が動いてイルカを再びベッドに引きずり込んだ。 長い腕がぎゅうぎゅうとイルカを抱きしめる。おまけに首筋にマーキングまでされた。 「な、何すんですか!」 「あんた、オレより仕事を優先するんですか。いい度胸ですね〜」 至極面白くなさそうなカカシの声にイルカは顔を引きつらせた。どこか剣呑な響きさえある。 最初に落ち度があったのは自分だ。たった一度のミスがこの非常識な上忍にとっての千載一遇のチャンスになってしまったのだ。 あたかも蜘蛛に捕まった蝶の如く。――糸から逃れ出る日はあるのだろうか。 やや現実逃避しかけたイルカは、必死に回らない頭で考えた。とりあえず周防を一発殴らないことには気がすまない。それだけを 心に誓い、再び眠りに就く。情事の疲れとあいまって、眠りはすぐに訪れた。 (全て夢だったことにならないかな…) 翌日イルカが、カカシが『イルカ先生はオレの腕の中で眠ってるんで欠勤です〜』と職場に連絡をよこしていたことを知って 絶叫するのはまた別のお話。 |