Review No.V-014
M a n a m i K o m o r i
ユ・メ・ノ・チ・カ・ラ

KICA 647(キングレコード(スターチャイルドレーベル))
マミ姉とマミ姉のリスナーが生んだ
「奇跡のHealing Wind」
マミ姉14枚目のスーパーベストは、本当に「Healing Wind」と言っていいでしょう。ただし、私が考えた
『ユ・メ・ノ・チ・カ・ラ』
のコピーには、その前に
「リスナー」
と
「奇跡」
の単語が付け加わっています。このアルバムが世に出るためには、マミ姉が今までトーク・ジョッキーを続けている必要があり、そのためには、リスナーのみんながマミ姉を応援し続けていなければ実現しなかったことだからです。
マミ姉の頑張りとリスナーの応援がこれだけ長く続いたことが
「奇跡」
であり、マミ姉だけでは成しえなかっただろうということで、
「リスナー」が生み出したアルバムでもある
わけなのです。
もっとも、マミ姉の頑張る姿を見れば、リスナーが応援するのは「必然」かもしれませんが。それより、
純粋すぎるマミ姉がこの世界(業界)に今もいてくれていることのほうが
「奇跡」
なのかも
しれませんね。
『
Be St
ation』
もベストアルバムだったわけですが、今回のスーパーベスト
『ユ・メ・ノ・チ・カ・ラ』は少々テイストが違っているように感じました。
『
Be St
ation』
は
「ひたすら頑張ってきたマミ姉からの精一杯のプレゼント」
という感じがするのに対し、
『ユ・メ・ノ・チ・カ・ラ』
は
「夢に向かって頑張ろうというメッセージをマミ姉がじっくり伝えようとしている」
ように感じました。大人になったんですね・・・って、もともと大人でしたね。
そういえば聴いていて、
ストーリー性
のようなものを感じました。
前半は
「元気出して歩き出そう」
、
中盤は
「夢に向かって努力」
、
後半は
「辛くても最後までやり遂げよう」
と続きます。そして、
最後は
「『夢』の意味と自分なりのゴールを見つけよう」
で締めくくり。
所々に、
「疲れたときには休んでいいよ」
といった感じの曲が入っていて、今までのマミ姉のアルバムの中で、
一番落ち着いて聴いていられる構成
でした。
中でも、
新曲
『それは いつか 咲く日のために』
の中に、
「負けないこと それは勝つだけじゃない 続けていくこと・・・」
という歌詞を発見したときには、私自身
「静かな驚き」
を覚えたものでした。もしかしたら、マミ姉がこの気持ちを持ち続けていたからこそ、
ラジオ番組
『mamiの
RADIかる
コミュニケーション
(以下、ラジコミ)
』
が20年間続いたのではないか
。他の番組と比べて
「勝つこと」
を意識していたら、伝えたいことを心の奥にしまいこんでしまって、結果としてマミ姉の魅力が失われていたかも
しれないのです。
それにしても
『きゅんきゅんのパワー』
は、
「恥も外聞も捨ててマミ姉120%」
といった感じの曲
ですね。ちょっとどころか相当誤解を招きそうな表現ですが、一度聴いてもらえればその意味がわかると思います。ボイスパワーを全開放したような曲調と、マミ姉が伝えたいことを包み隠さずストレートにぶつけた歌詞が絶妙にマッチしています。この1曲のために『ユ・メ・ノ・チ・カ・ラ』を購入してもいいくらいです。『ラジコミ』の人気コーナー
(という表現は適当ではないのですが、他に良い表現が見つからないので)
「マミのキュンキュン」
と同じ言葉がタイトルに入っているだけのことはありますね。
さてここで、マミ姉の代表曲として定着した感のある
『YELLを君に!』
について、もう一度触れてみたいと思います。
「阪神淡路大震災」で被災された方に向けた応援歌なわけですが、地震の際に私が体験したことについては
こちら
を見ていただくとして、ここでは『YELLを君に!』の歌詞の背景にあった、被災地の状況を少しばかり書いてみたいと思います。
(といっても、歌詞をすべて載せるのは著作権上問題があるので、最低限の引用にとどめますが)
最初の部分は、
地震発生のときの様子
を表現しています。ここは解説の必要はないですね。その後に
「街のノイズが明日を 創り出している」
とあります。この「ノイズ」とは、
工事現場から聞こえてくる音
を表しています。工事現場から聞こえてくる騒音に他ならないのですが、このときばかりは「明日を創る復興の音」だったんですね。続く
「夢は息を潜め・・・」
の「夢」ですが、私はこの部分で、なぜか震災の年の12月から始まった
光の祭典「神戸ルミナリエ」
を思い出します。曲が作られた時期から考えて、マミ姉が「神戸ルミナリエ」を意識しているはずはないのですが、私にはどうしても光のアーチのイメージが浮かんできます。
2コーラス目の最初の
「離れていく人達に 唇かみしめた日も」
は、
震災で自宅が全壊した人たちが、親類を頼って住み慣れた土地を離れていく様子
が描かれています。残ることを選択した人は、長期に渡り避難所に身を寄せ、その後仮設住宅に移り住んだりしました。身近な人が全員亡くなり一人生き残った人もいました。復興が本格的に進みだした神戸市内の仮設住宅で、将来を悲観し自ら命を絶った人もいました。そんな長い長い「夜」の時期を懸命に乗り越えたとき、何もかも崩壊し瓦礫と化した街にも人々の希望が残っていたことに、あらためて気付いたものでした。
「繋がった線路・・・」
は、長い復旧工事期間を経て、
大阪〜神戸間の鉄道が次第に運行区間を広げていった
ことを表現しています。主要な鉄道がすべて復旧したときには、自分の通勤ルートとはまったく関係なかったにもかかわらず、すごくうれしかったのを覚えています。線路が繋がることが一つの復興の象徴に思えたのでしょうね。
というわけで、私なりの解釈で少しばかり書いてみました。阪神淡路大震災の記憶を少しでもとどめておくために、ここに記録しておきたいと思います。
非常に長い文章になってしまいましたが、読んでいただきありがとうございました。最後にすばらしい楽曲を残して逝かれた
岡崎律子さん
について。
本当に、故・岡崎律子さん作曲の楽曲は、女性らしい柔らかいメロディで心にしみわたってきますね。アルバム最後の
『Presage』
という曲は、私は今までそれほど大好きというわけではなかったのですが、今回あらためて聴いてみて
『ユ・メ・ノ・チ・カ・ラ』
という主題を見事に表現したすばらしい曲だと思いました。彼女はもう新しい夢を追い求めることはできませんが、彼女が作った曲はマミ姉が夢に向かって頑張る力に変わって、これからも生き続けることと思います。
岡崎律子さんのご冥福を心からお祈り申し上げます。
(2004/10/31)
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