1)所見ポイント
a)左室−大動脈間圧較差の程度は(
補足説明2)
この圧較差が50oHg以上になると手術対象となる。
b)左室壁の肥厚はないか
c)上行大動脈の狭窄後性拡張はないか
d)弁尖の器質的変化、弁輪の石灰化の程度
器質的変化の程度によっては交連切開術などの形成術だけでは血行動態の改善が望めず大動脈弁置換術となる。
e)疣贅等の異常構造物はないか
f)大動脈弁の弁尖数
二尖弁などの先天性の狭窄の可能性もある
g)左室壁運動異常はないか
h)腹部大動脈血流パターンの立上り遅延はないか
狭窄の程度が強くなると腹部大動脈血流パターンの立上り遅延が認められるため胸壁からの超音波像が描出困難例でもある程度の評価は可能となる。ただし大動脈縮窄症があっても同様の血流パターンを呈するので注意を要する。
2)症例1
本例では観察ポイントのc)に異常を認める、すなわち大動脈弁のエコー輝度の増加と開放制限が認められる(図12)。
所見ポイントa)の圧較差は約97oHgである(図13)。
b)の左室壁厚は約14oと肥厚しているまたg)の左室壁運動異常は認めない(図14)。
c)の狭窄後性拡張は上行大動脈径が約38oと軽度の拡張が認められる(図15)。
d)の弁尖、弁輪の器質的変化に関しては弁尖の癒合硬化があり収縮期に開放しているのは右冠尖と左冠尖間のみである(図16)。
e)の疣贅等の異常構造物エコーは明かなものはなく、f)の弁尖数は図19から3弁尖と考えられる。
h)の腹部大動脈血流パターンには立上り遅延を認める(図17)。