2010年の俳句                       

1月
こたつ部屋日毎に物の増しにけり
お年玉子らにも及ぶ大不況
恵方へと欲の嵩張る初詣
繰り言を猫に聞かせて日向ぼこ
2月 冬うらら天満宮のみくじ花
小雨打つ山の露天湯春隣
雪予報「所により」に選ばれる
S席は猫に占められ日向ぼこ
3月 謂れありそうな雛壇 京町家
成り難し晩学抱え春炬燵
しな垂るる嵯峨野竹林終の雪
梅林や等間隔のツアー客
4月 雨しとど祇園の溝の花筏
草むしり十指は土を這い回る
春昼や釣り糸動く気配なし
踏石の踏むをためらう花の塵
5月 若竹や尼僧の指の細長し
糸柳川辺の風にあやつられ
菖蒲湯の旗ひるがえる山の宿
明け易し足早に過ぐ夢の母
6月 夏燕 一気に空をめくりおり
万緑や 石仏の顔みな違う
六月の庭 雑草の大威張り
一駅は歩いてみよう梅雨晴れ間
7月 ブブゼラは羽音に似たり夏の陣
夕立去り洗い晒しの雲まばら
白壁の眩しき白さ梅雨明けぬ
十二回裏に期待の生ビール
8月 老若を問わぬ蚋(ぶよ)なり我が血吸う
かなかなや里に灯りの二つ三つ
旅ひと夜 見よう見まねの盆踊り
闇に生(あ)れ闇へと果つる遠花火
9月 万物に心地良きかな秋の風
会釈して近寄りたれば捨て案山子
一村や暮れそうで暮れぬ曼珠沙華
胃の中に濃い茶流して処暑の夜
10月 寄る波も引く波もあり芒原
過疎一村ロン毛茶髪の案山子立つ
程ほどの吉引き当てて神無月
夜目遠目村人ふやす案山子かな
11月 逆縁の葬列の鐘村しぐれ
成るように成らぬ手習い秋の夜半
残像は遠き日のこと秋入り日
12月 恙なき日々の幸せ日記果つ
水害の傷を晒して山眠る
風邪に臥し見えざる埃見えてくる
列島の揉めて捻れて年詰まる