エコファンド vs. サステイナビリティ・ファンド(社会的責任ファンド)


提言

1.投信会社 又は投資信託販売金融機関は、各々の個人投資家の価値観に対応した、且つ
 
社会的責任を自覚した投資信託である 「社会的責任ファンド」或いはサルテイナビリティを
  意識した投資信託である「サステイナビリティ・ファンド」を  販売すべきである。


2.一般投資家がそれらのファンドを購買する際に  適切な判断が出来るように、
投信会社  又は投資信託販売金融機関は、それらのファンドの組み入れ銘柄を決める際の
  ふるいにかける基準や、組み入れ銘柄名を 明らかにする事は当然であるが、
  より重要なことは
  株主
議決権行使に関する ガイドラインを策定し、その内容を公開する事である。

3.政府は、社会的責任感を持った投資家を育成する為に、株で 儲けたお金の課税方法を
  欧米で一般に行われている申告分離課税方式に一本化する一方、
  株で損したお金を経費扱いとする税制に変更すべきである。


下記は、勉強会のまとめです。

太郎「最近、エコファンドっていう言葉をよく耳にするけど、それって どんな投資信託なの?」

花子「それはね、環境に関して責任のある投資をするということなの。
    言いかえると、投資のゴールと、環境に対する配慮との調整を うまくするという事なの。」

太郎「要するに、お金儲けと環境に対する配慮のバランスをうまくとるということ?」

花子「まあそういうことね。」

太郎「花子さん、エコファンド先進国と言われている米国の事情を しってたら教えてよ。」

花子「講師料高いわよ。まあ、いいか・・・。
    米国では、一般的にSocially Responsible Investing(SRI)と言われているわ。
    すなわち社会的責任を自覚した投資行為と呼ばれているの。
    社会的責任の中に、環境問題に対する責任も入っているの。

    サステイナビィリティのところでも説明しているように、
    サステイナブルな社会を構築するには、環境問題だけを一元的に捉えるのではなく、
    経済面、社会面との結びつきの強さを考えながら 総合的な視野で、環境問題に
    対処しなければならないの。

    そうゆうサステイナブルな社会を創ることに貢献するファンドを
    欧米ではサステイナビリティ・ファンドと呼んでいるの。」

太郎「そう言われてみれば、日本では、環境問題が起きた場合、環境面だけを考えて対処する傾向が強いよね。」

花子「まあ、そうゆうこと。だから、今からはいわゆるエコファンド
    じゃ無くて社会的責任ファンドとして話を続けるけどいいかな?」

太郎「うん、どうぞ。」

花子「まず、アメリカの歴史から、SRIというのを考えてみると、何百年も前に、クエーカー教徒(絶対の平和主義を
    遵守するとされている)による奴隷貿易でもうけたお金は受けとらないという事があったの。
    また、1920年代にほとんどの教会は、積み立てられた寄付金を酒、たばこ製品を製造している企業に投資しなかったの。
    
    ごく最近のことを言えば、アパルトヘイト時代の南アフリカへ投資している会社を投資の対象からはずしていたわ。
    その甲斐もあって、太郎くんも知っているように、南アフリカは長くかかったけど、やっと民主的な政府ができたの。」

太郎「へー、やっぱり、お金の力ってすごいんだ!
    ところで、社会的責任ファンドって、どのようにしてできるの?」

花子「ここの所が大切なの。
    ほとんどの人は、まだ社会的責任ファンドを特別な投資信託として勘違いしているみたいね。
    基本的には、今までの投資信託と社会的責任ファンドもかわらないのよ。」

太郎「なんだあ、なんかガッカリだな。」

花子「考えてみてよ。誰も損をしてまで投資しないでしょ、
    いたとしても、損ばかりなら誰も続けないわよね。」

太郎「そうだよね。良く考えてみると、得をするから
    すぐに社会全体に広がって行くんだね。それで?」

花子「社会的責任ファンドは今ままでの投資信託を作る方法に、もうひとつステップが加わっただけなの。
    その追加のステップというのは、社会的責任のふるいにかける作業なの。
    この作業のやり方次第で、社会的責任ファンドが一味も二味もちがった投資信託に生まれ変わることが出来るのよ。」

太郎「その社会的責任のふるいにかける作業っていったい どんな方法があるの?」

花子「まず、ダメなものはダメという、最も厳しいふるいの仕方があるわ。
    例えば、製品を作るために 動物実験をしているとか、
    過去に環境に悪いことをしたという記録があるとか、
    原子力や軍事産業にかかわっているとかいう事があれば、
    一切、投資の対象には含めないということ。」

太郎「そんな事をしたら、利回りがほとんどなくなるんじゃない?」

花子「そうも言えないわ。
    実際、アメリカでは、研究結果が出ているんだけどアパルトヘイト時代、
    南アフリカに投資している会社の ポートフォリオ(投資する会社の目録)と、
    そうでないポートフォリオを比べると、あまり利回りに差異がなかったの。」

太郎「ふーん・・・」

花子「2番目に、ダメなものはダメというより少しゆるい ふるいの仕方があるわ。
    例えば、アパルトヘイトの南アフリカに投資している会社の中でも
    人種の雇用機会均等を奨励して実績をあげている会社や、
    アパルトヘイト・システムの維持に直接的に係わっていない
    製品やサービスを提供している会社を選ぶの。」

太郎「そうか、消費者は製品を買うことで、間接的にアパルトヘイト・システムを維持していたことになるんだね。
    日本でいうと、オウム真理教の販売する激安のパソコンを買うという事は、
    オウム真理教の活動を支持しているという事と変わらないんだね。」

花子「太郎くんも、なかなか視点が鋭くなってきたわね。
    3番目に、各業界でのトップの企業で構成するポートフォリオがあるわ。」

太郎「どういう基準で、トップは決まるの?」

花子「例えば、環境問題への取り組みにおいて一番実績のある会社、
    女性社員の採用、教育、昇進において一番実績のある会社、
    社員の家族を大切にする職場環境づくりに一番実績のある会社などがあるわ。」

太郎「それは、いいことだね。日本も これから少子化に向かうし、
    各地で今おこってる少年問題なんかも 企業がそういう方向に向けば、随分良くなると思うよ。」
 
花子「4番目に、環境に悪影響を及ぼす経済活動をしている会社の中でも、
    違いがあって、一次的的に影響を及ぼしている会社もあれば、
    二次的に影響を及ぼしている会社もあるわ。
    そこで、一次的的に影響を及ぼしている会社を投資の対象からはずすわけ。」

太郎「具体的な例はないの?」

花子「おもしろい例があるわ。
    これは、アメリカのハンバーガー・コネクションと呼ばれているんだけど、
    バーガー・キングが仕入れている牛肉は、熱帯雨林を伐採してできた牧場で育った牛からのものなの。
    一方、マクドナルドは、アメリカ南西部の牧場で育った牛のみを使っているわ。」

太郎「要するに、バーガー・キングは、熱帯雨林を伐採するから、環境に悪影響を及ぼしているというわけだね。
    目くそ、鼻くその議論だね。」

花子「最後に、ふるいにかけるときに、実際の問題と、
    これから おこるかもしれない問題との対決も考慮にいれられるわ。

    例えば、原子力発電の安全性は、電力会社が努力して確保しているけど、
    今後、どんどん増えていく使用済み核燃料の保管場所がなくなるわ。」

太郎「だから、アメリカは、新規に原子力発電所を建設することを止めたんだね。」

花子「それもそうなんだけど、一番大きな理由は、原子力発電の場合、廃棄コストまで含めると、
    他の発電方法に、コスト的に太刀打ちできなくなったからよ。」

太郎「日本では、原子力問題といえば、安全問題ばかり議論されて、経済的な問題は あんまり聞かないね。
    ところで、花子さんが、今、説明してくれた5つのふるいにかける方法とかそれらの組み合わせの方法で
    ふるいにかけたとしても 自分が投資したくない会社

    例えば、ダイオキシンの工場外への流出事件を起こした荏原製作所、
    ずさんな衛生管理を露呈した雪印乳業、
    男女雇用均等法以降も平気で男女賃金差別を続けている住友電工とかが
    ポートフォリオに含まれていたらイヤだよね。」

花子「そんな太郎くんにも、ぴったりの投資信託があるのよ。
    それは、個々の投資家のゴールや価値観に基づいて、組立てられるポートフォリオなの。」

太郎「そんなカスタムメイドのファンドが買えるの!
    日本でも、そういうのが早く販売されるといいね。

    一口一万円からのエコファンドも販売されているので、ひとりでも多くの人が今後日本でも近い将来
    発売されるであろう社会的責任ファンド或いはサステイナビィリティ・ファンドを買って
    日本をサステイナブルな社会になるように貢献できたらいいね。」

花子「それと、消費者がそれらのファンドを購買する際に自分の価値判断に基づいた投資が出来るように、
    投信会社又は投資信託販売金融機関は ふるいにかける方法や、組み入れ銘柄名を
    一般投資家に公開するのは当然としても。

    もっと重要なことは、株主議決権行使に関するガイドラインを策定し、その内容を公開すべきよね。
    そう思わない?太郎くん!」

太郎「うん。そうだね、そうすれば、確かに、一般投資家が現在のような信頼の置けない
    企業の監査役に代わって企業のコーポレート・ガバナンスに関して大きな影響力を持つよね。」

花子「そうすることで、日本をサステイナブルな社会に変革することに貢献する企業数を増やすことが出来るわ。

    さらに、一般投資家が投資した結果 損をした場合
    その損金を経費として政府が認めてくれれば、環境保護、または社会のためなら
    多少、損をしてもいいという投資家を集めることができるわ。」

太郎「花子さん、はやく そういうファンドを作ってよ。」

花子「今年は、エコファンドがもてはやされているけど、遅かれ早かれ本物の社会的責任ファンド或いは
    サステイナビリティ・ファンドがでてくると思うわ。
    その為にも、個人投資家も社会的責任を果たそうと努力している投信会社又は投資信託販売金融機関を
    応援しないとだめよ!」

太郎「ところで、日本にそんな投信会社又は投資信託販売金融機関あるの?
    それでなくても、信託報酬がとても割高なので有名だよ。」

花子「その高手数料で大儲けしているのは事実だけれど、文句ばかり言ってもはじまらないよ。
    なければ、自分達で作ればいいのよ。」

太郎「そうだね。誰かがやってくれるさでは世の中は良くならないよね。」

花子「そうね。 他人任せにしておくと 変革期ではどうしても既得権益者が変革に強く抵抗するでしょ。
    そして、その抵抗があまりにも強力なものだから
    ほどんどの人達は 長いものには巻かれろ式の生き方をいやいやながら 継続させられて、
    日本はなかなかサステイナブルな社会に近づけないのよ。
    そうすると、日本はエコノミックアニマルだから尊敬される国日本にはなりえないのよ。」

太郎「少しでも尊敬される日本にしたいよね!」

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K. Nihei 10/9/2000