Tendance d'eau  vap VPCG-84637 (1997.11.1) \3059
  めぐる水。今、そこにいる私。白鳥由里サードフルアルバム(帯より)

「Tendance d'eau(ドンドンス・ドー)」とは、フランス語で「天丼・素うどん」(白鳥さん談)という意……ではないです。断じて。(笑)

 このCDは「EURO-ROCK PRESS」というCDレビュー誌(?)に紹介されてたり、(管野よう子さんの「song to fly」や坂本真綾さんの「グレープフルーツ」もいっしょに載ってた)、さりげにパリ・レコーディングだったり…、といったいくつかの特色にも裏付けられているように、これまでに出ている4作のアルバムなかでも、一番の出来といっていい、名盤です。

 アルバムのテーマは水。タイトルの「Tendance d'eau」というのは、仏語で「めぐる水」「変化する水」とか「今はそういう状態である水」といった意味。いろんな水がアルバムの中でも歌われています。


1.Beluga−海のカナリア− [4'06"]
 ◇作詞:新居昭乃
 ◇作曲:新居昭乃
 ◇編曲:新居昭乃、保刈久明

「Beluga」というのは「いるか」のこと。
 Acoustic Guitarの音色ではじまる、とってもアコースティックなうた。
 (そのまんまやん…)
 メロディと声のハーモニーが絶妙なんですよね……。もう、うっとり。

 Drumsに渡辺等、Bassに宮田繁男といった名前のあるセッションミュージ
 シャンがさりげに参加してるってのも、凄いよね…。(^^;

 この曲の水:「海」

2.パラソル [3'22"]
 ◇作詞:新居昭乃
 ◇作曲:新居昭乃
 ◇編曲:新居昭乃、保刈久明

  前半のシリアスな感じが、だんだんかわいくなってくのが面白い。
 「くるくるまわる」ってとこは、とくにらぶりぃ。
 すごく白鳥さんさんらしいうた。(*^^*)
 
 この曲の水:「雨」

3.上海より愛をこめて [4'10"]
 ◇作詞:新居昭乃
 ◇作曲:新居昭乃 保刈久明
 ◇編曲:新居昭乃 保刈久明

 ピアノがすごくミステリアスな感じ。Clarinetも好き!
 詩は、スパイとその恋人お話。
 サビでくーっとあがってく、白鳥さんの声の高い声が気持ちいい。
 全体的にすごくかわいらしくて、好きです。

 この曲の水:「海」

4.人魚の入浴 [3'23"]
 ◇作詞:新居昭乃
 ◇作曲:新居昭乃
 ◇編曲:新居昭乃

 このうたは、せつない恋のうた。
 はかなくて、甘酸っぱくて、胸がいっぱいになります。

 そして、謎にもあふれてます。
 ブックレットをみると、「French Murmnrig(Murmuring?:ささやき)&懐中
 電灯/白鳥由里」の文字が…。(^^;
 懐中電灯を楽器にしたんだろうか?(笑)

 そいえば、どっかの記事で面白い楽器を使ったという記事を読んだっけ…
 「どの音が懐中電灯なんだろう…?」と聴いてみるのも面白いかも。(笑)
 他にも「Lid of BOX(箱のふた)」や「Guitar Case」(いずれも、新居昭
 乃さん演奏(笑))だとか、妙な楽器でいっぱい…。

※間奏で鳴ってる音やささやきがそうなのかな…?

 基本的には、やっぱしAcoustic Guitarがいいですね。
 痺れるぅ…(笑)。
 
 この曲の水:「お風呂」

5.Sunnyday's Laundry [3'14"]
 ◇作詞:新居昭乃
 ◇作曲:保刈久明
 ◇編曲:新居昭乃、保刈久明

 すごくわくわくするうた。
 このアルバムのなかでは、けっこう気に入りの曲です。
 ぬいぐるみのくまさんも洗っちゃうってトコがかわいい♪

 楽器的には、Fluteの音色が綺麗でよいですね。
 新居昭乃さんのコーラスも素敵です。

 この曲の水:「洗濯」
6.ちいさな宇宙(そら) [4'14"]
 ◇作詞:白鳥由里
 ◇作曲:新居昭乃
 ◇編曲:新居昭乃
 わたしが一番好きなうた。そして、思い出のうた。
 白鳥さんの声を最大限活かしきったメロディ、新居さん&白鳥さんの
 コーラスとの綺麗なハーモニー。最高ですね。

 ホタルのことを歌ってるんですけど、すごく神秘的で
 言葉も綺麗で、透き通っていて、はかなくて、
 詩も、すごくいいんですよ。

 優しい歌声を聞いてるだけで、すごく癒されます。

 おじいちゃんのお通夜のときも、この曲をずっと聴いてた…。
 お葬式の会場でやったので、そこのシステムをちょいと拝借して
 ボリュームしぼって、流してた。

 祭壇に飾られたユリの花の香りでいっぱいで、
 とても、とても不思議な空間だった。

 それ以来、つらいことがあったときは、よく聴いてますね。
 いまでも。

 この曲の水:「川」

7.アクアマリン [4'34"]
 ◇作詞:新居昭乃
 ◇作曲:新居昭乃
 ◇編曲:新居昭乃

 ピアノの音色に乗せて、せつせつと白鳥さんが歌ってます。
 ささやき系の、消えてしまいそうな声。
 
 間奏のSoprano Saxもすごく綺麗で、いい感じです。

 この曲の水:「海」

8.CAFE CON LECHE [4'18"] 歌:白鳥由里、辻 睦詞
 ◇作詞:武田旬平、辻 睦詞
 ◇作曲:新居昭乃
 ◇編曲:新居昭乃、保刈久明

 デュエットしてるのは元「詩人の血」の辻さん。
 ちょっと嫉妬しちゃうかも…。(笑)
 かなり聴きごたえのある曲です。聴いてると元気になってくような。

 やっぱり、このアルバムのメインディッシュになってくるのかなぁ…?

 この曲の水:「雨」

9.Hello,Mr.Cat Bon [4'05"]
 ◇作詞:新居昭乃
 ◇作曲:新居昭乃
 ◇編曲:新居昭乃

 ねこのうた。かなりおしゃれです…。
 ピアノとドラムがかっちょいいです。クラリネットの音色もなんとも〜(*^^*)
 思わずお茶入れて、気取りたくなるよな、そんな曲。(笑)
 
 パリのまちにあるよなカフェで流して聴いてみたいな…

 この曲の水:「涙」

10.Little Wing [4'53"]
 ◇作詞:新居昭乃
 ◇作曲:新居昭乃
 ◇編曲:新居昭乃

「Little Wing」はみずたまりの意。

 とても静かなうた。新居昭乃さんのピアノと、白鳥さんのボーカルのみの
 ちょっと寂しげなうた。声をじっくり味わうにはもってこいの歌ですね。
 いつも、ここまで聴き終わるまでに(それか、この曲で)寝てしまいます。
 う…、なんか眠くなってきたよな…気が……(ぐぅ…)

 白鳥さん、この曲のレコーディングのとき、パリのスタジオで泣いたそうです。

 最初、日本でピアノといっしょに録ったんだそうですけど、どうしてもうまく
 録れなくて、結局パリで録ることになって、でもうまく歌えなくて、それで泣
 いてしまったそうです…。
 なんでも、新居昭乃さんが「あめ玉」で慰めてくれたんだとか(笑)。
 
 「歌を歌うときって、私は裸のココロのまんまでスタジオのブースの中にいる
  の。だからちょっとしたことで傷つきやすい」とは、白鳥さんの弁。

 毎回、アルバムの制作中に1回は泣いてるそうで、今回のアルバムでは2回、
 泣いたそうです。まさに、汗と涙の結晶ですね。(^^)

 ◆参考資料:「白鳥由里のきゃらめるペーパー」
     (「電撃G'sエンジン」連載/1997年当時)

 この曲の水:「水たまり」


(総評…?)
 何も言わず、買ってください。もうっ、絶対にいいので。(笑)

 パリレコ(セリーヌ・ディオンも使った「メガ・スタジオ」でのレコーディ
 ングだったのだとか。)だけあって、全体的にヨーロピアンな雰囲気で溢れ
 てます。(なんとなく…)
 これは、日当たりの良い日曜日の、ティータイムに聴くのがベストですね。
 紅茶の肴に…。(肴…?)

 基本的には、部屋でゆったり、じっくり聴くのに向いてるでしょう。
 白鳥さんの声はか細いので、静かな環境じゃないとダメでしゅ。

 わたしは、夜寝る前にもよく聴いてます。
 ほんと、すごく、リラックスできるんですよ…。聴きながら目を閉じてると。
 ミュージック・セラピーってやつかな…?(笑)

 最後に、このCDの宣伝のリーフレットに、すごく面白い文章が載っている
 ので、これを紹介しておきます。これは、林原めぐみさんもラジオの中で引
 用して、褒めたおられたものです。

 わたしのレビューより、こっち読んだほうが欲しくなってくるでしょうから。
 これ読んで、買ってください。もう、3枚くらいまとめて。(笑)

 5thアルバム、一刻も早く出して貰うためにも…。



 音楽というおもちゃを使って、楽しそうに遊んでる──―
白鳥由里のアルバムには、いつもそんな印象があった。断片的に現れる洋楽エ
ッセンス。妙にこだわりの入ったアレンジ。後に、彼女はミックスダウンにも
立ち会い「あーだ、こーだとうるさく言ってる(笑)」ことを知ったが、フリッ
パーズ・ギターあたりにも一脈通じる音楽性を感じたわけだ。けど何より光っ
てたのは、独自の色を、無色透明という色を放つボーカルだった。「”透明感
”がある」のでなく、本当に透き通った歌声。風や空気や水のような。

 その白鳥由里が、全編に”水”をフィーチャーした3枚目のフルアルバム「
Tendance d’eau」をリリースする。1月から制作に入り、4月
の時点で彼女はもう、「今度のはすっごいイイですから! 白鳥由里の魅力大
爆発です」と自信満々に話していた。そういう発言をするとファンはすごいも
のを期待しちゃうよ、と言っても、「大丈夫。期待の全然上を行きます」と屈
託のない笑顔。本当にそんなにすごい作品なのか!?と聴いてみた。

 生ギターのストロークで始まる、波しぶきが目に見えるような1曲目の「Be
luga−海のカナリア−」。いい曲だ。生音中心のサウンドに乗った白鳥由里の
ボーカルは、スケール感をグンと増していて、曲ごとに別々の空間が広がって
いく。まさに水が光を反射してキラキラ輝くように、透明な歌声が曲ごとの世
界をメロディーに乗せて映し出す。彼女は「あまり感情を込めず、真っ白な気
持ちで歌ってます。メロディと歌詞で、もう伝えてくれるものがあるから」と
も言ってたっけ……。

 アルバムは、いつの間にか最後まで終わっていた。強く引っ掛かるものがあ
ったわけではない。でも、なぜだろう。気持ちが軽くなっている。確か子供の
頃に感じたことのある、何かに全身を委ねたような心地よさ……。「このアル
バムは素晴らしい!」と力んで人に勧める気分でもない。ただ、炭酸飲料や甘
いジュースに飽きて、結局ミネラルウォーターを手にするように、最近の僕は
気付くと『Tendance d'eau』ばかり聴いている。


            (オリコンウィーク The Ichiban 斉藤貴志氏)
             『Tendance d'eau』宣伝用リーフレットより